石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

ポスト・コロナ、ポスト化石燃料で苦闘する国際石油企業:2020年7-9月期決算速報 (11完)

2020-11-23 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本レポートは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0518OilMajor2020-3rdQtr.pdf

 

2.2019年第3四半期以降の四半期別業績の推移(続き)
(6)原油・天然ガス生産量の推移
(6-1)原油生産量
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-68.pdf 参照)
 過去1年間の四半期ごとの原油生産量の推移を見るとExxonMobilが他社を引き離して5期連続でトップを守っている。ExxonMobilの生産量は5社の中でただ1社200万B/D台を維持しており、今年第3四半期の生産量は229万B/Dであった。ExxonMobilに次ぐ二番手グループはShellとChevronであり、今期の生産量は共に170万B/Dである。両社の生産量は今年第1四半期まで増加傾向にあったがその後は連続して減少、今期の生産量は1-3月期に比べ25万B/D以上減少している。Totalも2019年第3四半期172万B/Dをピークに減少を続け今期は過去1年間で最も少ない144万B/Dにとどまっている。BPは5社の中で原油生産量が最も少なく1年前は122B/DでトップExxonMobilの6割であったが、その後は持ち直しており、前期は137万B/Dまで増えたが、今期は過去1年間で最も少ない113万B/Dにとどまっている。5社ともに過去1年間で原油生産量は減少し続けている。これはコロナ問題で需要が減退したことが大きな要因であろうが、加えて国際石油企業が石油依存からの脱却を戦略の一つとしていることも理由と考えられる。

(6-2)天然ガス生産量(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-69.pdf 参照)
 天然ガスの生産量はShellとExxonMobilの上位2社とBP、Total、Chevronの下位3社の2グループに分かれている。Shellの過去1年間の生産量は98億立方フィート(’19 3rd Qtr)→106億立方フィート(4th Qtr)→103億立方フィート(’20 1st Qtr)→90億立方フィート(2nd Qtr) →80億立方フィート(3rd Qtr)であり今年に入ってからの減少が著しい。ExxonMobilは今年4-6月期までShellとほぼ同様の軌跡をたどっており、両社の差は10億立方フィート前後で推移していたが、今期はShellが減産、ExxonMobilは増産となりわずかではあるがExxonMobilが5社のトップに躍り出ている。他の3社は5期を通じて大きな差は無いが、共に減産傾向にある。過去1年間でガス生産量は減少しており、上記原油生産と同様、コロナ禍の影響に加え国際石油企業各社は脱化石燃料に拍車がかかっているように見受けられる。

(6-3)原油・天然ガス合計生産量(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-65.pdf 参照)
 天然ガスを石油に換算した原油・天然ガスの合計生産量の推移を見ると、生産量が最も多いExxonMobilは石油換算で390万B/D(’19 3rd Qtr)→402万B/D(4th Qtr)→405万B/D(’20 1st Qtr)→364万B/D(2nd Qtr) →367万B/D(3rd Qtr)である。これに次ぐShellは356万B/D(3rd Qtr)→376万B/D(4th Qtr)→372万B/D(’20 1st Qtr)→338万B/D(2nd Qtr) →308万B/D(3rd Qtr)であり、前期まではExxonMobilよりも30万B/D前後少ない生産量で推移してきたが、今期はExxonMobilが前期横ばいであったのに対し、Shellは減産となったため両社の差は60万B/Dに拡大している。

Chevron及びTotalの石油・天然ガス合計生産量は今年1-3月期まで300万B/Dをわずかに上回る水準であったが、前期と今期は両社とも300万B/Dを割っている。最も少ないBPの生産量は257万B/D(’19 3rd Qtr)→270B/D(4th Qtr)→258万B/D(’20 1st Qtr)→253万B/D(2nd Qtr) →224万B/D(3rd Qtr)でありExxonMobilの6~7割程度である。

以上

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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石油と中東のニュース(11月22日)

