この曲を理解するのに和声構造の分析は不可欠だろう。まず前半の部分を考えてみよう。M7とその半音下のm7というつながりが短3度づつ下がって来ていることにすぐ気づく。M7そしてm7のナチュラル5thというつながりは、トナリティーを考えるとⅣ-Ⅲになる。というか耳がそう感じてしまう。でもm7のコードには9thの音がメロディーにも出てくる。必然的にドリアンになってしまう。これではⅢにならない。かと言ってトナリティーがそんなにあっちこっち動くとインプロヴィゼーションがつながらない。Ⅳ-Ⅲとしてふたつで感じてさしつかえない。メロディーラインに9thを組み入れたければそれはそれでいい。トナリティーは短3度づつ4回下がる。ということは12音を一周するのだ。そのあとM7のコードが短3度下行するパターンがあって、その全音下がりでもう一回、続いてⅡ-Ⅴがある。このⅤ7は#9がメロディー、これで前半は終り。この曲にトナリティー云々はナンセンスかもしれないが、あくまでも実際にアドリブをやるためのコードプログレッションのアナライズで、という意味だ。短3度という音程は12音においては同じ「軸」を意味する。ふたつのコードの組み合わせつまりここで言うとⅣからⅢ、サブドミからトニックという流れを短3度で回すのだ。そして曲全体に対するこの部分の和声上の位置づけはずっと同じだ。実際に演奏してみたり録音を聞いてみると12音を使い複雑に見える音使いをしながらサウンドは穏やかに推移しているのがよく分かる。このアイデアの出所、源泉、それはチックコリアだけの秘密だ。
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