★ふぇみん7月15号(No.2896)に当フォーラムが主催した
シンポジウム「食の現状・農の未来」が掲載されました。
ふぇみんのご好意により、転載します。
http://www.jca.apc.org/femin/
有機農業を軸にコミュニティ再建を
シンポジウム【食の現状・農の未来】
自給率40%、食品汚染など食と農をめぐる深刻な状況をどう転換させるのか。
東京で6月、シンポジウム「食の現状・農の未来」
(知と文明のフォーラム主催)が開催された。
集会では、遺伝子組み換え食品(GM食品)や農薬汚染、添加物の氾濫に警鐘を鳴らしてきた安田節子さん、ミクロ経済学が専門の日本女子大学教員の植田敬子さん、神奈川県でCSA農場(地域住民が支える参加型農場)を営む片柳義春さんの3人が報告した。
安田節子さんは「私たちが食べたものから、身体の細胞が出来ている」という事実をふまえ「工場で大量の加工食品が作られ、私たちの細胞の遺伝子を傷つけかねない多くの化学物質が使われ続けた結果、今日のガン大国となったのでは」と語り「このまま農薬やGM食品を摂り続けていけば、緩慢な死を迎えることになりかねない。食料を自給し、使った農薬はすべて表示するなど、安全な農作物を選択出来るように政策を変えることは急務」と訴えた。
変わる経済学
「昔は経済学というと、経済成長率をどう上げるかという話しばかりをしていた。だが幸福度の統計からわかったことは、いくらお金ばかり増やしても、人間は幸福にはなっていないという事実だった」と植田敬子さん。幸福度の低下は、健康不安や人とのつながりが壊れるのが原因とされる。「今、欧米で急速に広がっているというCSA(Community Supported Agriculture)は、人との絆の回復し、新鮮な有機野菜で身体を健康にしてくれる。農薬使用による周囲の環境悪化がないという点でも優れている。経済学の面から言えば、有機農業には補助金を出して奨励するのが当然」と語った。
きっかけは地域通貨
片柳義春さんは住宅地が広がる神奈川県の大和・綾瀬・厚木市に点在する遊休地を借り、「なないろ畑農場」を営んでいる。きっかけは市民運動として取り組んだ地域通貨だった。「落ち葉を集めてくれた人には地域通貨を渡し、落ち葉堆肥で育てた花の苗と交換する」と言うと大勢の人が来て、1人で2カ月かかった作業が半日で終了した。この体験から「次は芋畑、その次は…」という経過のなかから「なないろ畑農場」が誕生した。「農場を核に、地域通貨と連動してコミュニティを再生するのが本来の目的。いずれ21世紀型社会のモデルとなるようなエコビレッジをつくりたい」と片柳さん。
司会の北沢方邦さん(信州大学名誉教授)は「食・農は私たちの文化の基底となるもの。危機にある食と農の現状を変えることが、文明そのものをエコロジーの方向へと向うエコ・ソリューションへの入り口となる」と語った。(大束愛子)