2020-11-22 | 今日のニュース
(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
(石油関連ニュース)
(中東関連ニュース)
・サウジ、G-20をTV会議方式で開催。サルマン国王、コロナ対策で国際協力を呼びかけ
・レバノン大統領、汚職対策に中央銀行の監査の重要性指摘。コンサルタントは監査辞退
・米、イラクのイランからの電力輸入許可をバイデン大統領就任直前まで延長承認
・米ポンペオ国務長官、アブダビ皇太子と会談
・ポンペオ米国務長官、カタールでアフガニスタンのタリバン代表と会談
・イスラエル最大のHapoalim銀行、ドバイ国際金融センターのメンバーに
・カタールで地域初の洋上いけす養殖事業。ハタを年間2千トン生産予定



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ポスト・コロナ、ポスト化石燃料で苦闘する国際石油企業:2020年7-9月期決算速報 (10)

2020-11-22 | 海外・国内石油企業の業績
(注)本レポートは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。 http://mylibrary.maeda1.jp/0518OilMajor2020-3rdQtr.pdf

 

2.2019年第2四半期以降の四半期別業績の推移(続き)
3-1.営業キャッシュ・フロー
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-72.pdf参照)
2019年4-6月の各社の営業C/FはShellが110億ドルと最も多く、Chevronは87億ドル、BP68億ドル、Total 63億ドルであった。その後昨年末までは4社ともほぼ横ばい傾向であり、Shellは毎期100億ドル以上、その他の3社は60~80億ドルのキャッシュを生み出している。しかし今年1-3月期は明暗が分かれ、Shellの営業C/Fは150億ドル近くに達したが、Chevronは47億ドルに落ち込み、BPとTotalはそれぞれ10億ドルと13億ドルに急減した。4-6月期にはShellが急減して26億ドルにとどまりBP、Totalを下回った。Chevronは前期をさらに下回り営業キャッシュ・フローは1億ドルにとどまった。今期は4社とも増えてShellは再び100億ドルのキャッシュ・フローを生み出している。その他の3社も35~52億ドルに回復している。

2-2 投資キャッシュ・フロー
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-73.pdf参照)
 2019年4-6月の投資C/FはBPが55億ドル、Shell42億ドル、TotalとChevronは33億ドルであった。BPはその後今年1-3月までは30億ドル強で推移し、4-6月は18億ドルに減少した後今期は再び30億ドル台半ばに戻っている。Shellは今年第1四半期まで増減を繰り返し、その後は20億ドル台で推移している。Totalは昨年第3四半期に68億ドルと他社の2倍以上のキャッシュ・フローを記録したが以後は4期連続で減少、今期は19億ドルにとどまっている。Chevronの投資キャッシュ・フローは昨年第2、3四半期の30億ドル強から今年の第2、3四半期は20億ドルを下回る水準である。4社に共通しているのは今年に入り投資を抑制していると見られることである。

3-3 財務キャッシュ・フロー
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-74.pdf参照)
 3社の財務C/Fは昨年4-6月期から今年1-3月期まで大きな変化は見られなかったが、今年4-6月期にChevron以外の3社がそれまでのマイナスから一挙に大幅なプラスに転じていることが大きな特徴である。これら3社は多額の新規借入を行ったのである。

 例えばShellの財務C/Fは昨年4-6月期は▲99億ドルであり、その後多少の増減はあったものの、今年1-3月期は▲78億ドルであった。しかし4-6月期は一挙に57億ドルのプラスに転じ前期との差は135億ドルに達している。BPもShellと同様昨年1―3月期から今年1-3月期までは▲20~40億ドルの水準であったが、4-6月期は3社中最も多いプラス147億ドルであり前期との差は170億ドル弱である。しかし今年4-6月期はBP▲56億ドル、Total▲21億ドルなど昨年の水準に戻る動きが見られる。

