(注)本シリーズを「マイライブラリー(前田高行論稿集)」に一括掲載しました。
BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2010」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
4. 世界の石油消費量(下)
(4) 四大石油消費国(米、中、日、印)の消費量の推移
2009年の四大石油消費国は米国、中国、日本及びインドである。これら4カ国の1965年以降の消費量の推移を示したのが上図であるが(拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-96dOilConsumByBigFour.gif参照)、各国の特徴が良くわかる。
世界最大の石油消費国である米国は1970年まで石油の消費が大きく伸びた後、第一次オイルショック(1973年)以降緩やかなカーブに転じ、第二次オイルショックを経て1980年代前半は需要がマイナスに落ち込んでいる。しかし1985年以降再び消費量は大きく増加、2005年には2千万B/Dに達し、その後急激に減少している。
日本の1965年の消費量は164万B/Dで米国の7分の1に過ぎなかったが、それでもアジア・大洋州では際立った石油消費国であった。その後第一次オイルショックまで急成長し1975年には3倍近い461万B/Dに膨れ上がった。しかしオイルショックを契機に石油消費の伸びは低く抑えられ、1995年以降は減少に転じている。
これに対して中国及びインドは一貫して伸びており、特に中国の石油消費量は1990年以降急激に増加、2003年に日本を追い越し米国に次ぐ世界第二の石油消費国となっている。インドの伸びは中国ほどの勢いはないが、それでも1988年に100万B/Dを超すと10年毎に倍々ゲームで増加、2009年には318万B/Dに達した。この趨勢が続けば10年以内に日本を追い抜き世界3位の石油消費国になる勢いである。日本が省エネ技術により石油消費を抑えたのに対し、中国及びインドはエネルギー多消費型の経済開発により高度成長を遂げつつあることが解る。
(5)低下する石油自給率及び輸出余力
(図「主要国の消費量と生産量の差」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-96eOilProdVsConsumpBy.gif参照)
石油を多く生産する国の中でも人口が多く一定以上の産業規模を有する国は同時に多くの石油を消費する。例えば米国と中国はそれぞれ世界3位と5位の産油国であるが、米国は1965年以前から既に石油の輸入国であり、中国は1990年代前半に輸入国に転落している。米国の場合2009年は生産量720万B/Dに対して消費量1,870B/Dであり、差し引き1,150万B/Dの需要超過で石油自給率は39%となる。1965年に78%であった米国の石油自給率は年々低下し1990年代には50%を切り、そして2000年代には40%を割るなどほぼ一貫して低下している(但し2007年の33%を底に過去2年感は自給率が上向いている)。
中国の場合、1992年までは生産量が消費量を上回り自給率100%であったが、その後純輸入国に転じている。しかも生産と消費の不均衡は年々拡大し、2000年に152万B/Dであった需給ギャップは2009年は483万B/Dになっている。2000年には68%であった自給率も急速に低下しており、2007年に50%を割り、2009年は44%となっている。
サウジアラビア、ロシア、イラン、メキシコ、ブラジルは人口の多い有力産油国であるが、国内消費が少ないため石油の輸出国となっている。但しこれらの国の中には人口の増加、産業の発展、生活の高度化等によりエネルギーの国内消費量が増え、輸出に回す量が減る国が見られる。サウジアラビア、イラン、メキシコなど国内での新油田の発見が難しい伝統的な産油国にその傾向が強い。ロシアは需給ギャップを改善している数少ない国であるが、これは同国の産業が石油天然ガス依存体質から脱却できず石油消費が増えないこと、及び外貨獲得のため国内のエネルギーを石油から天然ガスに転換し、石油を優先的に輸出に回しているためと考えられる。
このように米国や中国は今後さらに石油の輸入量が増加すると考えられ、またサウジアラビア、イラン、メキシコなども国内消費の増加により輸出量が減少傾向をたどることは避けられないであろう。
(続く)
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