とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

映画『tick, tick...BOOM! 』を見ました。

2021-11-29 08:39:54 | 映画
 映画『tick, tick...BOOM! 』を見ました。表現者の苦悩を描きながら、表現者に勇気を与える名作です。

監督
リン=マニュエル・ミランダ
出演
アンドリュー・ガーフィールドジ、アレクサンドラ・シップ、ロビン・デ・ヘスス、ジョシュア・ヘンリー

 『tick, tick...BOOM! 』というのはもともとはオフブロードウェイで上演されたミュージカル作品です。名作ミュージカル『レント』を生んだ作曲家ジョナサン・ラーソンが、『レント』の前に作たの自伝ミュージカルです。

 そのミュージカルの舞台をリン=マニュエル・ミランダが映画化しました。リン=マニュエル・ミランダは「イン・ザ・ハイツ」「ハミルトン」などの原作者として作詞や作曲なども手がけた人物です。

 私は最初はなんの予備知識がなかったので、何の映画かもよくわからないまま見ていました。しかし、ラーソンの夢と挫折、そして再生を描いた非常にすぐれたミュージカルであり、さらに映画としてもすばらしいものでした。

 優れた才能がある製作者でもそれがすぐに認めらるわけではありません。ビジネスとしての視点も必要であり、運もあります。挫折するのは当たり前です。いったいどれだけのクリエーターが挫折してきたでのでしょうか。しかし作り続けるしかないのです。心にしみます。

 ジョナサン。ラーソンは『レント』が上演される直前に突然死したそうです。劇的な人生だったのですね。彼の思いが伝わってくるいい映画でした。
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『イロアセル』を見ました。

2021-11-28 06:36:02 | 演劇
 新国立劇場で『イロアセル』を見た。インターネットが世界を支配し、個人がSNSで世界に発信し始めた。その結果、個人の言動は丸裸になり、逆に誰もが本音を言えなくなってしまった。そんな現代社会を戯画化した演劇である。考えさせられる。

作・演出
倉持 裕

出演
伊藤正之 東風万智子  高木 稟 永岡 佑 永田 凜
西ノ園達大 箱田暁史 福原稚菜 山崎清介 山下容莉枝

 誰もが本音を言えなくなった世界で、政治家と巨大企業が自分の思うままに社会を作り始める。近年、忖度という言葉が流行したが、我々の言動は忖度によって制限されていく。これはここしばらくの日本の状況である。息苦しい世の中で人々のストレスはたまっていく。

 そしてそのストレスのマグマが爆発する。狂乱が生まれ、暴走が始まる。その暴走の後がどうなるのか。人々は平和になったのか。見る限りそうは見えない。やはり言論はどこか抑圧されている。その原因はなんなのか。

 後半、ついていけなくなったところがあったので、もう一度みてみたい。

 フルオーディションによる上演だという。そのためか超有名な役者は出ていない。しかし役者はみんな魅力的だった。こういう質のいい演劇を提供してくれる新国立劇場に拍手を送りたい。
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『ザ・ドクター』を見ました。

2021-11-27 16:59:39 | 演劇
 パルコ劇場で『ザ・ドクター』を見ました。近年の閉塞的で暴力的な陰湿な言論状況を見事に描き、怒りと絶望に苦しむ現代人を描く傑作です。すばらしい舞台でした。

作:ロバート・アイク 
翻訳:小田島恒志  
演出:栗山民也
出演:大竹しのぶ
橋本さとし 村川絵梨 橋本淳 宮崎秋人 那須凜 天野はな 久保酎吉 
明星真由美 床嶋佳子 益岡徹

 大竹しのぶ演じるエリート医師・ルースのもとへ、自ら妊娠中絶処置を行った一人の少女が運び込まれる。生死をさまよう少女のもとへ「彼女の両親から臨終の典礼を頼まれた」と神父が現れるが、ルースは面会謝絶を理由に彼の入室を拒否する。このことで、ルースは世間から激しいバッシングを受ける。

 例えば皇室のスキャンダルで昨今の日本のマスコミは大騒ぎした。死ぬまでたたき続けるぞというマスコミの姿勢に私はうんざりしたし、犯罪性まで感じた。おそろく私と同じようにマスコミに対する嫌悪感を感じていた人は多かったはずだ。しかし、その意見は受け入れることなく、マスコミは暴走する。現代はそういう時代なのだ。

 権力のある官僚が森友問題をもみ消し、一人の公務員が死ぬほどの苦しみを味わっていた。それを誰もが感じていながら、いつの間にか死んだ公務員を見せしめにして、権力に逆らうとこうなるとしか感じられないような状況を作ってしまった。現代とはそういう時代なのだ。