3-3 キャッシュ・フロー期末残高の推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-75.pdf参照)
 各四半期の営業C/F、投資C/F及び財務C/Fを差引した期末残高の推移を見ると、昨年6月末の残高が最も多かったのはTotalの267億ドルで、BP及びShellはそれぞれ207億ドル、185億ドル、最も少ないChevronは96億ドルであった。同年9月末はほぼ横ばいであったが、その後Shellは一貫して増加しており、今年9月末の残高は357億ドルに達している。BP及びTotalも過去一年間で残高は増加しており今年9月末はShellに次いで310億ドル前後の残高である。このようななかでChevronのみは残高が漸減傾向にあり、前年9月末の129億ドルが今年9月末には68億ドルとほぼ半減、他社の4分の1から3分の1程度にとどまっている。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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今週の各社プレスリリースから(11/15-11/21)

2020-11-21 | 今週のエネルギー関連新聞発表
11/16 Total
TOTAL AND CMA CGM COMPLETE WORLD’S LARGEST LIQUEFIED NATURAL GAS BUNKERING OPERATION AT PORT OF ROTTERDAM
https://www.total.com/media/news/communiques-presse/total-and-cma-cgm-complete-world-s-largest-lng-bunkering-operation

11/17 OPEC
JMMC reaffirms commitment to full conformity
https://www.opec.org/opec_web/en/press_room/6236.htm

11/18 経済産業省
令和元年度(2019年度)エネルギー需給実績を取りまとめました(速報)
https://www.meti.go.jp/press/2020/11/20201118003/20201118003.html

11/20 石油連盟
杉森 石油連盟会長定例記者会見配布資料
https://www.paj.gr.jp/from_chairman/data/2020/index.html#id1904
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石油と中東のニュース(11月20日)

2020-11-20 | 今日のニュース
(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
(石油関連ニュース)
・OPEC+第24回閣僚級会合開催、12月総会で現行協調減産継続決定か。  *
・サウジ石油相:トンネルの先にかすかに明かりが見える

*OPEC各国、米露の2018.1月以降の原油生産量推移グラフ参照。
http://menadabase.maeda1.jp/2-D-Energy.html

(中東関連ニュース)
・ヨルダン、UAE、バハレーン3カ国トップがアブダビで会談

・トルコ、通貨防衛のため公定歩合を10.25%から15%に引き上げ
・米国務長官、イスラエル西岸入植地とシリアゴラン高原を訪問。パレスチナに反感広がる
・カタール国連大使:カタール対サウジ等GCC3か国の対立はすぐには解消しない。  **
・オマーン、建国50周年祝う
・UAE原発、出力80%に達する
・サウジPIF、ACWA Powerの出資率を33.6%から50%に引き上げ
・サウジPIF、米国の投資額30億ドル減少。バークシャー・ハサウェイ株売却
・カタール:2022年のワールドカップまで生き残りを賭けるホテル業界
・世界都市物価指数ランク:最も高いチューリッヒ、ドバイ世界66位、大阪6位

**参考レポート:
カタール GCC 離脱(Qatarexit)の可能性も:カタールとサウジ国交断絶」(2017年7月)
サウジ・カタール・UAE 間の磁場に微妙な変化」(2019年12月)



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ポスト・コロナ、ポスト化石燃料で苦闘する国際石油企業:2020年7-9月期決算速報 (9)

2020-11-20 | 海外・国内石油企業の業績
(注)本レポートは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0518OilMajor2020-3rdQtr.pdf

2.2019年第3四半期以降の四半期別業績の推移(続き)
(4)部門別利益の推移
(4-1)上流部門
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-66.pdf 参照)
 前年の2019年第3四半期の上流部門の利益はChevronが27億ドルで最も多く、次いでBP及びExxonMobilが21億ドル強、TotalとShellが17億ドル前後で並んでいた。第4四半期は大きく変動し、Chevronが67億ドルという巨額の赤字を計上し一気に最下位に転落した一方、ExxonMobilの利益は61億ドルに急伸し5社の中で上流部門の利益トップに立った。2020年第1四半期はChevronの利益が急回復してトップに返り咲き、ExxonMobilは利益が一桁台の5億ドルに減少し、BPあるいはTotalを下回った。前期は5社すべてがマイナスとなり、中でもBPは▲85億ドルの大幅な赤字を計上、Shell及びChevronも▲60億ドル台のマイナスとなった。今期は各社とも収益が改善し、BP、Total、Chevron3社は黒字に転換、ShellとExxonMobilは赤字であったが赤字幅は少なくなっている。

