木村花さんの死について、SNSでの誹謗中傷に対する批判が大きくなっている。たしかにSNSでの誹謗中傷は悪い。しかしそれは理不尽に「死ね」とか「消えろ」とか誰が見てもありえない言動に対しての批判であり、健全な批判とは質が違う。マスメディアの取り上げ方は、誹謗中傷と批判をごっちゃにしているように感じられる。
SNSでの投稿は不特定の少数の人に対する発信である。政治やマスメディアに対する批判を行っても、巨大なコンクリートの壁に竹やりでつついているようなものである。それでも言わなければならないことを言うのだ。それだけ今の政治やマスメディアが自分勝手でおかしくなっているからなのだ。
フジテレビ上席解説委員の平井文夫氏がコラムをネットに出していた。「暗闇でひたすらブン殴られているような恐怖 『表現の自由』を錦の御旗にして人を殺すな」というタイトルで、次のような文章が載っていた。
ネットでの匿名の誹謗中傷がなぜつらいのか。これをやられたことのない人はわからないと思う。僕のように大して有名でなく、従ってフォロワーも少ない人間のところにも、ちょっと変わった発言や文章に対する匿名の誹謗中傷はたくさん来る。
最近では新潟の会社員(もちろん匿名)から「どう転んでも底辺ネトウヨと同じ発信しかできないおじさんがいまだに解説委員をやっているフジテレビがかわいそう」という投稿があった。「なんだ大したことないじゃないか」と思われるかもしれないが、僕のようなオジサンだってこういう発言にへこむのだ。
自分勝手な文章である。まず、テレビに出て発言する人が「大して有名でない」なんてことはない。まるで「大して有名でない」から何を話しても許されるのだとでも言いたいような口ぶりである。そんなことはありえない。テレビに出ている人の発言は影響力が大きい。そんなこともわかっていないのか。
「新潟の会社員」の投稿も誹謗中傷というほどのものではない。なぜならこの投稿は、おそらく平井氏の『バイキング』での「テンピンマージャンは違法ではない」という発言に対して行われたものだと思われるからだ。この平井氏の発言に対してこの程度の批判をして悪いと考えるほうがおかしい。
このあと平井文夫氏は、木村花さんの死について言及し、
『表現の自由』を錦の御旗にして人を殺すのはもうやめた方がいいのではないか。
と文章を結んでいる。論理のすり替えもいい加減にしてほしい。そもそも木村さんの死の原因もわからないのに、すべてをSNSの誹謗中傷のせいにしているのがおかしい。フジテレビの番組の責任はどうなるのか。フジテレビの上席解説委員ならば、その検証を真っ先にしてもらいたい。
しかも誹謗中傷と批判をごっちゃにして、自分の身勝手な発言は許されて、自分に対しての批判は許されないと言う自分勝手な結論に無理矢理持ち込んでしまっている。高校生の小論文でもこれだけ非論理的な文章はない。
フジテレビはこんな人を番組に登場させ、炎上させて視聴率を上げようとしているのだろうか。これこそ問題にすべきことであろう。
言論統制に向かおうといしている政治やマスコミを許しておくわけにはいかない。