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宮田珠己『四次元温泉日記』

2012-03-14 10:51:00 | ノンジャンル
 瀬川昌治監督の'68年作品『喜劇・初詣列車』をスカパーの東映チャンネルで見ました。マドンナ役の弟を探し出して更正させる車掌役を渥美清、マドンナ役は佐久間良子、夫の浮気を疑って義理の弟(川崎敬三)に調べさせる妻役が中村玉緒という映画でしたが、列車シーンはほとんどなく、ギャグも見ていて気恥ずかしいものばかりで、シリーズの前2作の出来にはほど遠いものでした。

 さて、宮田珠己さんの'11年作品『四次元温泉日記』を読みました。迷路的な温泉宿や特徴ある温泉についての体験記です。
 紹介されているのは、3面がコンクリートの壁に囲まれている風呂がある、鳥取県の三朝温泉K旅館。47.5度という鍋のような熱湯風呂がある、湯泉津(ゆのつ)温泉の宿。公道の上に渡り廊下が渡してあり迷路のような作りの、伊勢A旅館。両岸がコンクリートで固められている用水路のような川の中に湯舟がある、湯の峰温泉。魅惑的な五差路がある迷路のような作りであり、大日如来や日露戦争の写真、天皇陛下の写真が掲げられている一方、中国風のお守りなんかも掛かっていて、また、廊下から暖簾を越えて更衣室も湯舟もまる見えで、3方から大きな天狗の面が見下ろし、その面のまわりには子宝祈願の絵馬がいくつもかかっている混浴「天狗の湯」がある、那須高原の奥にあるK温泉という秘湯。浴槽が2―2―1のフォーメーションに並び、モダンな美術館のような印象を与えている〈元禄の湯〉があり、岩肌に突き刺さっているように見える廊下などもある、映画『千と千尋の神隠し』に出てくる神様の温泉宿「油屋」のモデルになったという群馬県の四万(しま)温泉にあるS館。川沿いに迷路感漂う廊下が続く、花巻南温泉峡O温泉。浴場が地下にあり、浴室そのものは建物の3階まで吹き抜けた大空間になっており、それが昼でも薄暗く一種独特の陰気さを醸し出しているうえ、水深が125センチもある、花巻南温泉峡の上流にあるN温泉のF旅館。奥へ進むほど廊下は錯綜して迷路化していて、思った以上にでかい、秋田県と青森県の県境近くにある一軒宿H温泉。福島県の山奥の一軒宿であり、本当に湯がぬるい、微温湯(ぬるゆ)温泉。廊下が太くなったり細くなったりしながら、あちこちで折れ曲がって、どうして平らな土地でこんなにも込み入る必要があるのか、さっぱり分からない上、湯が真っ黒で匂いも凄く浴室がまるで廃墟である「黒湯」がある、東鳴子温泉T旅館。館内のところどころに明治時代には相当ハイカラだったであろう彫刻が施されており、浴室にはギリシャ神話風のタイル絵が描かれているのですが、描かれている樹木は明らかに松の木で、タイル絵のなかで沐浴している女性が松の木並みにでかい〈ローマ千人風呂〉と名付けられた風呂があり、また床に二つの穴が開いていて、そこから蒸気が吹き出す、何のためのものか分からない“ふかし湯”なるものもある、瀬見温泉K楼。廊下がいびつに一周していて分岐点も無数にあり、右に傾いた階段もあるという、絵に描いたような迷路旅館である、伊豆長岡温泉のN荘。異様なほどに階段だらけの、湯河原温泉のU屋旅館。階段が多く、廊下が錯綜していて高低差があり、歩いているとここが何階か分からなくなる一方、中央テラスに得体の知れぬタンク状の物体が立っていて、全体も台形に近い変則的な形に建てられている、別府鉄輪温泉Y荘。他にも、枯葉がチクチクする別府温泉保養ランドの泥湯、雑貨屋の裏にあり原爆症に効くと大書してある別府神丘温泉、異様にでかい、霧島ホテルの硫黄谷庭園大浴場、非常に狭い路地が何本も通っていて、そこにかかる渡り廊下と、そのあたりの壁に何本も走る送水管の類いとが織り成す光景がSFの世界のような、渋(しぶ)温泉と、迷路宿としては最上級の逸品である、そこのK屋などが紹介されていました。
 宮田さん独特のユーモラスな文章で一気に読めるエンターテイメントです。是非手に取って読まれることをお勧めします。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/