(4-2)下流部門(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-67.pdf 参照)
 各社の下流部門は全般的に見れば上流部門に比べ利幅は小さいながら堅実な決算状況であり、特に昨年第3四半期及び第4四半期は全社が利益を計上している。但し1年間を通じては業績は下落傾向にあり、今年第1四半期はExxonMobilが赤字に陥り、第2、第3四半期も5社中の2社が赤字に転落している。

(5)設備投資の推移 (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-64.pdf 参照)
 5社の四半期ベースの設備投資額はExxonMobilが毎期最も多くの投資を行っている。同社の各期の投資額は77億ドル(’19 3rd Qtr)→85億ドル(’19 4th Qtr)→71億ドル(’20 1st Qtr) →53億ドル(2nd Qtr)→41億ドル(’20 3rd Qtr)であった。

同社に次ぐ投資を行っているのはShellであり、その金額は60億ドル(’19 3rd Qtr)→67億ドル(’19 4th Qtr)→43億ドル(’20 1st Qtr) →34億ドル(2nd Qtr)→37億ドル(’20 3rd Qtr)と推移している。Chevronの投資額はShellとほぼ同じ水準を維持している。Totalは昨年第3四半期こそExxonMobilに次ぐ67億ドルの投資を行っているが、その他の四半期はBPと並ぶ30億ドル前後で推移し今期は5社で最も少ない19億ドルにとどまっている。

(続く)

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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石油と中東のニュース(11月17日)

2020-11-17 | 今日のニュース
(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
(石油関連ニュース)
・OPEC+で現行削減枠770万B/Dの来年1月以降3カ月延長に合意。イラク、リビアは異論。  *
・OPEC+の減産継続で原油価格急騰:Brent $45近くに

OPEC各国、米露の生産量推移(2018年1月以降)

(中東関連ニュース)
・トランプ大統領、イラクとアフガニスタンの兵力を各2,500人に削減
・シリアのMoallem外相死去
・UAE、医師、エレクトロニクス技術者などに10年の長期居住ビザ発行
・世界のイスラム経済規模2.4兆ドルに:2020/21レポート公表。  **

**追って本ブログで概要をレポートします。2019/2020レポートは下記参照。
http://mylibrary.maeda1.jp/0489GlobalIslamicEconomy2019-20.pdf
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ポスト・コロナ、ポスト化石燃料で苦闘する国際石油企業:2020年7-9月期決算速報 (8)

2020-11-17 | 今日のニュース
(注)本レポートは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0518OilMajor2020-3rdQtr.pdf

2.2019年第3四半期以降の四半期別業績の推移(続き)
(2)利益の推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-62.pdf 参照)
 過去1年間の四半期ごとの利益水準は増減幅が小さいExxonMobilを除きその他の各社は大きく変動している。前期(4-6月期は5社すべてがマイナス決算になり、ExxonMobil(▲11億ドル)以外の4社はTotal、Chevronが80億ドル台の赤字を計上、ShellとBPは▲160~180億ドルの巨額の欠損を計上している。今期は各社とも大幅な赤字を免れShell及びTotalは黒字に転換したが黒字額は少ない。またその他の3社も赤字幅は小さく、5社は損益の境界線を挟んでしのぎを削っている状況である。

過去一年間の推移を見ると、昨年第3四半期の利益はShellの59億ドルを筆頭に、ExxonMobil 32億ドル、Total 28億ドル、Chevron 26億ドルで、BPのみが▲7億ドルの赤字であった。第4四半期にはExxonMobilがShellに替わってトップの57億ドルの利益を計上、Chevronは▲66億ドルの大幅な損失を出している。さらに今年第1四半期にはChevronが前期のマイナスから一転して36億ドルの利益を計上、TotalとShellは収支トントンであり、BPとExxonMobilはマイナス決算に転落した。そして先に述べた通り前期(4-6月期)は5社すべてが赤字であり、ExxonMobilは▲11億ドルで比較的傷は浅かったが、ChevronとTotalは80億ドル強の欠損となり、BPとShellはそれぞれ▲168億ドル、▲181億ドルの巨額の赤字を強いられている。そして今期(7-9月期)は各社の損益はほとんど差がない状況である。

