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垣根涼介『ゆりかごで眠れ』

2006-10-13 16:45:11 | ノンジャンル
 有隣堂の店員さんが推薦していた垣根涼介さんの「ゆりかごで眠れ」を読みました。
 コロンビアの日系二世として生まれたリキは、反政府ゲリラに家族を皆殺しにされ、コロンビア人の家に引き取られます。そこでは、母ベロニカが暮らしを支え、リキより年上のホルヘという男の子とリキを何の区別もなく愛情を注いでくれ、貧しいながらも暖かい毎日を暮らして行きます。が、貧民街の男の子の出世の道としてはギャングになるしかない状況のもと、ホルヘは子供のギャングのリーダーになり、最終的に敵対するグループに家にいるところを襲われ、即死してしまい、重傷を負ったベロニカは、リキに悪の道には絶対に入るんじゃないよ、と言いながら死んで行きます。リキはベロニカの言葉を重く受け止めながらも、悪の道に手を染め、やがてコロンビアでも有数のコカインと銃器を扱うグループをつくり出します。日本にも進出しますが、日本で敵対するグループに密告され、手下の1人が殺人とコカイン所持の容疑で逮捕され、警察は命令を下したのが誰であるかを吐かせようとしますが、手下は何も言いません。というのも、リキは自分の手下を見捨てることは絶対にないが、自分を裏切った者は絶対に許さず死をもって報いてもらう、という鉄の方針を堅持していたからです。最終的にリキは重火器を持ち込み、警察を襲撃して手下を救い出します。
 以上が大筋ですが、それにリキが兄を殺され孤児となった女の子を救ったり、コカイン中毒になりワイロももらい、体も心もボロボロになりながらも刑事魂は強く持ち続ける日本の刑事とか、その刑事の元同僚で元愛人で、リキから孤児の女の子を預かることになる女とか、様々な人物がからんできます。
 単行本で500ページ弱ある大長篇ですが、少しも飽きさせません。外国の本当に貧しい暮らしの悲惨さが伝わってきて、心が傷み、またそこからギャングが必然的に発生するという説明も説得力がありました。まだ読んでいない方、オススメです。