 誰もが権力の横暴さに気が付きながら、そしてそれに苦しめられながらも、いざ自分が戦うとなると尻込みをするような状況を作り出している。社会は表面では平穏でありながら、その裏側では不満のマグマがたまっていく。現代とはそういう時代なのだ。

 そんな時代の閉塞感を見事に描いた舞台だった。見事である。
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『Home,I'm Darling~愛しのマイホーム 』を見ました。

2021-11-24 19:07:16 | 演劇
 山形市民会館で『Home,I'm Darling~愛しのマイホーム 』を見ました。表面とは逆に現代の不安を描くよくできた演劇でした。

作 ローラ・ウェイド
演出 白井晃
出演 鈴木京香 高橋克実 銀粉蝶 青木さやか 江口のりこ 袴田吉彦

 主人公は50年代のアメリカの生活スタイルにあこがれ、50年代のアメリカのような生活をしている現代の中年夫婦である。妻はリストラの対象になったことにより、専業主婦になることを選び、50年代のアメリカスタイルの生活を演じるようになる。しかしその生活は金がかかる。夫の昇格を望むがうまくいかず、家のローンは滞ってしまう。夢のような生活の足下から、ギスギスした現実がじわりじわりと姿を見せ始める。

 現代は安定感がない。次から次へと変化が訪れ、その変化についていけなければ生きていくことがむずかしい。自分の望む生活なんかありはしない。ただ何かに追いかけれらながら生きていくしかない。そんな現実の中で、人間関係は崩れていき、現実はどんどん厳しくなっていく。

 この演劇は表面上は華やかなものだが、事実は逆である。それをうまく描いた作品だった。よくできた演劇だった。
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安冨歩著『原発危機と東大話法』を読みました。

2021-11-21 18:28:28 | 読書
 安冨歩著『原発危機と東大話法』を読みました。世間にはびこる詭弁を解説してくれる本です。なるほどと思わせることが多くありました。

 東大話法とは具体的には以下の通りです。

東大話法規則一覧
  1. 自分の信念ではなく、自分の立場に合わせた思考を採用する。
  2. 自分の立場の都合のよいように相手の話を解釈する。
  3. 都合の悪いことは無視し、都合のよいことだけ返事をする。
  4. 都合のよいことがない場合には、関係のない話をしてお茶を濁す。
  5. どんなにいい加減でつじつまの合わないことでも自信満々で話す。
  6. 自分の問題を隠すために、同種の問題を持つ人を、力いっぱい批判する。
  7. その場で自分が立派な人だと思われることを言う。
  8. 自分を傍観者と見なし、発言者を分類してレッテル貼りし、実体化して属性を勝手に設定し、解説する。
  9. 「誤解を恐れずに言えば」と言って、嘘をつく。
  10. スケープゴートを侮蔑することで、読者・聞き手を恫喝し、迎合的な態度を取らせる。
  11. 相手の知識が自分より低いと見たら、なりふり構わず、自信満々で難しそうな概念を持ち出す。
  12. 自分の議論を「公平」だと無根拠に断言する。
  13. 自分の立場に沿って、都合のよい話を集める。
  14. 羊頭狗肉。
  15. わけのわからない見せかけの自己批判によって、誠実さを演出する。
  16. わけのわからない理屈を使って相手をケムに巻き、自分の主張を正当化する。
  17. ああでもない、こうでもない、と自分がいろいろ知っていることを並べて、賢いところを見せる。
  18. ああでもない、こうでもない、と引っ張っておいて、自分の言いたいところに突然落とす。
  19. 全体のバランスを常に考えて発言せよ。
  20. 「もし◯◯◯であるとしたら、お詫びします」と言って、謝罪したフリで切り抜ける。

 以上のような詭弁を東大の教授がよくやってしまうというのです。これは私が興味が持っていた教育改革の問題でも同じでした。一部の改革論者が自分の思惑通りの方向に話をもっていくために、「東大話法」と同じような論理で説明していたのです。しかもそれは文部科学省という組織の中で守られているという印象でした。文部科学省の思惑にそった人材を文部科学省が招聘し、その立場にそった発言を「東大話法」で進めるのです。こんなやり方が許されるならば、どんな方向性でも進めることができます。これはたまったものではありません。

 さらには「東大」というブランドは、国家という立場に近づきやすいという社会的なシステムがあるように思われます。「東大」=官僚という結びつきがあるのです。筆者はそれを「立場」という言葉で説明します。

 筆者の論には納得することが多くあります。

 しかし、一方では筆者の言説も一方的で根拠が明確ではないと感じる所もあります。深く読まなければ正確な評価はしにくいというのが正直な感想です。

 今後、筆者の意見を参考に学者や官僚、政治家の言説を注意深く見ていきたいと感じさせられました。
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