(3)売上高利益率の推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-63.pdf 参照)
 1年前の昨年第3四半期の五社の利益率はChevronが7.1%と最も高く、次いでShell 6.6%、Total 5.8%、ExxonMobil 4.9%と続き、BPは5社の中で唯一▲1.1%の損失率であった。

各社のその後の利益率の推移を見るとShellは6.6%(3rd Qtr)→1.1%(4th Qtr)→0.0%(’20 1st Qtr)→▲55.8%(2nd Qtr) →1.1%(3rd Qtr)と前期に大きく落ち込んでいる。TotalもShellと同様の傾向を示している(5.8%→5.3%→0.1%→▲32.5% →0.6%)。

Chevronは7.1%(3rd Qtr)→▲18.2%(4th Qtr)→11.4%(’20 1st Qtr)→▲51.9%(2nd Qtr)→▲0.8%(3rd Qtr)と激しいアップダウンを繰り返しており、BPは▲1.1%(3rd Qtr)→0.0%(4th Qtr)→▲7.3%(’20 1st Qtr)→▲53.2%(2nd Qtr) →▲1.0%(3rd Qtr)と低空飛行を続けている。ExxonMobilの利益率は4.9%(3rd Qtr)→8.5%(4th Qtr)→▲1.1%(’20 1st Qtr)→▲3.3%(2nd Qtr) →▲1.5%(3rd Qtr)であり、今年第一四半期から3期連続でマイナスであるが、他社に比べ振幅の幅が小さいのが特色である。

(続く)

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

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見果てぬ平和 - 中東の戦後70年(51)

2020-11-16 | その他
(英語版)
(アラビア語版)

第6章:現代イスラームテロの系譜

荒葉 一也
E-mail: areha_kazuya@jcom.home.ne.jp

8.短かった春の宴
「アラブの春」を欧米先進国(特にメディア、インテリ層)は中東・北アフリカ諸国における独裁者の圧政に対する住民の抵抗運動、政治の民主化運動と定義づけた。「春」という言葉が持つ肯定的で開放的なニュアンスを政治の場面で使ったのは、冷戦下のチェコの民主化運動「プラハの春」が多分初めてであろう。それはソビエト共産主義の圧政に対する抵抗運動を象徴する言葉となり、西欧のメディアはこの言葉に自己陶酔した。1968年の「プラハの春」はソ連の介入によりあえなく踏みにじられたが、21年後には同じチェコで「ビロード革命」が発生、翌年には東西ドイツ統一が実現して、西欧諸国は自分たちの信奉する民主主義が絶対的に正しい思想(イデオロギー)であり、「プラハの春」はその先駆けであったと確信したのである。

プラハの春のひそみに倣い西欧諸国は「アラブの春」も必ず成功すると信じて疑わなかった。しかし「アラブの春」がそれ以前よりさらに劣悪な混乱と停滞を各国にもたらしたことは否定しようがない。大きな変革の直後には更なる変革を求める勢力と古き良き時代の復活を求める両極端の勢力が激突し、混乱が発生するのは歴史の習いである。チェコの民主化運動が成就するのに20年以上かかったことを考えれば、「アラブの春」の歴史的評価を下すのは早すぎるかもしれない。今から20年後のアラブ諸国はひょっとして西欧型の民主主義国家に変貌しているかもしれない。それはまさに「インシャッラー(神のみぞ知る)」である。

しかし「アラブの春」を現状なりに評価することも意味のないことではなかろう。筆者の持論である中東の三つのアイデンティティ、即ち「血(民族)」、「心(信仰)」及び「智(イデオロギー)」をベースに「アラブの春」を経験した国、経験しなかった国を含め、アラブ圏各国について眺めてみるといろいろなことが見えて来る。

