うたことば歳時記

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卒業式の女袴姿

2016-02-12 12:03:02 | その他
 卒業式が視野に入ってきますね。このような仕事をしていますと、感慨も一入です。卒業式では、女子大生や女性の先生は袴を履くのが定番になっているのですが、実はこれはなかなか歴史的由緒のあるものです。そもそも袴は男性の着るものでした。明治期に女子学生が出現すると、椅子に坐る際に着物の裾が乱れて、視線のやり場に困ったからでしょうか、あるいは男性の視線を気にしたからでしょうか。乱れる裾を隠すために、袴を履くようになりました。これは余程に勇気の要ることだったでしょう。初めはかなりの抵抗もあったようですが、華族女学校(後の学習院女子部)や女子高等師範学校(後のお茶の水女子大学)が採用したことから流行し、明治30年代には定着するようになりました。その色については、華族の女学生は高貴な色とされた紫色の袴を身に着けていたため、畏れ多いとして紫を遠慮し、海老茶色の袴を履いたとされています。そして女学生は紫式部をもじって「海老茶式部」と呼ばれました。徳川家光の時に起きた紫衣事件では、紫の僧衣を後水尾天皇が高僧に下賜したことが問題とされました。律令制における冠位の制度でも、紫色が高位の色とされたように、古来、紫色はノーブルな色と理解されていたのです。ちなみに宝塚音楽学校の卒業式では、確か濃い緑色の袴を履いていたと思います。その理由は私にはわかりませんが。大正時代には編み上げの革靴が見えるように海老茶色の女袴を短く履き、髪を高く結って大きなリボンを着けるのが「ハイカラ」な女学生ファッションとなりました。もし靴を履いている姿を見掛けたら、それは意図して履いているので、「さすがによく御存知で」と誉めてあげて下さい。
 和装なのにブーツを履くのはおかしくも見えますが、日本人のファッションはもともとそんなものです。かつては男性も和服姿で帽子を被っていました。浴衣姿で中国伝来の団扇をつかい、学生服姿で下駄を履き、何でも取り込んで消化してしまう雑食性が、日本人の特徴なのでしょう。