とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

「西舘好子講演会」に行きました。

2022-06-27 18:50:17 | 井上ひさし
 東ソーアリーナで行われた「西舘好子講演会」に行きました。西舘好子さんは井上ひさしさんの元の奥様です。貧しい時に出会い、同じ夢を見ながら二人三脚で活動していたら、実は違う夢であったことに気が付くといおう話でした。具体的なエピソードがリアルで、いろいろな面で考えさせられた講演会でした。

 売れない時代の生活の苦しさと仕事のもらい方、ひょうたん島の仕事が決まった時の安堵と喜び、編集者とのやり取り、そしてぶつかり合い、そのエピソードは当事者だからこそ語ることだできるのものでしたそれらのエピソードは必死で生きていたからこそのドラマになっていました。

 離婚の理由も、お互い同じ夢に向かって二人で必死に作品を作っていく中で、お互いの微妙な違いが次第に大きくなっていったということでした。お互いに譲れなく、別れる結果となったようです。これもまたドラマです。

 山形には井上ひさしさんゆかりの劇場がふたつあります。ひとつは川西町フレンドリープラザで、井上さんの現在の奥様やこまつ座の現在の主宰者の三女の麻矢さんがやってきたりしています。

 もう一つが山形市の東ソーアリーナです。こちらは民間企業のスポンサーがあっての劇場で、もとはシベールという山形の企業が大口スポンサーでした。そもそもこの劇場はシベールのオーナーが作ったものです。そのシベールが倒産し、スポンサーがいなくなったところ、東ソーが助け舟を出してくれました。民間企業ですのでコロナもあって経営状態は厳しいようです。今回、その理事長に、井上さんの長女で前のこまつ座の主宰者だった都さんが就任しました。

 都さんと現在の井上家は仲が悪いと聞きます。今回の西舘さんの講演会も井上家に喧嘩をうったようにも見えなくもない。もちろん大人なのだから、お互いが事情を理解しあっていると思いますが、山形県内で変な対立が生まれるのではないかというのは心配になります。余計な心配であることを願います。


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古典の参考書第3回 「いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に」3

2022-01-26 06:12:41 | 井上ひさし
【時めく】
 「時めく」は現代語訳を間違えやすい重要語です。現代語では「胸がどきどきする」という意味で使われるますが、古語ではこのような意味はありません。次のようになります。
 ①時代の流れに乗って栄える。
②寵愛を受ける、目をかけられる。
ここでは②の意味です。「寵愛する」のではなく帝の「寵愛を受ける」のです。帝の寵愛を受けることが「時代の流れに乗って栄える」わけです。

【源氏物語】
 『源氏物語』はどういう物語なのか、これは一般常識レベルなのですが、実は多くの高校生は知らないというのが現実です。平家と源氏の物語だと思っている高校生もいます。それはそれでしょうがない。いつの間にか理解するとは思いますが、きちんと教えるべきときに教えておくべきことです。
 『源氏物語』は世界文学の視点からも重要な作品です。は知っておくべき常識です。千年以上前に、「小説」と言ってもいいような文学作品があったのです。ヨーロッパ文学よりもはるかに昔に成立した文学遺産なのです。
その冒頭文がこの一文です。正妻のいない帝が、身分のそれほど高くない女性を愛したことが発端となり、物語が展開していきます。その設定が見事に一文で示されています。
 物語の発端として見事というしかありません。
 みなさんも『源氏物語』について少しでも理解してください。
 
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『井上都講演会』に行きました。

2020-11-17 18:09:48 | 井上ひさし
 井上ひさしさんの長女である井上都さんの講演会に行きました。山形市の井上ひさしさんのゆかりの劇場「東ソーアリーナ」での開催です。さまざまなことを考えさせられる講演会でした。

 井上都さんは井上ひさしさんの長女で、長い間、井上ひさしさんの作品を上演する劇団「こまつ座」の代表をつとめてきました。しかし井上ひさしさんの晩年、原因ははっきりしないのですが、井上ひさしさんから悪人扱いされ、絶縁状態になり、劇団の代表もやめることになります。絶縁のまま井上ひさしさんが亡くなられました。

 都さんは自分には落ち度がなかったと語っています。もしかしたら井上ひさしさん側には別の説明があるのかもしれません。しかし都さんには理不尽に感じられ、都さんはこの10年「怒りの日々」を過ごしてきたと言います。