エジプトの場合、チュニジアで「ジャスミン革命」が成就したとほぼ同時の2011年1月、カイロのタハリール(革命)広場で学生を中心とするデモが発生した。SNSでデモ参加を呼びかける若者たちの声に応じてデモは規模を拡大しタハリール広場を埋め尽くすようになった。彼らは旗を振りムバラク大統領の退陣を求めるシュプレヒコール「ファキーア(もう沢山だ)!」と叫んだ。ムバラク大統領の出身母体である軍の治安部隊は最初のうち動かず、現場の警察官もデモ隊にむしろ友好的な雰囲気ですらあった。実のところ彼らも大統領に「ファキーア」だったのである。

世論に抗しきれなくなったムバラクは2月に大統領を辞任し、その後不正な財産蓄積の容疑で逮捕され刑務所に収監された。その間もデモは続き国家機能がマヒしたため、平穏な生活に戻ることを求める一般市民の声も無視できず治安部隊はデモ隊の解散を求めた。この頃の若者のデモ参加者たちはムバラク退陣を勝ち取った成果でユーフォリア(熱狂的陶酔)状態にあったが、次に何を成すべきかについては明確なビジョンが無かったり或いは意見が分かれていた。

このような一般市民と学生の意識のずれの隙に割って入り存在感を示したのがムスリム同胞団であった。同胞団はムスリム(イスラーム教徒)の互助組織として市民生活にすでに深く根を張っていたが、自由な総選挙の実施が決定されたことを受けて政治組織「自由公正党」を立ち上げ政権奪取を目指した。これに対抗して学生や知識人たちはリベラル政党の樹立を目指した。

しかしリベラル運動の理論家はムバラク政権時代は西欧に亡命し、そこでの自由で安全な生活に慣れ切っていた。彼らは頭でっかちのインテリであり、エジプト国内で圧政に苦しむ一般市民とは意識のずれが大きく団結した組織をつくれなかった。SNSの威力を過信した学生たちもまた大規模なデモ動員こそ可能だったものの結局国民全体を動かす力にはなりえなかった。学生たちは組織力と実行力のあるムスリム同胞団が主導権を握るのを見て、「革命を乗っ取られた」と嘆いた。チュニジア青年の焼身自殺をSNSで広め「アラブの春」の運動をリードしてきた若者たちであったが、欧米では当たり前の民主主義という「智」のイデオロギーがイスラーム社会には根付いていなかったのが原因であろう。中東アラブは今も部族(血)とイスラーム(心)が支配する世界である。

エジプト史上初めてと言われた公正な選挙で圧倒的支持を得たムスリム同胞団の自由公正党であったが、ムルシ大統領の時代はわずか1年余りしか続かなかった。政治経験の殆どないムルシは経済運営で失政を重ね、さらに同胞団の身内を重用する縁故政治で国民の心はムスリム同胞団からすっかり離反した。再び若者のデモが続発し騒然となった。大衆はわずか一年前に自らが選んだ大統領を引きずり下ろし、あろうことか軍政への回帰を選択したのである。軍最高司令官のシーシはクーデタを敢行、ムルシを解任した。ここにエジプトは強権的な軍政に復帰、エジプトの「アラブの春」は2年で終わった。国民はシーシを熱烈に歓迎し、欧米民主主義国家を含めた国際社会もアラブの盟主エジプトの政治と経済が安定することを歓迎したのである。

エジプト以外の中東各国の「アラブの春」はさらに短かく、むしろその後混乱と無秩序のカオスに陥った例の方が多いくらいである。リビアではカダフィが倒れた後、大量の武器が闇市場に流れ、国内の部族同士の内戦に発展した。またイエメンではサウジアラビアの仲介でサーレハ大統領が退場し、ハーディー暫定大統領のもとに新政府が発足したものの、部族社会のイエメンではフーシ派勢力が勢いを増し、サーレハ元大統領も加わって首都サナアを占拠した。ハーディー政権はアデンに逃れ、サウジアラビアなどのアラブ連合軍の空爆作戦で何とか命脈を保っている状態となり、国際社会の平和の基準からはリビアと共に失敗国家の烙印を押されている。

