ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

April In Paris Ⅳ

2013-12-05 08:29:42 | Weblog
調性についてちょっと・・・。「調性」はジャンルにかかわらず音楽家にとっての大きな問題だ。それは一体なにを指すのだろう?考えれば考えるほど深みにはまる抽象的なものだ。一義的には楽曲内の中心になるひとつの音高・・・まあこれでいいかとも思う。でも調性音楽または無調性音楽という名前を聞くと「それって一体?」と感じてしまう。一言で言えばそんなにはっきり分けられるの?ということだ。調性を探る方法はいろいろ示されている。どんな和音も根音を検証しその動きをさぐればどの音を感じているかは明らかになる。私が疑問に思うのはそうして提示された調性がインプロヴィゼーションの中でもぴったり一致するかどうか?ということだ。即興で音楽を作っていくジャズが原曲の調性をずっと守り続けなければいけないことはない。そんなことにこだわる必要はないのだ。でもアドリブというのは「何か」を頼ってやっている。そしてその感性に沿ってやっているのにいろんな偶発的なことが原因で自分の意図しないサウンド、また調性になったりする。それを受け入れて楽しむのがジャズという音楽のヒップさでもあるのだけど・・・。またインプロヴィゼーションの世界では調性がいろんな段階の強さで現れる。あるのかないのか分からない時もある。インプロヴィゼーションの素材探しはジャズミュージシャンがずっと苦労してきたことだ。良い即興演奏をやるためにいろんな形態の音楽、そしていろんな「強さ」の調性を持つ音楽を題材にしてきた。そしてそれを基にアドリブをやるともっといろんな調性上の問題が起きてしまう。ジャズの演奏の分野にこの調性の問題を従来と同じ視点で提起するのはもしかしたらナンセンスなのかもしれない。


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