ぼくは中島千波の桜の絵が大好きなのだが、最近、偶然、東京と地方で彼の古希記念展に出くわしている。また時々行く、歌舞伎座の緞帳のひとつも千波の桜と紅葉だ。千波の父親が、今回の展覧会の中島清之(1899-1989)であることを知って、是非、行かねばと、昨日、横浜美術館に出掛けた。
生まれは京都の山科だが、16歳のときに横浜へ転居し、それ以来、横浜市民である。会社勤務しながら、絵の勉強をし、25歳で院展に初入選し、その後、美術院賞を4度、受賞し、院展同人になられたという経歴をもつ。千波さんが長野県の小布施(ぼくも一度、行ったことがあるけどステキな街)の生まれということは知っていたが、戦時中、横浜から小布施に3年ほど疎開していたのだそうだ。そのときに千波が生まれたのだ。この展覧会でも、幼年時代の千波を描いたスケッチが3枚ほど展示されている。
画風は時代と共に変化するが、それぞれ、楽しめる絵である。山村耕花や安田靫彦に師事したこともあるので、それ風の絵とか、幾何学的構図を意識したような絵とか、モチーフも、風景、人物、静物、動物、そして花と、いろいろ。表紙を飾ったのは、ちあきなおみが喝采を唄っているときの、ちあきポーズ。ほぼ、年代順の展示で、自宅も崩壊したという、関東大震災の画巻(1923)からはじまり、昭和の戦前、戦後の作品、そして、90歳までお元気だったが、最晩年の三溪園の古建築、臨春閣の襖絵(鶴図、竹図)も展示されている。
とても、楽しい展覧会であった。
若草(1978)
雪の子(1946)
方広会の夜 (1950)
花に寄る猫(1934)
喝采(1973)