 家族のいざこざは他人があれこれ言ってはいけないことです。ただし、理不尽に嫌な思いをしてきたと語る人の気持ちはよくわかります。人間だれでも理不尽な思いがあるからです。それはもしかしたら自分に端を発していたことかもしれません。しかしそういうことも含めて、他人を責めて、自分を責めて生きることになります。それはつらいものです。そういう心の重りを抱きながら生きている。多くの人がそうだと思います。そんな人の心が少しでも軽くなることを祈っています。

 井上ひさしさんはとても優れた作家です。どういう事情があろうとその作品は本物です。井上さんの作品がこれからも生きていくために、都さんにはがんばってもらいたいと思います。


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井上ひさしさんの思い出2『吉里吉里人』

2020-07-08 06:17:57 | 井上ひさし
 私が大学生のころ、井上ひさしさんの『吉里吉里人』が出版されました。当時大変な話題の作品でした。読んでみると、めちゃくちゃおもしろい。おもしろいだけではない。概念的に理解しにくいことが、小説によって理解できるようになります。衝撃的な作品でした。

 私たちは「国」というものを普通疑いません。「当たり前」の存在として考えています。しかし「国」という概念は当たり前のものではありません。例えば「バチカン市国」という国がなぜ存在できるのかを考えてみればわかります。「バチカン市国」はキリスト教の文化が世界中に広まり、しかもキリスト教文化が現在の世界で一番力があるから認められている国だと考えるべきなのです。だからもし現在の世界の権力がイスラム教にあるならば、「バチカン市国」は「国」として成立していないはずです。

 気を付けてみれば最近でもスコットランドの独立問題、カタルーニャの独立問題、台湾の問題など、「国」の自明性に揺さぶりをかけるような問題が次々おこっています。

 「国」というのは認識なのです。

 現在「国」の力を強くするのが主流です。「国」の力を強くするためには経済的な国際競争力を高めることが必要です。そのためには、為政者の権力を強くして中央集権的なシステムを作ることが手っ取り早い。しかしそれは地方の持っている独自の文化を失わせる危険性があります。地方の衰退はは本当の意味では国の力を衰えさせているのではないかと心配になります。「個性」が大切だと建前では言っておきながら、「個性」がどんどん失われている学校教育とそっくりです。

 『吉里吉里人』によって私は「当たり前」を疑うころを学ぶことができました。さらにこの考え方は言語論にも、貨幣論を学ぶときに大きなヒントになりました。

 地方が消えていく現在に、地方が生きていくヒントを与えてくれる名作です。
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井上ひさしさんの思い出

2020-07-02 19:01:40 | 井上ひさし
 井上ひさしさんは山形県出身の作家である。だから親近感を持っていた。しかし井上さんが山形県出身であることを知らないうちから、多くのテレビ番組で出会っていた。

 おそらく一番初めは「ひょっこりひょうたん島」だ。この番組の始まりのころは記憶にない。「ひょっこりひょうたん島」が始まったのは1964年である。まだ私は小さすぎた。物心ついた時にはその番組はあった。内容はまったく覚えていない。おもしろかったという印象だけ残っている。

 もう一つ。そのころ「てんぷくトリオ」のコントが全盛であった。「てんぷくトリオ」というのは三波伸介、戸塚睦夫、伊東四朗のコントグループである。その「てんぷくトリオ」のコントは井上ひさしが書いていた。私は小学校のころ、市の図書館に行って「てんぷくトリオ」のコントの本を借りて読んだ記憶にある。好きだったのだ。その時はこれを井上ひさしさんが書いたことを知らなかった。「てんぷくトリオ」のコントを井上さんが書いたことを知ったときは、不思議な衝撃感があった。

 そして「ムーミン」である。最初の「ムーミン」の何作かは井上さんが脚本を書いている。あの有名な「ねえ、ムーミン」で始まる主題歌も井上さんの作詞だ。トーベヤンソンさんは最初のムーミンにご立腹だったという話を聞いたことがあるが、しかし最初のムーミンは私にとっては、忘れられない名作である。

 井上さんの作品は私を育ててくれた。知らず知らずに、小さいころに井上さんに育ててもらっていたことに、私は大きくなってから気づいたのである。
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