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角田光代ほか『いじめの時間』

2007-01-30 16:24:25 | ノンジャンル
 角田光代さんの作品を読もうと買った、彼女を含めて7人の女性作家が「いじめ」をテーマに書いた短編集「いじめの時間」を紹介します。
 江國香織「緑の猫」は、無二の親友が高校生になって精神を病んでいく様子を描いたもの。大岡玲「亀をいじめる」は、動物を虐めるのが好きな高校教師が、娘の同級生のトラブルをあおり、楽しむ話。角田光代「空のクロール」は、泳げないのに強い水泳部に入ってしまったことがきっかけで、いじめを受けるようになる中一の女子生徒と彼女の復讐の話。野中柊「ドロップ!」は、学校を欠席している間に、自分の机が見知らぬ少女ハルカのものになっていて、ドロップをなめてると、クラス中の生徒が「ドロップがほしい」と手を出し、もう無いと言うと、ハルカが「まだカバンの中にある」といい、無いという私と有るというハルカが賭けをして、負けた私の体がバラバラにされるというシュールな話。湯本香樹実「リターン・マッチ」は、いじめられっ子が自分をいじめた生徒を一人ずつ呼んで決闘をし、その一人だった主人公は、いじめられっ子に頼まれて柔道を教え、友情をはぐくむが、最後にはいじめられっ子の母を殺してしまうという話。柳美里「潮合い」は、転校生をいじめ、ケガをさせてしまう、クラスのリーダーの女子小学生の話。稲葉真弓「かかしの旅」は、同級生がイジメで自殺し、自分も足が不自由なので「かかし」と呼ばれていじめられている男子中学生が、先生、母親、かばってくれた女子、自分をいじめた生徒、それぞれへ書かれた手紙です。
 救いようがなく殺伐とした気持ちになったのは、「潮合い」と主人公がサドの「亀をいじめる」で、一方ちょっとほのぼのさせてくれたのは、「リターン・マッチ」と「かかしの旅」でした。角田さんの作品は、日常的ないじめをリアルに描いていて、ドキュメンタリー・タッチなのが逆に読んでてつらい感じがしました。しばらく角田光代さんは追っかけようと思いますので、次に読む作品に期待です。