とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

羽生結弦と小平奈緒と言語化

2018-02-26 16:41:56 | 国語
 ある勉強会で主催者から次のような話題が出た。羽生結弦についての朝日新聞デジタルの「孤高の星」という記事から引用する。

 まだ4回転サルコーを完全に自分のものにできていなかった2013年、羽生はコーチのオーサーを質問攻めにした。「助走のカーブは?」「跳び上がる方向は?」「氷についていない方の足の使い方は?」「腕をどう使うのか?」

 受けた助言、自分のひらめきを言葉にしてノートに書き留め、試しては修正する。「最大公約数と言っているんですけど、絶対見つけなきゃいけないポイント」を確立していく。言葉を動きにし、動きを言葉にする。

 試合で負けた後や失敗した後に多くを語るのも、自分の頭を整理し、記事やニュースとして記録してもらうためだ。ミスをしたあとに、下を向いて無言を貫き通すようなことはない。「メディアを戦略的に利用している」という。(後藤太輔 朝日新聞スポーツ部記者)

 この記事をもとに「言語化」の重要性を再認識した。
 そしてさらに別の方から小平奈緒についての日刊スポーツの記事が紹介された。それも引用する。

 小平は、スケート技術を語りたがらない。銀を取った1000メートルの翌日の取材でもこんな場面があった。

 記者 レース映像は見ましたか?
 小平 見ました。やはり、いつもの滑りではなかったです。
 記者 どのあたりが?
 小平 言葉にするとそれに縛られてしまうので、それは…すみません。

 こんなシーンを、今季何度も見てきた。話したくない理由は2つある。1つは、実際とは違うニュアンスで伝わった報道を、自分が見た時を想定してのこと。大切にしている滑りの感覚の中に、他人の「言葉」が残るのが嫌だという。

 もう1つの理由は、幼い頃からスケート少女だった小平らしい。子供たちが、「小平の滑り」と誤解したまま練習に取り組んでしまうのが嫌なのだ。大学時代には教員免許も取得しており、将来的には指導者になるプランも持っている。「結果を出して、スケート人生を辞めたときに自分の言葉で伝えたい」。金メダリストの「言葉」が、また日本スケート界の歴史をつくっていく。(奥山将志)


 この記事は一見すると小平は言語化を拒否しているようにも見える。しかしよく読めば自分の言葉を大切にしているということであることがわかる。

 その証拠に次のような記事を見つけた。朝日新聞の記事から引用する。

 小平が年に1度、そのスケーティング技術を語る日がある。「技術討論会」。

 「怒った猫のような背中を意識し、肩を上げる」。「柔軟性や可動域を生かす」。昨年7月、信州大教育学部のキャンパスの一室で、同大スケート部の選手らを前に約1時間話した。

 結城コーチが1999年の大学赴任後に始め、2年生以上の部員全員が先々シーズンと先シーズンの滑りを自己分析する。精神論ではなく言葉で技術を理解し、指導ができる人材を育成したいとの思いがある。

 小平は大学2年の2006年から続け、これが12回目。滑走時の意識した点などを毎日メモに書き記した「技術カルテ」を参考に、A3用紙2枚の配布資料と映像で、チームメートに説明する。自分の頭の中を整理しながらスケート技術を言語化し、「氷と対話しながら技術的なものを積み上げてこられた」と話す。(榊原一生)

 この記事を読むと、「獣のように」という表現をしたアナウンサーに対して違和感を抱いたのであろうというのは納得がいく。

 一流のスポーツ選手は言葉にこだわる。自分の動きをしっかりと言葉にして、試行錯誤を繰り返しながらその言葉を修正し、理想の形をつくろうとする。一方では言語化によって心も整えていく。羽生はまわりの言葉を自分にプラスにしようとしているし、小平はまわりのことばを自分の言葉に影響をあたえないようにシャットアウトする。対応に違いがあるにしても、言葉が競技力と大きく結びついていることはあきらかだ。
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音楽の好みは14歳に形成(現代の混沌感は少子高齢化が原因?)

2018-02-25 07:15:30 | 社会
インターネットに次のような記事が出ていた。引用する。

私たちの音楽の好みは14歳の時に聴いた音楽によって形成されていることが、新たな研究により明らかになった。

『NY Times』によると、リスナーの生まれた年が音楽の好みを左右しており、14歳の時に聞いた音楽が私たちの音楽の好みに最も重要な影響を与えるとのこと。

今回おこなわれた、Seth Stephens-Davidowitzによる音楽の好みに関する研究。Spotifyのデータをもとに人々の聞く音楽を分析した結果、10代の時聞いた音楽が、その後の音楽の好みに最も大きな影響を与えることが判明した。

1960年~2000年のBillboardのチャートを調査し、それを年齢別の選曲ランキングと照らし合わせて分析。男性の場合は13~16歳の間にリリースされた曲が、大人になってからの音楽の好みに大きな影響を与えるとのこと。平均すると、男性の最も好きな曲は、14歳の時にリリースされた曲であることが多いそうだ。

女性の場合は男性より少し早い。11~14歳の時に聞いた音楽の影響が大きく、平均13歳の時にリリースされた曲が最も好きな音楽になるという。女性のほうが男性より幼少期に受ける影響が大きいらしく、好みを形成する年は思春期の終わりと重なることが明らかになった。



