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スティーヴン・キング『ビッグ・ドライバー』

2013-09-15 04:37:00 | ノンジャンル
 一昨日、横浜美術館に『プーシキン美術館展』を見に行きました。開館直後に現地に着くと入場制限で長蛇の列ができていましたが、私は障害者手帳のおかげで、すぐに入れました。今回の展覧会の目玉は、ルノワールの『ジャンヌ・サマリーの肖像』とようでしたが、実際には同じルノワールでも緑色が鮮やかな『セーヌの水浴(ラ・グルヌイエール)』の方が素晴らしいと思いましたし、その他にも、朝日新聞で紹介されていた、ルイジ・ロワールの『夜明けのパリ』、変形していて陰がいびつなモイーズ・キスリングの『少女の顔』、赤い馬、赤い家、赤い木、白い人、緑の大気というシャガールの『ノクターン』などに惹かれました。他にも有名どころの画家の絵を一通り見ることができ、いい展覧会だったと思います。明日までやっているので、興味のある方はどうぞ行かれることをお勧めします。

 さて、'10年に発表されたスティーヴン・キングの2つの中編『ビッグ・ドライバー』と『素晴らしき結婚生活』が収められた本を読みました。
 『ビッグ・ドライバー』では、〈ウィロー・グローブ編み物クラブ〉シリーズの作家として知られるテスがラモーナの求めに応じて、自宅から60マイル離れた場所へ講演をしに行きます。帰路の近道をラモーナに教わったテスは、釘の刺さった木片がばらまかれた道を通ることによってタイヤをパンクさせられ、近くに停まったトラックから出てきた大男にレイプされ、首を絞められ意識を失います。気が付くと自分が捨てられていた暗渠にはテス以外にも2人の女性の死体があり、テスは何とか自宅に帰り着きますが、警察に知らせて自分の恥が公になるのを望まず、自ら復讐する決心をします。自分の車が駐車場に置きっぱなしになっているので取りに来てほしいという電話をベッツィという女性からもらったテスは、自分を襲った男のトラックの持ち主に関する情報を得、そして自宅のパソコンによってラモーナの2人の息子のうちの弟が自分を襲った犯人であり、自分を襲わせたのもラモーナであることを確信します。ラモーナの許を訪れたテスは一旦は拳銃を奪われますが、ナイフでラモーナを刺し殺し、次に息子を撃ち殺しますが、それは兄の方でした。その後、弟を撃ち殺した後、間違って兄を殺したことからテスは自殺しようとしますが、それまでテスの話相手をしてくれていたカーナビが思いとどまるように言います。実際調べてみると、兄も弟の犯罪の共犯者でした。翌日テスはすべてをベッツィに打ち明けると、ベッツィも自分がレイプされた経験を今まで隠してきたと言い、お互い身分を隠して、兄弟がレイプして殺した女性たちの捜査を警察に任せるようにしようと話し合うのでした。
 『素晴らしき結婚生活』では、幸福な結婚生活を送るボブとダーシーでしたが、ボブの留守中にダーシーは偶然に連続殺人事件の被害者の運転免許証などをガレージで見つけます。パソコンで調べると、被害者らのカードはBDと名乗る男から当局に向けて送られてきていました。電話で妻の異変に気付いたボブは、予定を切り上げて妻の許へ急ぎ、自分が幼い頃に交通事故で亡くなった少年が自分の体を使って行っている犯行であり、当局へ告げれば、暮らしが傾くことに加え、起業がうまくいき始めている息子や、結婚を間近に迎えている娘の人生にも多大な影響が出ることを告げ、今後は一切犯罪に手を出さず、今回ガレージで見つかったカード類もどこかの地中に埋めることをボブはダーシーに約束します。そしてしばらく何もなかったように続く結婚生活。ある日、コイン蒐集家のボブが偶然に貴重なコインを手に入れ、有頂天になって帰宅すると、ボブはしこたま飲み、ダーシーはそんなボブを階段の上から突き落として事故死にみせかけ、殺します。そして7週間後、ダーシーの許を訪れた老検事は、ボブがBDであったことをダーシーに認めさせますが、彼女がそれと知らずに夫と暮らしていたことを知ると、それ以上の詮索はせず、静かに彼女の許を去っていくのでした。

 キングのことですから、あらすじだけでは面白さの大半が伝わらないのは当たり前で、この小説でも微に入り細に入り描かれる登場人物の心理や行動が物語を豊かなものにしていました。実際に本を手にして読まれることをお勧めします。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto