とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

映画評『万引き家族』

2018-06-17 06:54:18 | 映画評
監督・脚本 是枝裕和
出演 リリー・フランキー 安藤サクラ 松岡茉優 池松壮亮 城桧吏 佐々木みゆ 
高良健吾 池脇千鶴 樹木希林

 この映画は「現代」の表に現れない日本の姿がリアルに描かれている映画だった。

 血のつながりのない人間たちがひとりの老婆の家に同居するようになる。彼らは好きで帰る家を失ったのではない。それぞれにそれぞれの事情があり集まったのだが、みんな「現代」の格差社会のひずみによって帰る家を失ったと言える。だからここに集ったのは必然だった。彼らは支え合うしかなかった。「普通」の社会と対峙しながら、お互いを支え合うしかなかったのだ。

 私たちの「常識」はこの映画の警察の人の立場でものを見ている。しかしこの映画を見ていると、警察の立場の「常識」がどれほどうさん臭いもんであったのかがわかってくる。われわれ現代日本人は「常識」を守るために、たくさんの人の生きる場所を奪っているのだ。そんな現実の日本社会の構図を見せてくれる映画だった。日本は「民主的で平等な平和」な社会だとみんなが思っている。しかし本当にそうなのか。「民主的で平等で平和」な社会に必死でしがみついてうさん臭い人間にみんながなっているだけなのではなかろうか。

 最近起こった猟奇的な犯罪も犯罪者側の視点に立てば見え方が違うのではないかと思わせる。社会のひずみが人間を追い込んでいくのである。犯罪者を断罪するだけではなく、社会の問題として、そして自分自身の問題として考えていく必要があるのだ。

 カンヌで最優秀にならなければ見ない映画だったかもしれない。カンヌはいい仕事をした。
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映画評『ペンタゴン・ペーパーズ』

2018-05-06 07:26:46 | 映画評
監督、スティーブン・スピルバーグ
出演、メリル・ストリープキャサリン トム・ハンクス他

 ストーリーは以下の通り。

 ベトナム戦争の状況について政府が意図的に間違った情報を国内に流していた。その事実を知っている男が、政府の不正を暴露するために新聞社に機密文書のコピーを流す。その文書が「ペンタゴン・ペーパーズ」である。「ニューヨーク・タイムズ」と「ワシントン・ポスト」が政府の圧力に屈せずに報道を続け、巨悪が市民に明らかになっていく。

 現在のアメリカでもトランプはマスコミ批判を繰り返し、圧力をかけ、自分の疑惑をかわそうと必死になっている。これではまさに「共産国家」と同じである。民主主義が踏みにじられている。そんな状況に対しての明確な抗議の映画であり、この正義感に強く共感する。ストーリー展開もしっかりとしており、人物描写も裏と表をしっかりと描いているのでリアリティがある。単なるアジテーション映画ではなく、作品としても超一級だ。すばらしい映画である。

 日本においても同じだ。安倍政権は不正隠しに必死であり、徐々にその事実があらわれてきているが、そんな不正を忘れさせようと、あらたなことをどんどん始め目くらまし戦法をとっている。こんな政権はすぐにでも退陣してほしいというのが私の本音だ。しかしこの政権は我々が選挙で選んだ政権なのだ。われわれは次の選挙で目くらましに騙されないで投票していくしかない。

 日本のマスコミもいけない。真実を暴くことを主眼としていなく、空気づくりを主眼としている。これは国民を信じていない証拠であり、マスコミも民主主義を信じていないということを示している。

 もっと真実を追い求めてもらいたい。この映画は真実の力を教えてくれる。
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映画評「15時17分、パリ行き」

2018-03-03 07:32:54 | 映画評
 監督:クリント・イーストウッド

 クリント・イーストウッド監督が、高速鉄道で起きた無差別テロ事件を映画化した作品。列車に乗り合わせていた3人のアメリカ人青年がテロリストに立ち向かう姿を再現する。事件の当事者3人の青年を主演俳優に起用し、当時列車に居合わせた乗客も出演。撮影も実際に事件が起きた場所で行われた。