「アラブの春」が失敗国家に終わった例はシリアがその最たるものであろう。同国ではアサド政権、IS(イスラム国)勢力、スンニ派反政府勢力等が四分五裂し、そこに国際社会の勢力争いも絡みまさにくんずほぐれつの覇権争いを繰り広げた。国際的な協力によりISはほぼ壊滅したが、欧米及びアラブ諸国が和平問題でもたついている間に、ロシアの支援を受けたアサド政権が実権を握った。「アラブの春」の担い手として期待されたシリアの民主勢力は実力不足を露呈し、完全に埋没したのであった。

「アラブの春」とは一体何だったのかという議論が絶えない。否、むしろ「春」などと言う甘味な言葉が誤解を招いたといって良いのかもしれない。欧米諸国は「春」という言葉に自分たちが信じるイデオロギー「民主主義」を重ねた。彼らは民主主義こそ現代社会の唯一絶対に正しいものだと主張する。仮にそうだとすると彼ら欧米諸国は絶対的(と自分たちが信じる)価値を押し付け、世界各国が有する多様な価値を否定していることにならないだろうか。

ともかく今言えることは「アラブの春」は短い宴の春だった、ということである。

(続く)
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ポスト・コロナ、ポスト化石燃料で苦闘する国際石油企業:2020年7-9月期決算速報 (7)

2020-11-16 | 海外・国内石油企業の業績
(注)本レポートは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0518OilMajor2020-3rdQtr.pdf

2.2019年第3四半期以降の四半期別業績の推移
五社の売上高、利益(全体、上流部門および下流部門)、設備投資、キャッシュ・フロー、原油・天然ガス生産量に関する2019年第3四半期以降今期までの四半期ごとの業績推移は以下の通りである。

(1) 売上高の推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-61.pdf参照)
 2019年第32-D-4-61.pdf四半期から2020年第3四半期に至る四半期ベースの売上高の推移を見ると各社とも昨年第4四半期以降今年第2四半期にかけて売上高が減少、特に今年第2四半期(4-6月)は急激に落ち込んだ。今期(7-9月期)は売り上げが回復したが、まだー3月期を下回る状況である。

2019年第3四半期の売上が最も大きかったのはShellの895億ドルであり、Shellに次ぐBPの売上高は683億ドルで約200億ドルの差があった。第3位以下はExxonMobil(650億ドル)、Total(486億ドル)、Chevron(361億ドル)であり、5社の順位はその後今年第1四半期まで変化がなかった。

 しかしトップのShellは昨年第4四半期以降急激に売り上げが減少、今年第1四半期はShellとBPの売上高はそれぞれ610億ドル、597億ドルとなり差がなくなっている。さらに第2四半期には5社揃って30~50%の減収となり、ExxonMobilが売上高326億ドルでShellの325億ドルをわずかに上回り、BP(317億ドル)を含め3社が拮抗した。これはコロナ禍による需要減に加え原油価格が半値まで暴落したことが大きな原因である。

 7-9月期は中国で景気回復の兆しが見られ、また原油価格もOPECとロシア、いわゆるOPEC+(プラス)が協調減産体制を強化したことにより価格も上向いた。この結果各社の今期(7-9月期)売上高は前期を4割前後上回っている。但しこれでも前年同期に比べると3分の2程度の水準にとどまっている。
因みに過去1年間のBrent価格の四半期平均価格をShellの決算付属資料で見ると、62ドル/バレル(’19 3rd Qtr)→63ドル/バレル(’19 4th Qtr)→50ドル/バレル(’20 1st Qtr)→30ドル/バレル(’20 2nd Qtr)→43ドル/バレル(’20 3rd Qtr)と推移しており、5社共に価格と売上高が極めて密接な相関関係にあることがわかる。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

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