とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

映画『パリタクシー』を見ました。

2023-07-19 17:39:40 | 映画
 映画『パリタクシー』を見ました。波乱の人生を送った女性が、年老いて死を覚悟して高齢者施設に移る。その時に乗ったタクシー運転手との数時間の出来事を映画です。私の好きなタイプの映画でした。

 老女の波乱の人生がおもしろい。もちろんおもしろいと言ってはいけないような悲惨な出来事だらけなのですが、しかし人生の流転に引きつけられます。男の股間を焼いてしまうのは、ジョン・アービングを感じておもしろかった。老女の悲しくも思い出深い人生が心を動かします。

 一方ではキックボードの乗った男ににぶつけられたり、タクシーの運転手があやうく信号無視でキップをきられそうになったり、狭い道で駐車して大渋滞になりながら余裕を見せたり、小さなストレスが次々と襲い掛かる中で仕事をしている姿に、リアリティを覚えます。

 最初、90分という短い映画なので深刻な芸術系の映画なのかなと思っていましたが、波乱万丈で、感動的な映画でした。

 ただし最後の101万ユーロはいけません。結局は金で解決されてしまったような感じがしてちょっと覚めてしまいました。
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映画『アフターサン』を見ました。

2023-07-14 18:30:58 | 映画
映画『アフターサン』を見ました。難しい映画だという予備知識はあったのですが、それ以外の情報はシャットアウトして見ましたが、完全に見誤ってしまってしまいました。だから多分半分も理解できていません。深い映画です。

映画を見終わってから見た、「あらすじ」と「解説」を引用します。

(あらすじ)
思春期真っただ中の11歳のソフィは、離れて暮らしている31歳の父親カラムと夏休みを過ごすため、トルコの閑散としたリゾート地にやってくる。二人はビデオカメラで互いを撮影し合い、親密な時間が流れる。20年後、当時の父の年齢になったソフィが映像を見返すと、そこには大人になって分かる父親の一面があった。

(解説)
幼いころに父親と二人きりで過ごした夏休みを、成長した女性が回想するかたちで描き、世界各国の映画祭や映画賞で話題となったヒューマンドラマ。トルコのリゾート地で31歳の父親と短い夏を過ごした11歳の少女が、当時の父親と同じ年齢になり、大好きだった父親の記憶をたどる。

あらすじの通り見終わったのですが、解説の「女性が回想するかたち」だったというのは気が付かないまま見終わりました。父親と娘のすこしぎくしゃくした、しかしかけがえのない夏休みを描いているのはわかりました。しかし逆に女の子のほうに死の影を感じてしまっていたのです。ですから映画の見方としては失格でした。

この映画は、離婚して今は一緒に暮らしていない男親と娘のもどかしい関係に、青春の初々しさと人間関係のぎこちなさが描けかれています。最後にデビッドボウイとクイーンの『アンダープレッシャー』が流れ、アンバランスがアンバランスのままに巨大化していく映像が衝撃的でした。

映画を見ながら様々な想像をしてしまいます。映画で見知らぬ親子の人間観察をしているような映画でした。

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映画『銀河鉄道の父』を見ました。

2023-05-07 10:49:01 | 映画
門井慶喜の長編小説を原作とした映画『銀河鉄道の父』を見ました。宮沢賢治の生涯をその家族に視点をあてて描かれた作品です。淡々と描かれることによって、宮沢賢治の家族の姿を映し出し、それを自分の家族の姿のように見てしまう映画でした。泣けました。

この作品は宮沢賢治の父、宮沢政次郎の目を通して、息子をはじめとする家族を描く小説です。この本を読んだときその感想を私は次のように書いています。

「宮沢賢治は不器用な人なのです。不器用であるからこそ逆に好かれるのです。不器用な家族の不器用な歴史が語られる本です。」

家族は不器用です。信頼があることはその通りではありますが、その信頼があるからこそ対立が絶えません。自分が自分を思い切り主張できる場なのです。普段外の世界では言えないようなことも家族の中では口に出ます。厳しい言葉が行き交いますが、しかし家族は家族です。基本的な信頼は揺るぎません。この映画はその家族の姿を淡々と描いています。だから自分の家族を描いているように伝わってくるのです。

