まどか先生の「ママ達のおやつ」

ママの笑顔は、我が子が幸せであるためのママ・マジック。ママが笑顔であるために、この「おやつ」が役立つことを願っています!

小さなレディー

2009年11月25日 | う゛う゛ー
 都心にある高級?ということで有名な病院でのことです
友人のお見舞いを終えた私が、1階のロビーにあるお手洗いに入っていくと、ちょうど3歳くらいに見える女の子が、トイレの個室から出てきたところでした
 ドアの前で待ちかまえていたお母さんは・・・
 「トイレットペーパー、三角に折った?」と訪ねると、女の子はにっこり笑って・・・
 「うん!折った」と答えました。

 お母さんはグレーのワンピースに黒のパンプス。女の子は白い小さな襟付きのきれいな水色のワンピースに黒のエナメル靴。胸のスモッキングが彼女の愛らしさを一層引き立てていました
 今度はお母さん・・・
 「さあ、次はハンカチでしょう?・・・ハンカチを出すのよね」と言うと、女の子は・・・
 「そうそう・・・ハンカチ、ハンカチ・・・」
と、小さな手でワンピースのポケットを探り、刺繍のついた小さなハンカチを取り出しました
 すると、お母さんが後ろから女の子の両脇を抱えてひょいと抱き上げ、洗面台の前に行くと、女の子は器用に蛇口をひねり、洗面台の横にハンカチを起き、手を洗い始めました
「しっかり洗って!・・・そうそう・・・ぎゅっと蛇口をしめて・・・はい、上手上手」そう言って女の子を下ろしました。
 女の子はハンカチを広げて手を拭き、またまた器用にハンカチをたたみ、ポケットにしまいました

 時間にすれば、3分程度、だったと思います。
私はお手洗いに入ることも忘れ、この親子の一連の行為を眺めていました。当然、それに気付いた母親のほうは、私のことを少々訝しげにチラチラと盗み見をされていたので、私は申し訳なく思い、お嬢さんに向けて言いました
 「なんてあなたはお利口ちゃんなんでしょう おばちゃまね、あんまりあなたがお利口だったから、おトイレに行くのも忘れちゃって、あなたのことを眺めてしまったわ ごめんなさいね!でも、本当にお利口さん。素敵なレディーね。ママに誉めていただかなきゃね
 そう言うと、お嬢さんはニコニコと笑顔で私を見上げ、さすがにお母様も我が子を絶賛され、嬉しそうに会釈をされました

 ちょっと前の私ならば、きっとこの光景を苦々しく眺めただろうなあ・・・と思いました。こんな幼い子どもに、まさに「考査を念頭に入れた、とってつけたような家庭教育」を施すなんて・・・と
 この出来事は、9月初旬のことでしたから、きっとあの親子はこの秋、都心の私立幼稚園の3年保育?を受験なさるご家庭だったはずです。もしかしたら、あれを1年間続け、来年の秋に、2年保育受験をなさるのかも・・・
 でも、今回ばかりは、私はその親子の様子にとても意味のある思いがしたのでした

 以前、私はこのブログにだったでしょうか、「子ども達のお出かけ着」「よそいき」について書いたことがあったでしょうか?
 もしかしたら書いたのではなく、教室のクラス内でお母様方にお話しをさせていただいたのかもしれません 
 いずれにしても、私はここ10年ほど、子ども達の「お出かけの時の装い」について、世の中の変化をとても憂いていたのでした。

 昔、そうですねえ、昭和の時代、とでも言いましょうか。あの頃は、どこかにお出かけをする・・・と言えば、一度は家に帰り、わざわざ着替えをして、その場に相応しい格好をて出かけたものです。それが祖父母の家であったとしても、友人宅であったとしても、立ち寄るのではなく、「わざわざ」という言葉がつくお出かけの場合は、必ず着替えて「よそいきの格好をした」わけですね
 とにかく、当時は「出かける」という行為が、平生の延長線上にあったわけではなく、ちょっと晴れやかな気分になるものであったり、かしこまったものだったり・・・特別のもの、でした。ですから、特別の装いにしたわけです

 でも現在では、お食事言ってもファミリーレストランやファーストフードという便利なものが登場し、それがすっかり定着をした今、そこは「簡単に行ける日常生活の中にあるもの」であり、誰もデニーズやジョナサンに行くために、わざわざ着替えるご家族はいないでしょうね。
 時には、草野球帰りのおとなも、アスレチック帰りの家族連れもいて、少々どろんこであったとしても、あまり気遣わずに立ち寄れる場所ですから。
 それに、祖父母の権威も失墜し、ひたすら甘やかしてもらえる、何でもかってもらえるジジババになった今では、敢えて着替えて、居ずまいを正して会う存在でもなくなってしまった・・・
 幼稚園の先生はお友達感覚 お稽古の先生方も子どもの機嫌と保護者の機嫌を損ねないように気兼ねをし、誉めて育てる場所
 そうなると、親子はほとんどのシチュエーションでは、家庭の中とほぼ同じ・・・ということになります。

 要するに・・・今はどこに行っても親子は緊張感なく振る舞い、装いも、言葉遣いも、すべてが「普段遣い」のまま。それで通ってしまうのですね、幸か不幸か・・・

 そんな現状を思えば、私はあの病院で見た親子の、少々とってつけたような躾?振る舞いも、悪くはないのではないか・・・そう思えたのです。
 あと10年もすれば、あのお嬢ちゃんもきっと、今どきのアニメやコメディー、お笑い番組で使われる流行語を使い、くだけ度合いの違いはあっても、どこにでもいる女子生徒になるのでしょう
 そうだとすれば、昔はうるさいママに厳しく躾られたということを、記憶のどこかに留め、たとえ錆び付いたとしても、何か特別の時には、その記憶の彼方の行為を思い出せるのではないか?

 10年前は、私のまわりにいる親子達ならば、ほぼ全員が当たり前にできたことが、今は「昔は出来る人が多かった」という古(いにしえ)の行為になってしまっていることを、私はやはり残念に思います
 言葉遣いも立ち居振る舞いも、一朝一夕に替えられることではありません。私立の小学校受験のためにと、2,3ヶ月で身につけさせようとしても、どうしてもできないこともあるものです
 昔でいうところの「読み、書き、そろばん」的なことは何とかなっても、言葉遣いや立ち居振る舞いには時間がかかるのです。

 あの病院のお嬢ちゃん・・・きっと今日も、厳しくママに教えられているのでしょう。それも、あの子の財産のように思えます

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする