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石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(64)

2023-10-13 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第3章 アラーの恵みー石油ブームの到来(1)

 

064中東の石油産業の曙(1/4)

 アラブ産油国の人たちはよく「石油は我々の神アラーの恵みである」と言う。それは豊かな富をもたらす石油を与えてくれたアラーに対する純粋な感謝の気持ちであり、同時に石油を持たない他の民族(たとえば日本のような)に対する少しばかりの優越感が発する言葉でもある。実際、世界の産油国の多くはイスラームの国である。

 

イラン、イラク、サウジアラビアは言うまでもない。アルジェリア、リビアなどの北アフリカの産油国もアラブ民族であるとともにイスラームが国教である。サハラ砂漠を越えたナイジェリアもイスラーム教徒が多数を占めている。さらに東南アジアの産油国インドネシアもイスラームの国である。世界の原油生産量の半分近くはイスラームの国々が占め、埋蔵量ベースで見ればその割合はもっと高くなる。彼らが「石油はアラーの恵み」であるというのもあながち的外れではないように思われる。

 

 ただ石油とイスラームの関係は単なる偶然にすぎない。何しろ地中に石油が生まれたのは数億年前のことであり、それに比べると人類が誕生したのはごくごく最近のことになる。だから石油とイスラームを結びつけるのはかなり無理がある。もちろん信仰心の篤いイスラームの人々(ムスリム)からすればすべてこの世はアラーの御業と言いうことになるのであろうから、アラーがムスリムたちのために太古の昔に石油を地下に作りおいてくださった、と言うことになるのであろうか。科学的無神論(智)と信仰(心)の論争は常に水掛け論である。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

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石油と中東のニュース(10月12日)

2023-10-12 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・カタールと仏TotalEnergies、LNG350万トン/年、27年間供給契約締結

(中東関連ニュース)

・イスラエルのガザ封鎖で地区唯一の発電所、燃料不足のため運転停止

・アルゼンチン、韓国など各国が自国民救援機をイスラエルに派遣

・イスラエル、野党党首含めた戦時挙国一致内閣を形成

・アラブ連盟緊急外相会合招集。戦闘の鎮静とガザ地区支援補強を協議

・上川外相、UAE外相とガザ問題を電話協議

・ガザ周辺の村落には瓦礫と死体が散乱

・パレスチナ人ジャーナリスト8人が衝突の被害

・サウジとロシアが第8回合同政府間会議開催。サウジエネルギー大臣出席

・サウジPIF、自動車産業対象の投資会社設立。まずはKAECに物流基地開設

・サウジアラムコ、中国山東省煙台石油化学に10%出資

 

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グローバルサウスに傾斜する中東北アフリカ諸国(MENAの多国間関係)(18)

2023-10-11 | 中東諸国の動向

5. エネルギー連携

 

(脱炭素勢力と最後の決戦に臨む石油カルテル!)

5-1. OPEC(石油輸出国機構)

 OPEC(石油輸出国機構、Organization of the Petroleum Exporting Countries)は現代世界で最も大きな影響力を持つ組織の一つと言って過言ではないであろう。OPECは単に経済的な力だけではなく、時には国際政治を動かす力すら持っている。

 

 OPECは1960年、イラン、イラク、クウェイト、サウジアラビア及びベネズエラの5カ国により結成された。当時国際石油市場は販売、価格などすべての面で「セブン・シスターズ」と呼ばれる欧米の巨大石油企業に独占されていた。これに対して「資源はそれを保有する国家のものである」とする国連決議に力を得て中東の産油国が立ち上がり、価格支配力の奪還を目指したことがOPECの始まりである。世界経済の高度成長の波に乗りエネルギー、特に石油が売り手市場になったこともあり、OPECは世界のエネルギーを左右する存在へと駆け上がり今に至っている。

 

 現在OPECの加盟国は13カ国であり、オーストリアのウィーンに本部を置いている。生産量が多いのは上記創設メンバー5カ国のほかUAE(アラブ首長国連邦)、ナイジェリア、アルジェリア、リビア、アンゴラなどである。

 

 議長国は毎年持ち回りで担当、12月に総会を行うほか、随時閣僚会合を開いている。後述するように最近はロシアなどOPECに加盟していない10か国を交えたOPEC+(プラス)会合がこれに取って代っている。

 

 世界の石油生産量に占めるOPECのシェアはかつて5割近くに達したこともあるが、現在は4割弱に低下している。これにより石油市場におけるOPECの存在感が弱まった。OPEC+の結成はそれを補うものとなっている。

 

 さらに同じ化石燃料の中で天然ガス(LNG)が目覚ましい成長をとげ、さらに地球温暖化問題で石油・天然ガスから原子力を含む非炭素燃料へ、さらには太陽光、風力など自然エネルギーへの転換が推奨されるに至って石油消費に対する世論が厳しく、産油国は逆風に晒されている。

 

 しかし現在のところ自然エネルギーは価格が高く供給が不安定であるという弱点を抱えており、石油の優位性は消えていない。OPECはエネルギー革命の最後の決戦に臨んでいると言えよう。

 