映画では宮沢賢治に焦点が当たり過ぎているように思われました。父親よりも宮沢賢治が主人公に見えてしまったのも事実です。

この映画を見ながら、地方には名も知られず死んでいったたくさんの「芸術家」がいたのだろうなと感じました。その地方にはそれぞれの価値観があり、その中で評価すべき才能がたくさんあったのだろう。そういう地方の文化が浮き上がってくるような映画だったと感じます。

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映画『ザ・ホエール』を見ました。

2023-05-01 14:32:06 | 映画
映画『ザ・ホエール』を見ました。舞台作品を見るような会話劇で、人間の弱さとその弱さを乗り越える勇気を描く、考えさせられる映画でした。

大学で文学を教えるチャーリーは、同性の恋人に先立たれます。その精神的なショックのために過食状態になり、動くのもままならないほど太ってしまいます。もはやその状態から抜け出せないほどにまでなっています。大学の授業はオンラインで行っています。カメラの故障だと言って自分の姿は生徒に見せません。

チャーリーを助けてくれるのはアランの妹であり看護師であるリズです。彼女はチャーリーを恋人のように支えてくれます。このチャーリーとリズの関係が不思議です。

そこに別れた娘が表れます。チャーリーはアランと付き合う前に、結婚をしていて子供もいたのです。娘はチャーリーに対して悪態をつくのですが、チャーリーはそれでも娘にやさしく接します。そして娘に自分の財産を与えると言うのです。チャーリーは実はかなりのお金を蓄えていたのです。しかしそれほどの蓄えがあるのならば、医療を受けることもできたはずです。それなのにそれを選ばずに娘に財産を残すことを決断していたのです。

この映画は自分が自分の意志で正しいことをすること、自分の人生を自分の力で決定すること、それを問いかける映画でした。

ただしわかりにくい。日本では医療を受けるのが当たり前です。しかしアメリカは全く違います。医療を受けるかどうか、保険に入るかどうか、すべて自己責任なのです。だから日本人には分かりづらいのかもしれません。日本人は国や会社が面倒見てくれると考えてしまっています。だから自分の問題としてしっくりと来ないのです。

日本もだんだん自己責任の国になりつつあります。経済的に国が面倒を見ることが不可能になりつつあるのです。特に自民党と経済界はその方向に舵をきっています。するとこの映画は明日のための映画なのかもしれません。

この映画は舞台作品のように思えました。見終わった後に調べてみたらやはり舞台の映画化でした。『ブラック・スワン』などのダーレン・アロノフスキー監督が、劇作家サミュエル・D・ハンターによる舞台劇を映画化したということです。英米の舞台は刺激的です。
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ドキュメンタリー映画『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』を見ました。

2023-04-26 17:42:24 | 映画
デヴィッドボウイの音楽人生をたどるドキュメンタリー映画『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』を見ました。私が最も聞いたミュージシャンの一人、デヴィッドボウイの人生を改めて見つめなおすことができました。

デヴィッドボウイは最初、グラムロックの旗手として表舞台に出ました。自分を宇宙人と見立てたアルバムを制作し、ステージも「ジギー」という宇宙人になりきっていました。演劇的でありミュージカル的な要素を含んだコンサートでした。彼はその時から自分の真の姿を隠していました。

次にアメリカにわたり、ロカビリー風の音楽を作った時代に移ります。この変化から彼の異常さが表れ始めます。彼の真の姿が見えなくなってきます。

そして私の一番好きなベルリン時代が来ます。ブライアンイーノとともにノイジーであり、アンビエントな音楽を作り上げます。ストイックに自分の内面と向き合っている姿が見えてきます。その前後の派手なボウイを好む世代の人には一番退屈な時代だったのかもしれませんが、ボウイが真の自分を見つめた時代だったのではないかと私には感じられます。

そしてスーパースターの時代がやってきます。『レッツダンス』です。この時代、古くからのボウイファンは、スーパースターを演じているボウイに違和感を覚えます。だからなのでしょう。かれの黄金時代は長く続きませんでした。ボウイはスーパースターにも飽きてしまうのです。

ボウイは自分の人生を演じ続けました。ロックスターを演じたのです。それは時代が彼に要求したものだったかもしれませんし、彼自身が変化する時代に挑んだのかもしれません。しかし自分の人生を演じるのは無理が生じます。そこに彼の悲劇があったのではないでしょうか。だからこそボウイの真の姿はスーパースターの座を降りてからにあったのかもしれません。しかしその頃は、私もボウイから離れてしまいました。

もう一度ボウイを振り返りたいと思いました。彼は何を目指していたのか気になります。

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