中国海洋石油公司(CNOOC)がナイジェリアのAkpo油田の45%の権益を23億ドルで買収した。Akpo油田は2000年に発見され原油・ガスの可採埋蔵量は20億バレルとされている。しかし同油田はナイジェリア沖合い200KM、水深1,100-1,700メートルの深海油田であり、CNOOCは買収額23億ドルのほかに開発費用としてさらに22.5億ドルを負担すると表明している。仏のTotal社がオペレーターとなって2008年の生産開始を目指しており、ピーク時の生産量は22.5万B/Dを見込んでいる。(ロイター電)
経済成長が著しい中国は石油の輸入が急増しており、海外での安定したエネルギー供給源を確保するためCNOOCと中国国営石油(CNPC)の両社は世界中で石油利権を漁っている。CNOOCは昨年米国の石油企業Unocalの買収を計画したが米議会の反対により挫折した。一方ライバルの中国国営石油(CNPC)は、昨年PetroKazakhstan(カザフスタン)を買収している。石油・天然ガスの鉱区の買収と開発には巨額の費用とリスクが伴い、また海外での開発事業には政治的なリスクも少なくない。まして今回のような汚職が蔓延し、また民族紛争(ビアフラの悲劇など)を抱えたナイジェリアにおいて、しかも大深海の油田を開発するリスクはかなり大きなはずである。Akpo油田は当初インドも興味を示したが、余りにリスクが高いとして断念した経緯がある。しかしCNOOCは、オペレーターが油田開発の経験豊かなTotal社でありリスクは少ないと表明している。さらに石油1バレルに対する投資コストはAkpo油田が4.6ドルに対し、PetroKazakhstanの場合は7.3ドルであり、Akpo油田は非常に有利な案件である、と説明している。そこにはCNPCに対する剥き出しの対抗意識が垣間見られる。
Akpo油田買収にはもう一つの暗部がありそうだ。それはCNOOCが利権を買収したSouth Atlantic Petroleumと言う企業である。CNOOCは相手企業の素性について明らかにしないが、同社の実権はナイジェリアのDanjuma国防相が握っている、と言われている。油田権益の買収には利権がつきもので有力政治家がからむことは周知の事実である。23億ドルのかなりの部分(或いは殆ど)がSouth Atlanticを通じてDanjuma国防相に流れると見て間違いないであろう。
余談ではあるがオペレーターとなるTotal社もかなりダーティーな裏の顔を持った多国籍企業であり、仏の国営石油会社として政権のエネルギー戦略の一翼を担い、英米に対抗して世界で暗躍している。イラクの旧フセイン政権時代に同国の石油鉱区取得に積極的に動いており、フセイン政権崩壊後も中東での失地回復を虎視眈々と狙っている。中東の情勢不安で西アフリカの石油・天然ガスの開発が脚光を浴びているが、英国が旧宗主国のナイジェリアでも仏Total社は1995年と言う最後発組でありながら足場を築いている。但し後発組であるため利権鉱区も今回のようなリスクの高い大深海となる訳である。
仏は植民地時代からアフリカに強い影響力を持っており、最近ではニジェールのウラン、ギニア湾の石油・天然ガスなどの天然資源に固執している。アフリカ大陸に暗躍するフランス人は「フランサフリック」と呼ばれ、アフリカを食いものにする悪徳外人の代名詞とすら言われる。Total社には仏諜報機関の元幹部も天下りしていると言われ、同社が諜報機関の一部との指摘もある。(フランソワ・ヴェルシャヴ著「フランサフリック」)
今回のCNOOCのナイジェリア油田買収にはこのようにリスクと胡散臭さが付きまとっている。日本の政府或いは石油開発企業にとってはこのようなリスクと胡散臭さが付きまとう案件にはとても手が出せないし、また手を出すべきではないのだろう。
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