おもしろい記事だが、「そんなことは気付いていたわい。」というのがほとんどの人の感想であろう。昔は自分よりも上の人の音楽の好みを「古い」とか「ださい」とか思っていたが、実はそうではなかった。音楽の好みなんて古いも新しいもないのだ。自分のすきな音楽の中で生きていければ幸せだし、それを語り合える仲間がいればもっと幸せだ。

考えてみれば60年代から80年代にかけては、若い世代がまだまだ多く、新しい音楽が力を持つことができた。しかし少子高齢化の時代である現代は若い世代が少なく新しい音楽が力を持ちえない。これは音楽産業としてはつらいことだ。現代の混沌感というのは、実は少子高齢化が最大の原因なのかもしれない。
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映画評『スリービルボード』

2018-02-23 21:17:14 | 映画
監督、マーティン・マクドナー
主演、フランシス・マクドーマンド

 いい映画だった。マクドナー作の演劇は何度か見たことがあった。しかし私にとってはよくわからなかった。だから映画もあまり期待しないで見に行った。しかしこの映画はその意図がよくわかった。

 人間は怒りを行動のモチベーションにしている。怒りは新たなものを生み出す。しかし怒りは怒りを生み出すだけだ。差別意識の強いディクソンという警察署員が、自殺した警察署長からの手紙を受け取る。そこには「愛」の必要性が書かれていた。この映画のテーマが「怒りよりも愛を」というものであることはあきらかだ。

 単純なテーマなのではあるが、説教臭いわけではない。セリフにリアリティがあるので説得力がある。日常的な生活の中で、複雑な人間関係が絡み合いながらテーマが提示されていくのだ。陰湿な笑いや、嫌悪感、思いやり、理不尽な思い、人間の日常生活に存在するさまざまなものがしっかりと描かれているのでリアリティが生まれてくるのだ。

 なぜ演劇のマクドナー作品が私にしっくりこなかったのか。おそらく日本人は露骨に感情を表に表さないからであろう。それなのに露骨な感情をマクドナーは要求してくる。だからリアリティを感じないのだ。それが見えてきたことも今回の収穫であった。

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映画評『グレイテスト・ショーマン』

2018-02-20 23:19:17 | 映画
 マイケル・グレイシー初監督作品。
 主演 ヒュー・ジャックマン。

 19世紀に活躍したエンターテイナー、P・T・バーナムの成功を描くミュージカル映画。である。P・T・バーナムをヒュー・ジャックマンが演じた。

 子どものころ貧しかったバーナムは成功を夢見て、サーカスでショービジネスでの成功を成し遂げる。しかしそれは大衆演芸であり、地域住民や上流階級には全く評価されない。いやそれどころかさげすみの対象となっていた。
 そこでバーナムは、ヨーロッパのオペラ歌手のアメリカ公演を興行して成功する。しかしそれは自らを成功させた興行を見捨てた形になった。
 オペラ歌手の興行はスキャンダルのために破綻し、サーカスは地域住民との対立によって放火され焼け落ちる。バーナムは絶望の底に落ちる。
 しかし、そこから彼は仲間や家族の励ましにより再生する。

 単純なストーリーであり、ご都合主義と言ってもいいのだが、ミュージカルなのですんなりと入ってくるし、嫌味になることはない。楽曲はどれもわかりやすく、しかもエネルギッシュで、聞いていて心地よい。見て損はない。アメリカ映画の典型的なストーリーであり、アメリカを知るという意味でもいい。

 しかしあまりにステレオタイプのストーリーである。しかも例えば身長の伸びない大人や、ひげの生えた女性など、何らかの「障害」を持っている人がサーカスの一員となるのだが、それらのサーカス団員の心の苦しみが予定調和的に解決していくことが、逆に「障害」を持つ人に対しての理解が足りないのではないかと感じられてしまった。自分に自信がない人間が、人前にでることはそんなに観点ではないのだ。ミュージカルならなんでも許されるというものでもあるまい。

 「いい意味でも悪い意味でも、アメリカ」と思わせる映画であった。
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小平さん、おめでとう

2018-02-19 18:23:39 | スポーツ
 小平奈緒さんが平昌五輪スピードスケート女子500メートルで優勝した。すばらしい。応援していたのでとてもうれしい。おめでとうございます。

 小平さんのすごいところは、もともとの才能もあったのかもしれないが、それ以上に努力をここまで続けてきたということである。1度目のオリンピックでは団体パシュートではメダルをとったが、個人の成績はそれほどでもなかった。前回のオリンピックではそれが5位になり、そして今回金メダルである。努力の跡がしっかりと残されているのだ。

 しかもただ同じことを繰り返すだけの努力ではない。フォームを変えるチャレンジする勇気もあったとのことだ。精神的にも苦しい選択をしてきたのであろう。それを乗り越えての優勝だと思うと尊敬する。

 小平さんに「獣のような」という形容を使ったアナウンサーが叩かれているが、叩かれるような質問ではあるまい。顔つきもするどく、そしてだれよりも速く滑り切ったその動きは「獣のよう」と言ってもいいものであった。決して容姿のことを言ったわけではないのはあきらかである。だから目くじらをたてるような表現ではない。ただ、やはり当の本人は答えにくい質問ではあるかもしれない。

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