 OPEC加盟国のほとんどは国家財政の多くを石油収入に頼っており、カルテルによって高価格を維持することが必須である。サウジアラビア、UAEなどMENAの産油国は特にその傾向が強い。OPECは中東産油国の生命線と言える。

 

(続く)

 

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行    〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                     E-Mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(63)

2023-10-11 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第2章 戦後世界のうねり:

 

063ゲリラになるか?難民になるか? 彷徨えるパレスチナ人(4/4)

落ち延びたのはPLOという組織だけではない。ヨルダンに避難したパレスチナ人の個人々々も同様である。しかし避難先のヨルダンは貧しく、とても安住の地と言える場所ではなかった。ある者は豊かな生活を求めて更なる移住を目指す。そのころ丁度クウェイトやイラクで石油開発ブームが始まろうとしていた。彼らは出稼ぎ者として産油国に押しかけた。こうしてパレスチナ人の選択肢は二つに分かれた。PLOと行動を共にしてゲリラ戦闘員になるか、さもなくば家族を連れて異国を渡り歩くか、のいずれかであった。

 

第一次中東戦争(イスラエル独立戦争)でヨルダン川西岸のトゥルカルムからヨルダンに難を逃れた教師のシャティーラ一家と医師のアル・ヤーシン一家は今度も行動を共にして第二次中東戦争(スエズ戦争)が勃発した1956年、クウェイトに移った。豊かな石油収入で国造りを目指すクウェイトは教育と医療に力を入れ高給を餌に多数のアラブ人を招き寄せたからである。

 

パレスチナ人は二千年の昔のユダヤの民のごとくディアスポラ(離散)の民となった。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

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石油と中東のニュース(10月10日)

2023-10-10 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・ガザ地区紛争でBrent原油3ドル上昇、$87.61/バレル

・OPEC年次レポート:2045年の需要16.5%増、14兆ドルの投資必要

(中東関連ニュース)

・イスラエルガザ地区、戦闘激化。予備役30万人動員、ガザ地区侵攻か?

・カイロで11日にアラブ外相緊急会合

・トルコ、シリア領内クルド人武装拠点空爆、29名殺害

・イランとスーダン7年ぶりに国交回復

・サウジ外相、イラク首相を訪問・会談

・モロッコでIMFと世銀の年次総会開催

 

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(62)

2023-10-09 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第2章 戦後世界のうねり:

 

062ゲリラになるか?難民になるか? 彷徨えるパレスチナ人(3/4)

PLOはベイルートに移転した後もイスラエルに対するゲリラ攻撃をやめなかったが、イスラエルからはそれを上回る反撃を受けたためパレスチナ難民があふれ、レバノン南部に大きなパレスチナ難民キャンプが生まれることになる。焦ったパレスチナ過激派は自分たちの運動に同調する海外の過激派組織を呼び込み、自らは海外のユダヤ人を、そして思想に共鳴する外国組織をイスラエル国内に送り込むテロ活動を展開した。

 

その結果1972年に二つの大きな事件が発生する。5月にテルアビブ空港で日本赤軍が自動小銃を乱射して26人を殺戮した。テロリストが無差別に一般市民を襲撃したこと、および犯人の一人が手りゅう弾で自爆したことはそれまでのイスラム・テロでは考えられなかったことである。イスラームに限らずキリスト教、ユダヤ教などの一神教は自殺を認めていない。人間の命は神(またはアラー)の手にゆだねられており、自分勝手に死ぬことは許されないからである。ところが東洋から来た日本人は自らが信じる高邁な理想に殉じることを潔しとしている。自爆した犯人の頭の中には2年前の三島由紀夫自刃事件のことがあったのかもしれない。数十年後に多発する自爆テロの先駆けとも言える衝撃的な事件であった。

 

さらに8月にはオリンピック開催中のミュンヘンの選手村でイスラエル人選手9名が殺害された。襲撃グループは「黒い9月」と呼ばれるパレスチナ過激派組織であった。しかしこれによってPLOはイスラエルに追い詰められ、複雑な国内事情を抱え内戦状態にあったレバノンの国内事情も重なり、PLOは1982年、ベイルートからチュニジアに落ち延びることになる。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

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石油と中東のニュース(10月7日)

2023-10-07 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

 

(中東関連ニュース)

・収監中のイラン女性活動家がノーベル平和賞受賞

・テヘランタイムズ:ノーベル平和賞は西側の高度な政治的意図

・トルコのドローン、シリア領内で米軍から500Mにニアミス。両国外相、緊張緩和で協議

・サウジ皇太子、岸田首相と電話会談

・世銀レポート:今年のトルコ成長率を3.2%から4.2%に上方修正

 

 

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今週の各社プレスリリースから(10/1-10/7)

2023-10-07 | 今週のエネルギー関連新聞発表

10/2 ENEOS/双日

豪州における太陽光発電事業Edenvaleの開所式開催について

https://www.eneos.co.jp/newsrelease/upload_pdf/20231002_01_01_0906370.pdf

 

10/2 bp

bp secures exploration block in Eastern Mediterranean offshore Egypt

https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/bp-secures-exploration-block-in-eastern-mediterranean-offshore-egypt.html

