まどか先生の「ママ達のおやつ」

ママの笑顔は、我が子が幸せであるためのママ・マジック。ママが笑顔であるために、この「おやつ」が役立つことを願っています!

初めて、慣れない、は大変です。

2012年10月17日 | う゛う゛ー
 今年81歳になった私の母。今でも土日以外、午前中は会社に出勤し、午後は父の施設に立ち寄り、夕方に自宅に帰る・・・という生活を続けています
 月に1、2回は昔からの友人からお誘いを受け、馴染みのお店に夕食に行き、おしゃべりを楽しむ・・・月に一度、必ず帰省し、2泊する私との時間を楽しみにする・・・気が向くと、行きつけのブティックに立ち寄り、好きなお洋服を買う・・・それが母の生活です
 大阪の町の中心にある高層マンションに引っ越して、今年で6年。私が必ず月に1度は帰省をするという条件つきで、郊外の家から移ってもらったのですが、まさかここまで、その生活をしっかりとこなし、のびのびと楽しんでくれるとは想像はできませんでした。

 昨年の6月、長年の持病のある父は、ヘルパーさんと母と二人では、とうとう自宅では十分にお世話ができなくなり、父の意思もあり、介護付きのマンションに移りました。すべてを段取りし、実行に移した私でしたが、さすがにおしどり夫婦と言われていた二人が離れ離れの生活をする・・・ということには大きな不安がありました
 けれど、結果は「案ずるより産むが易し」。ここ1、2年、父、母お互いに密かに負担を感じ、密かに不幸せになり始めていた生活から解き放たれ、今、午後の数時間、世話をすることも、世話をされることもない「楽しい時間だけを一緒に」過ごしている両親には、再び昔のような満面の笑顔が戻りました。私も幸せになりました・・・

 その母。
毎日、電車利用で出勤はしていますが、実際にはほとんど歩くことがありません 駅にはタクシーで移動。父のマンションへも、結局は駅からタクシーです。けれど、本人は「私は現役。健康そのもの」という自負心があり、どんどんと筋力が落ちていっている自覚などはもう頭ありません。
 実際、81歳という年齢を考えれば、当然のことではありますが、しかし、母が理想としている毎日の生活を実現するためには、実年齢の平均的な体力、筋力以上のものが必要です

 そこで私は、またまた画策。自宅から歩いていける比較的高齢者の多いフィットネスクラブを見学。
ゆったりとした雰囲気や充実した施設、トレーナーやスタッフのお人柄に満足し、私はすぐに「母の入会」を決めました そうです、勝手に、です

 父が介護付きのマンションに移ったら、「絵手紙をならってみたい」「フラダンスをしてみたい」などと言い、私はせっせと帰省のたびにフィットする教室を探していたのですが、実際に父が引っ越していき、母の新しい生活が安定してくると、何と母は安心して完全に仕事復帰。
 「私には趣味はありません。私は仕事が大好き」とずっと言っていた母の言葉を思い出し、母の新生活スタイルに私は苦笑を禁じえませんでした。

 さあ、フィットネスクラブのこと、母に話さなければいけません
私はいろいろと考え・・・けれど、結局は、はっきりと話すころにしました。「今のようにほとんど歩くということがなければ、脚力が落ち、完全なO脚でのお参り歩きをするようになってしまうこと。もっと脚力が落ちれば、次第に歩くのが億劫になり、気持ちや気力だけがあっても、満足に思うよう行動ができなくなること。運動不足になると、脳も活性されないこと。」などなど。さすがに母はビビりました
 フィットネスクラブまで徒歩5分、ということもあり、母はあっさりと承諾 とにかく、一緒に見に行ってみることにしました。
 あらかじめ話を進めておいたトレーナーが待っていてくださり、どんな運動ができるか、どんなメニューを考えているか、を優しく説明し、随所随所に母の若さを「ヨイショ」してくださることも忘れず、本当に至れり尽せり。母もとても入会を喜びました

 でもね。
けっこう、その後は、いろいろと心が傷んだのですよ・・・

 初日に合わせ帰省し、私は母に同行しました。
母は、まるで幼稚園児の遠足の前日のように、私が一式揃えたスポーツウエアをリビングに広げ、明日はどれにしようか?と楽しそうに悩み・・・ やっとそれを決めると、お気に入りのバッグに詰め・・・ 本当に待ちわびているようでした(そのようには見えていました)。

 でもね、私は感じていたのです
仕事一筋で来た母が、どんな思いで初めてのフィットネス経験に挑もうとしているか・・・牛に引かれて善光寺参り、のように、娘に引かれてフィットネスに向かう母の内心は、きっと緊張でいっぱいだったと思います
 もちろん、期待もウキウキ感もあったとは思います。でも、それ以上に、「初めての経験」への不安は大きかったでしょうね・・・

