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西加奈子『窓の魚』

2008-08-02 16:07:21 | ノンジャンル
 西加奈子さんの最新作「窓の魚」を読みました。
 2組のカップル、黒髪で男の子のような体型のナツと美男子だがか細いアキオ、甘ったるく現代風の女の子のハルナと煙草ばかり吸っている不健康そうなトウヤマが山あいの温泉宿に泊まりに行きます。着いてすぐに夜の仕事から一睡もせずに来たトウヤマが寝てしまい、ナツとハルナは露天風呂へ、アキオは内風呂に入ります。4人で夕食を食べている時、アキオがトウヤマにしつこく「夜中に一緒に露天に行こう」と言うので、ナツがつい「アキ、猿みたいだよ」と言ってしまい、ハルナが間に入ります。夕食の後、ナツは一人で露天風呂に行き、ハルナも一人で内風呂へ行きます。ハルナは風呂上がりに痩せて太股に牡丹の刺青がある女が入ってくるのを見ます。アキオとトウヤマは一緒に内風呂に行き、アキオの胸の傷が手術の痕であることが明らかにされます。風呂から帰るとハルナとトウヤマはセックスし、その後トウヤマの携帯に電話がかかってきたのでハルナはお茶を自動販売機に買いに行き、そこでアキオに会います。一旦部屋に戻ったアキオは日本庭園で痩せて太股に牡丹の刺青がある女と一緒に立ち小便をします。ナツがなかなか帰ってこないので、ハルナに頼んで様子を見にいってもらいます。ナツは2時間も風呂につかったままで、ふらふらしながらハルナに抱えられて帰ってきます。そして翌日4人は宿を発ちますが、その後宿の日本庭園で正体不明の女の死体が発見されるのでした。
 このようなストーリーが4人の視点から別々に語られます。そしてそうすることによって、キャバクラで働くハルナが客に体を売り、母から何百万も金を出してもらって整形手術をしていて、今でも大金を送金してもらっていること、トウヤマが夜に小さい汚いバーで働き昼夜逆転の生活をしていて、腐れ縁の女がこの温泉に来ていること、アキオが小さいころから病弱で、しかも性的に不能で、ハルナからもらっているヤクを半年以上もナツに飲ませていること、アキオが日本庭園で会った女がトウヤマの知り合いであり、死ぬためにここに来ているらしいことが分かっていきます。
 が、結果的に何を描きたいのかよく分からない小説です。一つの物語が4人の登場人物の視点からそれぞれ語られることにより、人によって物事の捕え方が違うということ、そして読み進むうちにそれぞれの抱えている秘密が明らかにされていくのを楽しまなければならないのかもしれませんが、どの登場人物にも共感できず、訳の分からないまま読み終えてしまいました。デビュー作の「さくら」から随分遠くまできてしまったなあ、という感じがしています。今後、西さんはまた「さくら」のようなすがすがしい世界に戻って来てくれるのでしょうか?