とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

劇評『紫式部ダイアリー』

2016-08-18 08:10:44 | 演劇
 WOWOWで録画していたものをようやく見た。おもしろかった。

 紫式部が長澤まさみ、清少納言が斉藤由貴。女性の二人芝居。ふたりとも日本文学を勉強した人間ならだれでも想像しているような設定。ふたりはライバルであり、清少納言のほうが先にブレイクした。清少納言が仕えていた中宮定子のほうの家が政権争いに負けたため、清少納言は過去の人になっている。紫式部は『源氏物語』が大ブレイクしたため、ちょっと偉くなっている。そんなふたりが顔を合わせたらどうなるか、という内容である。

 それこそ先日このブログでも書いた、平田オリザさんが言う「わかりあえない」関係である。ふたりはわかり合えない関係でありながら、会話を重ねていくうちに少しずつ接点を感じていく。微妙な接点でありながら着実に少し変化する。その変化こそが演劇的な瞬間である。

 平田オリザさんに言われるまでもなく、演劇って昔からそういうことをしていたんじゃないのだろうか。そしてこの芝居は誰もが肩を凝ることなく楽しく見ることができる。やはり脚本家の力によって「わかりあえない」ことから始めた関係を描くことは可能なのだ。やっぱり私は演劇を息をひそめてみるようなことはしたくない。こういう演劇を見たいと思った。

 昔は失敗作も多かったが(私にとってです。悪しからず)、経験を積んで、ひとつひとつの経験を糧にしてきた最近の三谷さんは本当にすごい作家になってきた。一作一作がすばらしい。今後の活躍がますます期待できる。

 古典の勉強にもいい教材だ。古典の授業で生徒に見せようかなと思った。
コメント
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