とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

モダンスイマーズ『嗚呼いま、だから愛。』をテレビで見ました。

2020-04-30 06:08:29 | 演劇
 モダンスイマーズの『嗚呼いま、だから愛。』をテレビで見ました。作家の蓬莱竜太さんはいま一番すぐれた日本の劇作家であり、私も遅ればせながら注目しています。この『嗚呼いま、だから愛。』という作品も、人間の日常に潜んでいる、言葉にならない本音が引き出されていきます。その状況の作り方が見事です。

作・演出 蓬莱竜太
出演 古山憲太郎、津村知与支、生越千晴、西條義将(以上モダンスイマーズ)/
川上友里(はえぎわ)、太田緑ロランス、小林竜樹、奥貫薫

 お互いになんらかの不満を感じながら毎日をすごしている夫婦。その夫婦が再生するまでの物語。

 人間には隠された本音がある。その隠された本音は自分でもまだ言葉になっていない場合が多いし、自分が隠そうとしているのが自分でもわからない場合が多い。

 その隠された心は家族との関係においても存在している。どんな家族でも気を使いながら生活をしている。何かが嫌であり、何かが物足りない。本音は隠されながら、家族の形をこわさないように生きていく。その隠された心は本人もどういう心なのか気づいていない。単なるストレスとして感じているだけで、それを言葉にするとどういうものかがわかっていないのだ。

 なんらかのきっかけでそれが暴かれたときに、人は自分を抑えきれなくなる。自分の醜い隠された本心を見せつけられたときに、冷静ではいられなくなる。その姿はみっともない。しかしそれは自分の中の革命であり、つらい経験にはなるだろうが、再生する可能性もある。

 蓬莱さんはその醜い姿を暴き出す。醜いがいとおしい。醜いが美しい。それが人間である。すばらしい舞台だった。

 テレビはやはり集中力が欠けてしまうが、心に迫る舞台でした。。

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9月入学の一番の懸念

2020-04-29 12:34:05 | 教育
 9月入学が大きな話題となってきた。きのうもここに書いたが、私は基本的には賛成である。しかし、昨日書き忘れたことで一つだけ重大な要素がある。

 それは、実は学校に行くのがいやでいやでたまらない生徒がかなりの数いるということだ。そんな生徒にとっては学校に行く期間が延びることは考えたくもないことだ。学校が嫌いで あと1年で終わると思っていた生徒にとって、それが伸びることはつらいことに違いない。人によっては「死ぬほど」つらいと感じている生徒もいるだろう。

 「死ぬほど」というのは言い過ぎだと思うかもしれない。しかし、現実にはそういう生徒はかなりの数いる。不登校になる生徒、保健室登校をする生徒、そこまではいかなくともじっと耐えているだけの生徒、たくさんいるのである。

 学校にはいまだに理不尽なことが多く、いまだに平気でどなりつけるパワハラ教師はうじゃうじゃいる。教師だけでなく、生徒間の人間関係で苦しんでいる生徒も多い。部活動だって、みんなやりたくてやっていると思っているかもしれないが、日常の活動はさぼりたくてしょうがないはずだ。(これは誰もが経験しているだろう。)そういう生徒は9月入学に反対するはずである。

 9月入学を署名運動している生徒がいたので、生徒はみんなそれを望んでいるように思うかもしれないが、それはどれくらいなのだろう。実はごく一部である。少なくとも進学校以外の高校生は、さっさと卒業したい生徒のほうが普通である。進学校の生徒だって、すでに受験勉強を始めている生徒は気が遠くなっているに違いない。

 9月入学はいいことだと思うが、やはり議論が必要である。生徒の意見もよく聞いて判断していく必要がある。決して前のめりの議論にならないように願いたい。
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9月入学

2020-04-28 08:01:42 | 教育
 新型コロナウイルスの影響で9月入学が話題になっている。私は昔から9月入学賛成派である。これを機に実現出来たらいいと思っている。ただし、拙速な判断でバタバタ変更してしまうのはやめてもらいたい。
 
 9月入学のメリットはたくさんある。

 1つ目は国際的に9月入学が圧倒的に多いということだ。今の日本だけが4月入学という状況では留学がしにくい。手続きが面倒だ。

 さらに日本から海外に入学した時、多くの場合1年後1年遅れの学年に入らなければならないということだ。2年生の秋から留学した場合、1年後戻ってきたときに3年生になるのではなく、2年生のままなのである。運用上の工夫をすれば3年生に戻ってくることも可能なのかもしれない。しかし2年生の単位を修得していないので、3年生になることは認められないことが現実なのだ。これでは留学を躊躇する。

