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欧米・イスラム諸国の本音と本性
自国の偉大さを信じ、親子兄弟が戦場で戦っている現状で、大多数のイスラエル国民はテロリスト・ハマスのせん滅が戦争終結の必須条件であると確信している。戦時体制下、しかも勝利が確実であると自他ともに認めるなかでは無条件即時停戦など問題外であろう。平和を標榜するだけのひ弱な知識人は排除され投獄される。戦争とはそういうものである。
それではガザ戦後処理の利害関係者(ステークホルダー)である欧米或いは周辺イスラム諸国の対応はどうであろうか。問題は本音と建前の使い分けである。
ヨーロッパ各国は、ガザ紛争がイランを含む中東全域に拡大し、それを導火線にヨーロッパでイスラムテロが頻発することを恐れている。しかし強力な仲介者がいない中でただ人道的停戦を求めるだけではナンセンスである。それが戦争の現実というものであろう。一方、平和の掛け声の陰で米国、フランス、ドイツなど先進軍事大国は大量の兵器を輸出し、防衛産業は我が世の春を謳歌している。彼らの本音と建前のギャップは小さくない。
周辺イスラム諸国の本音と建前はもっと単純である。彼らはアラブ・イスラム国家としてのパレスチナの独立を支持し、無辜の女性や子供を大量殺りくする(ジェノサイド)イスラエルを非難する。そして人道的な支援は惜しまない。
しかしパレスチナが政治的に独立し、自分達と対等になることを望んでいるとは思えない。特にサウジアラビア、UAEなど湾岸の専制君主国家にとっては、民主化されたパレスチナとシーア派イランの挟み撃ちにあう可能性が高い。パレスチナが形式的な独立を保ちながら、イスラエル支配のもとで周辺国の食料や医療支援に頼って細々と生きていく。それが周辺アラブ諸国の本音であろう。無気力と腐敗が広まっている現在のヨルダン川西岸パレスチナ自治政府の姿と重なる。
各国は国連安保理の呼びかけに応じないイスラエルに経済制裁を課するでもなく、ただ2国家共存論を唱えるだけである。さらにイスラエルの非人道性を声高に叫びながら、その一方安保理で拒否権を発動してイスラエルを擁護する米国の姿勢(二枚舌外交)を前に国連は機能不全に陥っている。そしてロシアと中国はイスラエルと欧米を非難し、ハマスの過激な行動に自制を促すものの自らは傍観者の立場を変えない。結局、国際政治の舞台でこの2か国が漁夫の利を得ている感がある。
(続く)
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荒葉一也
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