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豊島ミホ『花が咲く頃いた君と』

2008-08-20 16:11:43 | ノンジャンル
 豊島ミホさんの最新刊「花が咲く頃いた君と」を読みました。主人公が中2の子から高校を卒業したばかりの子までの中編4つからなっている本です。
 「サマバケ96」は、真面目な主人公ユカと、複雑な家庭環境で遊び人のアンナの仲の良い二人組が中学生最後の夏休みを楽しく過ごすため、協力して7月中に宿題を終わらせ、8月1日に渋谷に遊びに行きますが、高1の二人組にナンパされ、アンナはそのうちの一人と付き合うことになり、ユカはアンナといろんなところに遊びに行けなくなります。そして夏休みの最後の日、男子と別れたアンナはユカと残り少ない時間を楽しく過ごしますが、ユカは楽しいはずだった夏がもう終わると思うと涙をこぼしてしまうという話。
 「コスモスと逃亡者」は、高校を卒業して以来、知恵遅れなので買い物以外は家を出ないように母に言われているかわいい娘と、借金取りから逃れるため、妻と子を置いて逃げてきた男の交流を描いた話。
 「椿の葉に雪の積もる音がする」は、中2の女の子が眠れない夜には、おじいちゃんの横に寝て、おじいちゃんが「耳を澄ませて。椿の葉に雪が積もる音がする」と言うと眠りにつけていたが、そのおじいちゃんを死によって失い、それを乗り越えようとするまでの話。
 「僕と桜と五つの春」は、落ちこぼれでいじめられっ子の中2の男の子が塾の帰りに塀に囲まれた若い桜の木を発見し、同級となった男まさりだが美しい女の子を桜と重ね合わせて恋しますが、同じ高校に進んだ女の子は正当派アイドルとしてデビューし、彼女から声をかけるなと言われ、次の春には自分をもう見るなとも言われますが、高校を卒業する春には、今までのことを謝られ、桜を近くで見たいので肩車してくれと頼まれる話です。
 「サマバケ96」では、宿題が終わった瞬間やいきたいところをいろいろ考えていると、盛り上がって二人してキャーと叫んでしまうなんてところが、箸が転んでも笑うこの年代の女の子を見事に捕えていて、「コスモスと逃亡者」では、「あたし、かわいそうじゃないよ、ばかだけど」と言う娘に、つい涙してしまうお母さんがせつなく、また借金取りの男が女子高生とやったことを夢の中で思い出して勃起しているのを見て、「おじさん、やろうよ」と言ってしまう娘の純真さもまたせつなく感じました。「椿の葉に雪の積もる音がする」は、私が大切な人を亡くした経験がないので、今一つ実感が湧かず、「僕と桜と五つの春」は、話が突飛であることと、取ってつけたようなラストが今一つ心の琴線に触れませんでした。
 ただ、今までの豊島さんの作品と同じく、様々な青春が描かれていて、そういった意味ではとても満足しましたし、せつない気持ちにもなりました。これからもいろんな青春を書き続けてほしいと思います。
 詳しいあらすじに関しては、「Favorite Novels」の「豊島ミホ」のコーナーにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。