 2つ目は入試シーズンが冬でなくなるということだ。東北ではセンター試験が雪の季節である。そのために交通手段の問題、インフルエンザなどの感染問題などさまざまな余計な問題に直面してしまう。余計な神経を使わなければならず、毎年大変である。

 3つ目は、夏休みに余裕が生まれるということだ。『合否は夏で決まる!』なんて愚かない文句を聞く必要がない。夏休みは勉強から解放され、本当に自分のやりたいことをできるようになる。創造性ある活動ができるようになり、健全な成長ができるようになる。

 このようにいい面が多い。

 しかしこれをすぐに実行するのは、そう簡単なことではない。

 元文部科学省の前川喜平さんはツイッターで次のように言っている。

「学年の始期を9月にする案は何度も検討した。簡単なことではない。学齢を5か月引き上げるのか?17か月間に生まれた子どもを1学年に括るのか?子どもと大人では1月の重みが違う。安易に考えてはならない。もし本当にやるなら周到な準備と経過措置が必要だ。コロナに乗じて議論すべきことではない。」

 正論だ。

 とは言え、議論が高まったせっかくの機会なのだから、ここで思い切ってやらないと結局は変えられない。だからこそ議論を広くかつ深めてもらいたい。
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演劇『アンチゴーヌ』をテレビで見ました。

2020-04-27 05:55:52 | 演劇
 新型コロナウイルスの感染予防のために生の芝居が見ることができなくなってしまいました。しょうがないのでテレビで放送されて録画していたものを見ました。

【作】ジャン・アヌイ
【翻訳】岩切正一郎
【演出】栗山民也
【出演】井優、生瀬勝久、梅沢昌代、伊勢佳世、佐藤誓、渋谷謙人、富岡晃一郎、高橋紀恵、塚瀬香名子

 この作品はソフォクレスの『アンチゴヌ』という作品を下敷きにしています。『ソフォクレス』というのは有名な『オイディプス』の作者です。そのオイディプス王の次の世代の物語です。

 『アンチゴヌ』というのは次のような話です。
 
 ギリシア神話の英雄オイディプスの娘アンチゴヌは、父とイオカステの母子婚によって生れ,オイディプスが盲目となりテーベから追放されると,最後まで彼の手を引いて放浪生活に付添った。7将によるテーベ攻めが失敗したあと,戦死したエテオクレスに代り王となった伯父のクレオンの布告にそむき,兄弟のポリュネイケスの遺体に土をかけたところを発見されて捕えられ,クレオンによって生きたまま墓に入れられ,餓死させられることになった。彼女は墓室の中で首を吊って自害し,これを知ったクレオンの息子でアンチゴネの婚約者であったハイモンも,彼女の遺体のそばに行き自殺をとげ,さらにクレオンの妻エウリュディケまで息子のあとを追って,クレオンを悲嘆のどん底に陥れたという。

 『アンチゴーヌ』は、上記の『アンチゴヌ』を下敷きにフランスの J.アヌイが書き上げた戯曲です。『アンチゴーヌ』では、人間的な心を一番に考えるアンチゴーヌと、社会全体の安定を一番に考えるクレオンの対立が作品の主題になります。ふたりの対立は単なる意見の相違ではありません。お互いにお互いの心を理解しながらも、最後の一線で相容れることができないのです。紙一重の違いしかないのにもかかわらず、この対立はお互いに極限まで追い詰めます。深い心の葛藤が見るものに迫ります。

 蒼井優と生瀬勝久の迫真の演技に圧倒されました。

 テレビでは役者の表情はしっかりと見ることができていい面もありますが、さすがに集中力が落ちてしまいます。はやく生の演劇が見ることができる状況ににもどることを願っています。

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源氏物語を読む11「花散里」

2020-04-26 06:49:34 | 源氏物語
 「源氏物語を読む」シリーズの11回目。「花散里」です。メモとして書き残しておきます。

・短い
 この帖は短い。「葵」「賢木」と長くしかも波乱の帖が続いたし、次は「須磨」に行くわけですから、気分転換として入れたような帖であるとしか思えません。このあたりに作者の才能を感じます。もしかしたら後から付け加えたのかもしれませんが、花散里という女性は、この後の物語ではなくてはならない人物となります。後から付け加えたとしても非常にうまい。

・優しい女性
 花散里は優しい女性です。今で言えば家庭的な女性で、家族のためにつくすことを生きがいにしている女性です。これまで源氏が相手にしていた女性とは決定的に違います。だからこそこの後、物語上重要な役割を果たすことになります。 

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