 翌朝、いつもより早くに二人で朝食を済ませ、歩いて出かけました。
ここ数年は、私が帰省をすると、ほとんどのことは私が誘導し、母はそれについてくる・・・私に従う・・・ということになっていました。日常のローテーションの家事は母がしていますが、それでも、目新しいことは「私の役目」です。
 しかし、フィットクラブに関しては、事情が違います。その日だけは私が一緒ですが、次からは週に1度、母は一人で通わなくてはなりません 

 前夜、「これね、送ってきたのよ。クラブに入る時に使うカードなんだって」と自慢そうに話していた母でしたが、いざ、ドアの前に来ると、そのカードキーをどのようにスライドさせるかがわかりません・・・いえいえ、タッチするのか、スライドさせるのかもわからないわけです。もちろん、前回、行ったときには一度、教えてはもらっていたのですよ。でもね、たった1回だけ。その日は、すべて私に従っていた母が、カードキーの話を、それほど熱心に聞いていたとは思えません
 ドアの前で、母の顔はたちまちパッと赤くなりました。母が焦ったときのクセです。
 私は心を鬼にして、「いろいろとやってみたら?来週からは、お母さんが一人で来るんだもん」と話すと、母は泣きそうな表情になって、あれこれと試していました。
 私としては、「わからないやってちょうだい」と腹を立てることなく、真剣にカードとカードリーダーと格闘している母がとても健気に見えました
 横からちょっとヒントを出すと、母は子どものようにさっと表情を変えると、嬉しそうにカードをスライドさせました ドアが静かに開きました。「ああ、M様、おはようございますお待ちしておりました」と中からは大歓迎の声。母は笑顔になりました

 次はシューズロッカー。母はやっぱり緊張しているので、パパッとうまくやろうと気持ちが急けば急くほど空回りします。シューズロッカーの鍵をかけたものの、うまく鍵が抜けません
 私は自分の靴を入れ、わざと「えーっと・・・これはこうかなあ?・・・」などと大きな声で言い、母に見えるように鍵を抜きました。母は、こそっと私のほうを盗み見て・・・そして、何事もなかったように、自分の鍵を首尾よく抜きました。

 いよいよ着替え。ロッカールームは厄介なことばかりです
まず、カードキーをロッカー内にセットし、ナンバーをセットして開け閉めをするタイプ。これは、私が解説をしました。こんなこと、若い人でも慣れるまでは、何度か手順を間違えるでしょう。
 そのあとも、多少、迷路のように見える?施設内で、自分の思う場所に行くことや、自宅とは違うメーカーのお手洗いの使い方、お風呂のシャワーの出し方、カランの使い方・・・etc.etc. 覚えること、慣れないといけないことは山盛り、てんこ盛りです

 私はその夜、いつもより早くにソファで居眠りを始めた母の姿を見ながら、「お母さん、本当によくがんばったねえ お母さんって、カッコイイ 少しでも早く慣れて、自分自身で『ああ、楽しい!』と思えるようになってね」と何度も何度も心の中でつぶやきました。

 いかがですか?
この話はね、「81歳になった母と54歳の娘の話し」というだけのものではありません。これはね「4歳の娘と母親の話し」「5歳の息子と母親の話し」「6歳の子どもと両親の話し」にもなり得るのです

 誰だって、「初めての場所、初めてのこと、慣れない場所、慣れないこと」に挑戦するときには、十二分にそれに向かう意志があったとしても、実際にその場、そのときになれば、大きな緊張と不安がつきもの、です。
 その場やそのことに慣れた人(大人)にとっては、ちっとも大変なことでなかったとしても、初めての人、慣れない人にとると、それはとてつもなく大変なこと、なんですよね それは、大人でも、子どもでも、高齢者でも、すべて同じです。

 ところが、親は言います。
「うちの子は、初めての場所や、慣れないことがダメなんですよ・・・」当たり前、ですよね。

 どうしてそのとき、優しい言葉をかけてあげられないのでしょう?
 どうして、「もう、あなたったら・・・」と思うのでしょう?そう、言葉として口に出さないまでも「ああ、きっとまたうちの子たっら、泣きそうになるんだわあ、やんなっちゃう・・・」のように思い、呆れた顔、ムッとした顔で我が子を眺めるのです。
 もしそうだとしたら?その親は、「鬼」です

 初回の日から、1ヶ月半が過ぎました。
母は、毎週1回、2時間、トレーナーと一緒にトレーニングを続けています
「最近はね、駅を歩いていても、足が軽いのよ。筋肉痛になったこともないし、褒められちゃってる」と嬉しそうに話します。
 意気揚々とフィットネスクラブの玄関を入り、時々、ガチャガチャとシューズロッカーのキーを抜くときに手間取り、それでも、楽しそうにトレーニングをしている母の姿が見えるようです

 本当の意味での人を思う優しい心を持ち、適切なリードと言葉かけをすれば、人は(子ども)は、必ずそのことを楽しめるようになり、成長します
 好循環、悪循環、あなたはどちら派、でしょうね?



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