 

10/3 INPEX

米国テキサス州ヒューストン港における大規模低炭素アンモニア事業の共同開発について

https://www.inpex.co.jp/news/2023/20231003.html

 

10/4 ENEOS

合成燃料の協業に関する覚書の締結について

https://www.eneos.co.jp/newsrelease/20231004_01_01_1040009.pdf

 

10/4 OPEC

50th Meeting of the Joint Ministerial Monitoring Committee

https://www.opec.org/opec_web/en/press_room/7223.htm

 

10/5 JOGMEC

国内洋上風力発電の案件形成の加速化に向けた日本海事協会との基本協定の締結

https://www.jogmec.go.jp/news/release/news_10_00136.html

 

10/5 出光興産

ペトロナスと出光興産が持続可能な航空燃料のサプライチェーン構築に関する共同検討を開始

https://www.idemitsu.com/jp/content/100043646.pdf

 

10/6 経済産業省

岩田経済産業副大臣がアラブ首長国連邦に出張しました

https://www.meti.go.jp/press/2023/10/20231006010/20231006010.html

 

10/6 JOGMEC

マレーシア国営石油会社ペトロナス(Petronas)との3者協力覚書(MOC)の署名~温室効果ガス削減に貢献するCO2越境輸送・貯留に関する初の試み~

https://www.jogmec.go.jp/news/release/news_10_00139.html

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(61)

2023-10-06 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第2章 戦後世界のうねり:

 

061ゲリラになるか?難民になるか? 彷徨えるパレスチナ人(2/4)

PLOの中にはファタハの穏健路線に満足しないパレスチナ解放人民戦線(PFLP)などの急進派もいた。PFLPはマルクス・レーニン主義を掲げ「テロに訴えてでもパレスチナに世界の耳目を集める」ことを目指しヨルダン国内からイスラエルに出撃した。当初はヨルダン政府自身も攻撃部隊を送り込んだが、その都度イスラエルの手痛い反撃を受けた。イスラエルに対する戦闘に勝ち目がないことを悟ったフセイン国王は米国に仲介を依頼、イスラエルとの和平と言う現実外交に舵を切り替えようとした。PLOはこれを裏切り行為ととらえ、ハシミテ王家を転覆しヨルダンに共和国を建設することを目論んだ。PLOはヨルダン国内では王家転覆、国外ではイスラエル打倒を目指し内外のテロ活動を活発化させた。

 

このころからすでにPLOとその傘下のPFLPによる過激なテロ活動はヨルダンの一般国民のみならずパレスチナ人の間にも拒否反応が生まれていた。そして1970年9月にPFLPが5機の民間旅客機を同時ハイジャックする事件を起こすに及んで、堪忍袋の緒が切れたヨルダン国王フセインは遂にPLO排除に乗り出し、ここに「黒い9月」と呼ばれるヨルダン内戦が発生する。大衆の支持を失ったPLOは内戦に敗れ本拠をベイルートに移すこととなる。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

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グローバルサウスに傾斜する中東北アフリカ諸国(MENAの多国間関係)(17)

2023-10-05 | 中東諸国の動向

4. 経済・金融連携

 

(西高東低経済の逆転を狙う中国!)

4-6. 一帯一路構想

 一帯一路構想(One Belt One Road Initiative, OBOR)は2013年に習近平主席(当時総書記)が提案した中国と中央アジア・中東・ヨーロッパ・アフリカにかけての広域経済圏でインフラストラクチャー整備、貿易促進、資金の往来を促進する計画を意味している。正式名称は「シルクロード経済ベルトと21世紀海洋シルクロード」で一帯一路はその略称である。

 

 一帯(One Belt)は中国からユーラシア大陸を経てヨーロッパにつながる陸路の「シルクロード経済ベルト」を、また一路(One Road)は中国沿岸部から東南アジア、南アジア、アラビア半島、アフリカ東岸を結ぶ海路の「21世紀海上シルクロード」を指している。

 

 一帯一路構想は厳密な意味での連合あるいは同盟ではないが、中国と協力文書に調印した国は120カ国以上に達している。MENAではイラン、トルコ、エジプトなどが調印しており、世界第2位の経済大国中国の経済協力に期待している。G7では唯一イタリアが調印しているが、米国は貿易戦争、先端技術競争などで中国に対する警戒姿勢を強めており、OBOR構想に参加していない。

 

 経済的意図を前面に打ち出した一帯一路構想は当初、海陸の中継国に好意的に受け止められた。また西ヨーロッパ諸国は中国との貿易投資促進に期待を抱いた。これにより初期段階で一帯一路構想はユーラシアからアフリカにかけて多数の国が参加したのであった。

 

 しかしインフラプロジェクトが動き出すと、融資返済が滞るいわゆる「債務の罠」問題が発生、専門家からは中国の新植民地主義であるとの批判も出ている。また貿易面でも中国の一方的な輸出増のため相手国で貿易収支の赤字が拡大するという結果を招き、互恵(win-win)を目論んでいたイタリアなどは離脱すると言われている。

 

(続く)

 

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行    〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                     E-Mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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