石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

OPEC50年の歴史をふりかえる(1)

2010-04-13 | 今週のエネルギー関連新聞発表

(注)本シリーズ1~9回は「MY LIBRARY(前田高行論稿集)」に一括掲載されています。

1.穏やかな50周年を迎えたOPEC

 OPEC(石油輸出国機構)が今年で創設50周年を迎えた。このところ原油価格はバレル当たり80ドル台(NYMEXの基準価格)を維持している。一昨年秋のリーマンショック以降世界景気の本格的な回復は程遠く、ギリシャ、ドバイなどの金融危機に対する警戒感は根強い。しかし中国、インドなどいわゆるBRICs諸国が牽引役となり景気に底打ち感が出て当面の石油需給はバランスし、今年後半には需要が上向くとの予測が支配的である。

  このため先月のOPEC総会は突っ込んだ議論もないまま現行の生産枠を維持することで合意した。一昨年12月に価格下落を避けるため、同年9月の実生産量を420万B/D削減し、目標生産量を2,484万B/Dとすることを決定して以来、1年4カ月以上もその状態が続いている。だからと言って加盟各国は割り当てられた生産削減量を順守している訳ではなく、最近では削減幅は50%にとどまっていると言われる。それでも原油価格が値崩れする気配は見られない。

  加盟国の全てが生産枠を守らず増産に励んでいるにもかかわらず原油価格が値崩れしない市況。OPEC加盟各国がこの状況に満足していることは言うまでも無い。満足しているのはウィーンに本部を構えるOPEC事務局も同じである。3月総会の開会挨拶で議長(エクアドル石油相)は、50周年を機にOPEC本部が「ドナウ川を渡りウィーン中心部の新しいビルに移転した」と紹介した。今のOPECは至福の時かもしれない。

  しかしOPECの歴史でこれほど内憂外患が少ない穏やかな時期は実は珍しいのである。OPECは1960年の創立以来、常に戦いを強いられてきた。その相手は当初はエクソン・モービル、シェルなどの国際石油会社相手の収益改善と国有化の戦いであり、次には米国などの先進消費国との需給安定をめぐる戦いであった。また80年代のOPEC全盛時代の後に訪れた90年代の石油需要の低迷は市場との戦いであり、さらには限られたパイを巡る穏健派と強硬派の対立と言うOPEC内部の戦いでもあった。OPECの半世紀は激動の歴史だったのである。

  本稿ではそのようなOPECの半世紀をたどるとともに、現在のOPECが抱える問題点と今後の方向を探ってみたい。

 (続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

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