モダンスイマーズの『嗚呼いま、だから愛。』をテレビで見ました。作家の蓬莱竜太さんはいま一番すぐれた日本の劇作家であり、私も遅ればせながら注目しています。この『嗚呼いま、だから愛。』という作品も、人間の日常に潜んでいる、言葉にならない本音が引き出されていきます。その状況の作り方が見事です。
作・演出 蓬莱竜太
出演 古山憲太郎、津村知与支、生越千晴、西條義将(以上モダンスイマーズ)/
川上友里(はえぎわ)、太田緑ロランス、小林竜樹、奥貫薫
お互いになんらかの不満を感じながら毎日をすごしている夫婦。その夫婦が再生するまでの物語。
人間には隠された本音がある。その隠された本音は自分でもまだ言葉になっていない場合が多いし、自分が隠そうとしているのが自分でもわからない場合が多い。
その隠された心は家族との関係においても存在している。どんな家族でも気を使いながら生活をしている。何かが嫌であり、何かが物足りない。本音は隠されながら、家族の形をこわさないように生きていく。その隠された心は本人もどういう心なのか気づいていない。単なるストレスとして感じているだけで、それを言葉にするとどういうものかがわかっていないのだ。
なんらかのきっかけでそれが暴かれたときに、人は自分を抑えきれなくなる。自分の醜い隠された本心を見せつけられたときに、冷静ではいられなくなる。その姿はみっともない。しかしそれは自分の中の革命であり、つらい経験にはなるだろうが、再生する可能性もある。
蓬莱さんはその醜い姿を暴き出す。醜いがいとおしい。醜いが美しい。それが人間である。すばらしい舞台だった。
テレビはやはり集中力が欠けてしまうが、心に迫る舞台でした。。