まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

地域生活文化クラス ・ 2年次学生研修

2010-12-06 18:07:13 | 幸せの倫理学
この土日、私が担当している福島大学・人間発達文化学類・文化探究専攻・地域生活文化クラスの
2年生たちを引き連れて、合宿研修に行ってまいりました。
宿泊先は岳温泉にある 「あだたらふれあいセンター」 です。
土日でも6,500円と格安で泊まれるのですが、
さらに福大生は1,500円も割り引いてもらえるので、
学生を連れて行くには手頃な宿だと思います。
露天風呂はありませんがちゃんと温泉ですし、研修室もきれいだし、
夕食もけっこう充実していますし、送迎バスで送ってもらえますし、学生たちからも好評でした。

土曜日の12時半に大学に集合して出発する予定でしたが、
土曜日はものすごい強風が吹いていて、JRが軒並み運休していて、
出発前から大パニックです。
5名が福島駅に、1名が郡山駅に足止めを食らい、復旧の目途が立ちません。
困った挙げ句、反対方向になってしまいますが、
福島駅に寄って5名を拾っていくことにしました。
郡山の1名はどうしようもなく、親御さんにクルマで現地まで送っていただきます。
なんだか最初から疲れ切ってしまいましたが、
予定よりも1時間以上遅れて、やっと全員が現地に集まることができました。

さて、本来、2年次学生研修は学生主導で計画を立てることになっているのですが、
今年は初めての試みとして、私のほうで完璧にプランを立てて実行してしまいました。
学生に任せておくと、ただ宴会をやっておしまいということになりがちだからです。
まあ、それでもいいのですが、今年の私のクラスでは、
クラス全員必修の 「基礎演習」 という授業で、
社会に出るまでに身につけておきたい大人の力の育成をテーマの1つにしていますので、
せっかく宿泊して2日間費やすのですから、
そのためのワークショップの時間に当てようと考えたのです。
実は、人間発達文化学類になって以来、1年生の合宿研修では、
プロの講師の方を頼んでワークショップをやってもらっていました。
企業で人事担当の役員を経験し、ビジネス・コーチングの世界でも名の知れた方を、
特別のコネでお招きし、特別のワークショップのプログラムを組んでもらっているのです。
今回は、初めて2年生の合宿でもお願いすることにいたしました。
というか実は 「基礎演習」 の授業でもすでに2回お呼びしています。
1回目は 「自分を大切にする」 ということでプレゼンテーションをしていただきました。
2回目は 「自分と他人はちがう」 というテーマで、ストレングス・ファインダーの結果を使って、
講義やワークショップをやっていただきました。
今回の合宿はその集大成で、
「自分も相手も大切にして、お互いの可能性を拓くコミュニケーションスキル」 について、
みっちり2日かけてワークショップをやっていただこうという趣向です。

まず第1日目は、自分の中の 「ねばならない」 にどんなものがあるかを探るところから開始です。
それをお互いに比べあって、自分と他人の 「ねばならない」 が全然違うことにも気づいてもらいます。
NLPの知見も織り交ぜながら、例えば 「食べ過ぎてはならない」 というプログラムを持っていると、
いくらそう思っていても食べ過ぎからは解放されず、むしろよけいに食べ過ぎてしまうこと、
そして、食べ過ぎてしまってから 「なんて自分はダメなんだろう」 と自分を責め立ててしまうというように、
いつも自分を追いつめる生き方をするようになってしまうということが示されました。
そこから、自分を解放し、自分の可能性を引き出すためのスキルの実習に移り、
まず、怖いとか悲しいとかの自分の感情をしっかり認めてあげた上で、
次に可能性を拓くような問いを自分に発してあげるという練習を、ケーススタディを用いて行いました。
初日後半は、相手を大切にするとはどういうことかのワークショップです。
相手を大切にするとは、相手の言うことを全面的に受け容れてしまうことではなく、
じっくりと相手の言うことを聞いて、きちんと相手のことを理解してあげることです。
理解することと同意することは違うのです。
相手が自分と異なる主張をもっていたとしても、
相手がなぜそのように考えるのかそう言い張るのか、
その背景となる相手の価値観や相手の 「ねばならない」 までさかのぼって理解してあげること、
別にその主張に同意しなくとも、ちゃんと理解してあげることが相手を大切にすることです。
そのために相手にたくさん話してもらえるようにするにはどうしたらいいか、
アイスブレークやペーシングや傾聴、承認といったコミュニケーションスキルについて、
デモンストレーションで見せてもらいながら学んでいきました。
普通の人は、自分の言いたいことを我慢して相手に合わせることが、
相手を大切にすることだと勘違いしていますので、
これだと我慢した挙げ句にぶち切れるということになり、
相手もそれではなぜ切れられてしまったのかまったくわからず、
建設的な人間関係を築くことができません。
これでは自分のことも相手のことも大切にしていないよね、
ということを実感したところで1日目のワークショップは終了しました。

2日目は、素直に自分を伝える 「アサーティブ・コミュニケーション」 の具体的な方法について、
ケーススタディで学んでいきました。
「客観的事実」 と 「自分の解釈・感想」 と 「自分の要望」 をきちんと分けて伝えること、
I メッセージと Youメッセージと We メッセージの使い分けなどを学んだ上で、
ある敵対的状況において、たんに相手とどんなふうに会話を進めたらいいかだけではなく、
具体的にどういう言葉を使って伝えるか、グループでちゃんとセリフまで考えて発表しました。
最後に相手から可能性を引き出してあげるために、
クローズド・クエスチョンとオープン・クエスチョンをどう使ったらいいかを学び、
2日間で学んだことを総動員しながら、1対1で話し合うロールプレイを行い、
2日間の学びを振り返りシートに記入して合宿研修を終えました。

今の大学でこういうことを学ぶ機会はほとんどないと思いますが、
(昨年私の 「戦争と平和の倫理学」 でやった非暴力コミュニケーションは、
 若干これに近いものかもしれませんが、実際の練習まではほとんどできませんでした)
どこかの段階で学んでおくべきことだろうと思っています。
幸せに生きていくためにはこういうことができたほうがいいし、
今すぐできないとしても、こういうことを知っているというだけでも、
人生はだいぶ変わってくるだろうと思います。
地域生活文化クラスの皆さん、学んだことをぜひ実生活に活かしてみてください。
講師の木村先生、学生相手に丁寧なワークショップをしてくださりありがとうございました。
みんなの習得具合に応じて臨機応変に課題や流れを変えていくところは、
たいへんに参考になりました (自分ではマネできないと思いますが…)。
また、3年生なのにオリターとして参加してくれた学生さんにも感謝申し上げます。
波乱含みで始まった合宿研修でしたが、最後は快晴の中、
全員元気に (つぶれてしまう人もなく) 無事終えることができよかったです。
みんなの振り返りシートの内容はまた別の機会にご報告することにいたします。