気ままに

大船での気ままな生活日誌

岩佐又兵衛絵巻 堀江物語

2012-05-28 07:31:22 | Weblog
熱海、MOA美術館の岩佐又兵衛絵巻シリーズ、第3弾”堀江物語”を観てきた。これで、”山中常磐物語”、”浄瑠璃物語”そして、今回の絵巻と、又兵衛三大絵巻制覇を成し遂げた。先の平治物語原本三巻制覇につづく快挙だ(汗)。

たしかに、こんな豪華な展示はもう一生観られない。MOA美術館でさえ、30年前の開館記念に展示しだけというから、まあ、あとは50周年のときだけだろう。なにせ、三絵巻とも12巻全巻揃いの巻物を惜しげもなく、全部、拡げ、いくつもの部屋にわたって展示しているのだからすごい。それに、都心の美術館と違って、静かに、ゆっくりと観ることができる。これは、とくに絵巻物を観るにあたって、重要なこと。もともと絵巻物は個人がひっそりと部屋で拡げてみるものだから。ただ、今回は、突然、中学生の大団体が入ってきて、騒々しくなり、ムムム、今日はついてないと思ったが、絵巻の前を、ほとんど立ち止まらず、あっという間に過ぎ去ってくれた。ほっ、とした。と同時にこれでいいのかとも思った(笑)。

”堀江物語”は、ほかの二つの物語同様、古浄瑠璃の絵巻物化であり、かつ山中常盤と同様、仇討ち物のひとつである。香雪美術館蔵”堀江物語”三巻などの残欠本とは別に、後に又兵衛工房により描かれ、津山藩に伝来していた12巻、全巻揃いの作品である。

この絵巻も、全体を通して、極彩色で繊細な描写で、ちらりと観ただけでも、いいものを観たなという感じを受ける。浄瑠璃の語りのように詞書がまずあって、その一コマが描かれている。今回はとくに、その一コマ一コマが連続している場面が多く、漫画をみるような、分かりやすい筋立てであった。人々の行動の描写もていねいで、喜怒哀楽の表現も、少し、おおげさに描かれていた。たとえば、悲しい場面では、侍女たちが悲しさのあまり、およよと倒れこんだりして、身体いっぱいに表現し、まるでお隣りの国の人のような感じを受けた(笑)。顔の表情もさまざまだった。だから、ストーリーだけでなく、登場人物の動きや顔の表情も楽しむことができる。

以下に、1巻から12巻までのストーリーを美術館資料に従いまとめてみました。

第一巻
下野国塩谷郡(現在の栃木県)、三千八百余町の領主、堀江左衛門頼方は清和天皇の血をひく由緒ある家柄。嫡子、三郎は16歳で、上野(こおづけ)の原左衛門の美しい姫をめとる。可愛い男の子も授かる。しかし、頼方が病死し、領地を取り上げられ、堀江家は衰退する。

(姫を屋敷に迎える場面)


第二巻
姫の父親は、おちぶれた堀江家にいつまでいないで、この際、新たに赴任してきた独身の国司、中納言行敏の嫁になれという。姫はいやです、サブちゃんがいいと拒む。

第三巻
国司の行敏は姫にぞっこんで、なんとか嫁にと、策を練る。(三郎さえいなければと)三郎に、自分に代わって、内裏の大番に推薦し、上洛の途中で闇討ちしようと考える。三郎は訝りながらも承諾する。

第四巻
堀江三郎は姫と子供の月若と名残り惜しみ、七十騎を率いて、凛々しく出発する。しかし、武蔵と相模の堺となる上田山麓に国司側の原兄弟の伏兵が待ち構えている。

第五巻
堀江三郎軍と原軍との壮絶な戦いが始まる。強い太刀さばきで原兄弟を討つが、多勢に無勢、負け戦となる。堀江は切腹する。実家の、原の館に呼び寄せられていた姫の夢枕に堀江が現れ、姫は胸騒ぎを覚える。

第六巻
夜が明け、姫は堀江の館に戻りたいという。原は送ると見せかけ、国司の館に連行してしまう。ここは我が家じゃない、返してちょうだい、と泣く姫を国司は輿から降ろさせる。

第七巻
国司の前に、兵の死骸が運ばれ、堀江の首も届く。姫は、夫の首と対面し、およよと泣き崩れる。涙が止まらない。もう生きる意味はないと、国司が外出したときを狙って自害する。

第八巻
原の館に姫の死骸が運ばれてくる。仰天した姫の母は夫をなじり、自害してしまう。原は忘れ形見の月若を国司に差し出す。月若を川に流せ、という命を受けた郎党は、かわいそうに思い大木の洞に置く。

第九巻
月若の乳母が、月若のあとを追って死のうと川縁に来たとき、月若をみつける。抱いて歩いていると、子宝を願って参拝した熊野神社から帰る途中の奥州の岩瀬権守に出会う。これが縁で月若は養子となる。元服して岩瀬太郎家村と名乗る。

第十巻
太郎は十五歳の秋、見知らぬ修行者から実はこれこれしかだったと聞く。キッと目を吊り上げ、国司を許すわけにはいかないと仇討を決意する。父親も賛成し、三日三晩で一万騎を集め、そのうちすぐれた千騎を選りすぐり、兵として息子に差し出す。太郎は下野に上る。まず、荒れ果てた堀江家の跡をみる。そこで、三郎の家来だった安藤太と涙の対面をする。


第十一巻
太郎は安藤太の案内で国司の館を攻め、国司の一族、家来を討つ。さらに、都に上り、国司の行敏も討つ。太郎は、仇討の経緯を帝に報告する。帝は幼くして、親の仇を討ち、国を乱した国司を滅ぼした功により、太郎を坂東八か国の国司に任ずる。

第十二巻(最終巻)
太郎は奥州に下り、養父に領地八か国のうち、二か国を贈る。そして下野の堀江の館を立て直す。昔の郎党が次々と集まり、堀江は高貴の家となる(完)


岩佐又兵衛の絵巻物は、まだある。宮内庁三の丸尚蔵館所蔵の”をくり物語絵巻”、それに前述の、香雪美術館蔵”堀江物語”三巻残欠本。それらを閲覧してから、又兵衛絵巻制覇としたい。目標は高い方がいいノダ。



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