(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0558ImfWeoApr2022.pdf
IMF(国際通貨基金)が「世界経済見通し(World Economic Outlook)」の最新版(以下WEO2022April)を発表した。 このレポートにはEU、ASEANなどの経済圏及び世界196カ国の1986年から2027年までのGDP成長率、GDP総額、一人当たりGDPなど主要経済指標をまとめたDatabaseが付されている。同様のレポートは毎年4月と10月の年2回発表されており、中間の1月と7月にはWorld Economic Outlook Updateと称される簡略版が公表され、主要経済圏及び米、独、日、中、インド、サウジアラビアなど主要国について前後3年間のGDP成長率が開示されている。
本稿では今回のWEO2022Aprilに示されたGDP成長率を取り上げ、今年(2022年)の全世界、主要経済圏、主要国の成長率を比較し、さらに昨年(2021年)、今年、来年(2023年)の前後3か年の成長率の推移を概観する。また前回1月の経済見通し(以下WEO2022Jan)と比較、GDP成長率がどのように見直されたかを検討する。 また2021年7月(以下WEO2021July)及び10月(以下WEO2021Oct)のデータを参照し、これら4回のWEOを通じて2022年のGDP成長率がどのように見直されてきたかを精査する。
*WEO2022AprilのURL:
https://www.imf.org/en/Publications/WEO/Issues/2022/04/19/world-economic-outlook-april-2022
(同日本語版)
https://www.imf.org/ja/Publications/WEO/Issues/2022/04/19/world-economic-outlook-april-2022
(世界の成長率3.6%、ほぼ全ての国で1月見通しを下方修正!)
1.2022年のGDP成長率(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-08.pdf 参照)
今回4月見通しでは今年2022年の世界の成長率は3.6%とされており、前回1月の4.4%から1%弱下方修正されている。後述するように1月の成長率も10月の4.9%を下方修正しており、半年間で大幅に見直されている。1月の見直しはコロナ禍の終息がずれ込んだためであるが、今回の下方修正は2月に始まったロシアのウクライナ侵攻によるものと言えよう。
主要経済圏或いは多くの国のGDPはプラス成長であるが、IMFはコロナ禍と対ロシア経済制裁によるエネルギー価格の上昇が世界経済に及ぼす影響が極めて深刻なものと受け止めており、1月見通しよりもさらに下方修正されている。
経済圏で見るとEU圏の今年の成長率は2.9%であり、またASEAN5カ国は5.3%である。今年1月のそれはEU圏3.9%、ASEAN5.6%であり、いずれも下方修正されており、EU圏の落ち込み幅はASEANを上回っている。EU圏は対ロシア経済制裁の影響が大きいためと考えられる。
国別では米国3.7%、ドイツ2.1%、日本2.4%、英国3.7%、中国4.4%、インド8.2%、ロシア▲8.5%である。中国は2010年代前半に二桁の高い成長率を続けてきたが、今年は5%未満の成長率にとどまっている。またEU圏でこれまで堅調であったドイツの今年の成長率はEUの平均を下回っている。同国のエネルギーがロシアに大きく依存していることが大きな影を落としている。
一方インドは8.2%の高い成長率が見込まれ、またエネルギー価格の高騰を受けてサウジアラビアも7.6%の高い成長率が見込まれている。これに対してロシアはサウジアラビアに並ぶ石油・天然ガスの生産国であるにもかかわらず▲8.5%のマイナス成長とされている。ウクライナ紛争遂行による経済の悪化及び欧米諸国による経済制裁が大きく響くものと考えられる。
(続く)
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