Cape Fear、in JAPAN

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にっぽん女優列伝(70)乙羽信子

2018-07-20 00:10:00 | コラム
24年10月1日生まれ・94年12月22日死去、享年70歳。
鳥取出身。

新藤兼人について語ろうとすれば「もれなく」乙羽信子(おとわ・のぶこ)さんがついてくるし、
その逆も同様で、つまりふたりでひとつ、
乙羽さんについて語ることは、新藤監督について語ることと同意なのでした。



監督主演の名コンビであり、夫婦でもあるふたり。

オオシマと小山明子の関係性にちかいような気がしますが、このふたりとの決定的なちがいは、
乙羽さんは新藤監督のことを「先生」と呼び、新藤監督は乙羽さんのことを「乙羽くん」といっていたところでしょう。

現代の夫婦では無理があるけれど、このふたりに関しては似合うなぁ、、、とは思います。


ふたりはいくつもの野心作を生み出してきましたが、その最高傑作は、まちがいなく『裸の島』(60)だと思います。



ほぼ台詞なしの疑似ドキュメンタリーを成功させるために、乙羽さんは「静かに」大熱演、キャリアで最高の演技を披露しています。


ただ最もポピュラーな作品となると、こちらになるかもしれません。
遺作ですしね。


※110秒かけた予告編なのに、結局どんな物語なのか「はっきり分からないところ」がすごい



<経歴>

宝塚歌劇団27期生。
同期生に、越路吹雪、月丘夢路ら。

50年、宝塚を退団し大映に。
デビュー当時のキャッチフレーズは、「百萬弗のゑくぼ」。

なるほど、かわいい感じがしますし、漢字で表現すると雰囲気があってよいですね。

映画俳優デビュー作は、50年の『處女峰』。
脚本は、28年後に旦那になる新藤兼人によるものでした。

新藤監督には最初は恋情というより「共鳴」にちかいところがあったようで、52年、新藤による自主映画『原爆の子』の出演を大映の猛反対を聞かずに決断、これがきっかけで大映を退社しました。


以下、新藤とのタッグ作品をまとめて。

『愛妻物語』(51)
『縮図』(53)
『どぶ』(54)
『銀心中』(56)
『女優』(56)
『悲しみは女だけに』(58)
『第五福竜丸』(59)
『裸の島』(60)
『人間』(62)
『母』(63)
『鬼婆』(64)
『藪の中の黒猫』(68)
『触角』(69)
『裸の十九才』(70)
『讃歌』(72)
『心』(73)
『絞殺』(79)
『北斎漫画』(81)
『落葉樹』(86)
『ブラックボード』(86)


つぎに、新藤監督以外の作品を。
溝口健二や稲垣浩、川島雄三から成瀬巳喜男、現代の監督では大林宣彦にも起用される人気ぶりでした。


『宮城広場』(51)、『月の渡り鳥』(51)、『誰が私を裁くのか』(51)、『お遊さま』(51)、
『安宅家の人々』(52)、『夜明け前』(53)、『千羽鶴』(53)、『大阪の宿』(54)、『美女と怪龍』(55)、
『太夫さんより 女体は哀しく』(57)、『柳生武芸帳 双龍秘剣』(58)、『暖簾』(58)、『野良猫』(58)、『貸間あり』(59)、
『秋立ちぬ』(60)、『永遠の人』(61)、『猟銃』(61)、『世界大戦争』(61)、『愛情の系譜』(61)、『台所太平記』(63)、『香華』(64)、『大根と人参』(65)、『暴れ豪右衛門』(66)、『赤毛』(69)。

『恍惚の人』(73)、『しあわせ』(74)、『事件』(78)、
『思えば遠くへ来たもんだ』(80)、『俺とあいつの物語』(81)、『天国にいちばん近い島』(84)、『夜叉』(85)、『植村直己物語』(86)、『二十四の瞳』(87)。

94年12月22日、肝硬変で死去。
肝臓癌を患っていました、享年は70歳。

遺作は旦那による『午後の遺言状』(95)。


本人も旦那も、遺作であることを確信して撮ったといわれています。

現代では「ちと早い」気もしますが、大往生だよあなぁ、、、と思います。

合掌。


次回のにっぽん女優列伝は、尾野真千子さんから。

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明日のコラムは・・・

『My Favorite Things』
コメント (1)
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