 3人の青年たちは子どものころは問題児だった。挫折を繰り返しながらも夢に向かって努力していく。その姿がリアルに淡々と描かれていく。青年となり離れ離れになっていた3人が夏休みにヨーロッパ旅行に行く。旅行中の姿もリアルだ。そんな彼らがパリ行きの列車に乗る。そこでテロが起きる。

 3人はテロに立ち向かう。二人は軍に所属しているから訓練は受けているが、立ち向かう勇気は挫折をしても夢を持ち続けてきたからだ。その姿は美しい。

 押しつけがましさがない分、人間に対する希望が押し寄せてきて、私は感動した。

 それにしても、素人がこれだけの演技ができるというのは、これからの時代の映画作りは大きく変わるのではないかとも感じさせられた。
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映画評『スリービルボード』

2018-02-23 21:17:14 | 映画評
監督、マーティン・マクドナー
主演、フランシス・マクドーマンド

 いい映画だった。マクドナー作の演劇は何度か見たことがあった。しかし私にとってはよくわからなかった。だから映画もあまり期待しないで見に行った。しかしこの映画はその意図がよくわかった。

 人間は怒りを行動のモチベーションにしている。怒りは新たなものを生み出す。しかし怒りは怒りを生み出すだけだ。差別意識の強いディクソンという警察署員が、自殺した警察署長からの手紙を受け取る。そこには「愛」の必要性が書かれていた。この映画のテーマが「怒りよりも愛を」というものであることはあきらかだ。

 単純なテーマなのではあるが、説教臭いわけではない。セリフにリアリティがあるので説得力がある。日常的な生活の中で、複雑な人間関係が絡み合いながらテーマが提示されていくのだ。陰湿な笑いや、嫌悪感、思いやり、理不尽な思い、人間の日常生活に存在するさまざまなものがしっかりと描かれているのでリアリティが生まれてくるのだ。

 なぜ演劇のマクドナー作品が私にしっくりこなかったのか。おそらく日本人は露骨に感情を表に表さないからであろう。それなのに露骨な感情をマクドナーは要求してくる。だからリアリティを感じないのだ。それが見えてきたことも今回の収穫であった。

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映画評『グレイテスト・ショーマン』

2018-02-20 23:19:17 | 映画評
 マイケル・グレイシー初監督作品。
 主演 ヒュー・ジャックマン。

 19世紀に活躍したエンターテイナー、P・T・バーナムの成功を描くミュージカル映画。である。P・T・バーナムをヒュー・ジャックマンが演じた。

 子どものころ貧しかったバーナムは成功を夢見て、サーカスでショービジネスでの成功を成し遂げる。しかしそれは大衆演芸であり、地域住民や上流階級には全く評価されない。いやそれどころかさげすみの対象となっていた。
 そこでバーナムは、ヨーロッパのオペラ歌手のアメリカ公演を興行して成功する。しかしそれは自らを成功させた興行を見捨てた形になった。
 オペラ歌手の興行はスキャンダルのために破綻し、サーカスは地域住民との対立によって放火され焼け落ちる。バーナムは絶望の底に落ちる。
 しかし、そこから彼は仲間や家族の励ましにより再生する。

 単純なストーリーであり、ご都合主義と言ってもいいのだが、ミュージカルなのですんなりと入ってくるし、嫌味になることはない。楽曲はどれもわかりやすく、しかもエネルギッシュで、聞いていて心地よい。見て損はない。アメリカ映画の典型的なストーリーであり、アメリカを知るという意味でもいい。

 しかしあまりにステレオタイプのストーリーである。しかも例えば身長の伸びない大人や、ひげの生えた女性など、何らかの「障害」を持っている人がサーカスの一員となるのだが、それらのサーカス団員の心の苦しみが予定調和的に解決していくことが、逆に「障害」を持つ人に対しての理解が足りないのではないかと感じられてしまった。自分に自信がない人間が、人前にでることはそんなに観点ではないのだ。ミュージカルならなんでも許されるというものでもあるまい。

 「いい意味でも悪い意味でも、アメリカ」と思わせる映画であった。
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