Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

夢の殺人者

2012-05-07 00:15:00 | コラム
救急車とパトカーのサイレン音で起こされた。

事故か事件か、
そういえば30分前も鳴っていて、相変わらず町田は治安が悪いんだなぁと思っていたら、サイレンは間近で止まった。
どうやらうちの団地らしく、しかも階下が騒がしい。

ミーハーではあるが野次馬根性はないので、救急車が去ってから様子を見てみよう。

しかし事件は、どこで起こったのか。
まさか3階のAさんではないだろうな、あんな仲のいい夫婦のあいだで「殺し」なんてありえないだろう・・・などと考えていたが、まだ酒が残っていたらしく、再び寝てしまった。

30分くらい過ぎたあたりで目を覚まし、ベランダから下を覗いてみた。

血で染まる路上に、水をまく警官。

その直後、誰かが自宅の玄関を激しくノック―ここでハッとして、1時間前の惨劇を思い出した。


「ごめん!」

自分はそう絶叫し、ベランダから「かーちゃん」を投げ落としたのである。

数秒後に鈍い音がしたが、怖いから下を見ることが出来ない。寝たふりをしていたら、救急車がやってきた、、、そういうわけである。


全体像が見えたその瞬間、自分はほんとうの眠りから覚めた。

最悪な夢である。

神話の世界のキャラクターではないが、自分は二度ほど「かーちゃん」を殺している。
一度目は3年くらい前で絞殺、しかしそれが地味に見えるほど、こんどの殺人はむごい。

前回は目覚めた直後に仏壇に手を合わせられたが、今回はむご過ぎるためになんとも後ろ暗くなり、なかなか仏壇の扉を開けられなかった。

先月、叔父が死んだこととなにか関係があるのだろうか。
数日後に「ねーちゃん」からメールがあって、自分が悪夢を見たその翌日に、怯えた「かーちゃん」が「助けて!」と電話をしてきた夢を見たそうである。

偶然だと思うが、そのよく出来た? 流れが怖い。

とりあえずお供えをして、やっとのことで手を合わせた。


そんな思わせぶりな夢じゃなくて、伝えたいことがあったら、はっきりいってよ、かーちゃん。


遺影を見つめても、もちろん「かーちゃん」はなにもいってくれない。


あらゆる視点から原発事故を検証する朝日新聞の傑作『プロメテウスの罠』、この連載で数日前、福島から東京に避難した女性が、毎晩のように死んだ旦那が枕元に立つ夢を見る・・・という話が載っていた。

墓はどうするんだ、家は? と迫られているような気がして、その女性は手を合わせながら「もう出てこないでね」と祈ったが、それでも旦那は出続けた。

「いまは(避難をして)とても楽だが、これほど辛かったことはない」―というような女性のことばで締めくくられるそのエピソードを思い出し、
自分を投影出来るわけもないが、いろいろと考え込んでしまった。


「かーちゃん」の夢をよく見るが、そういえば一般的な? 枕元に立っている、、、という夢はいちども見たことがない。

30代後半というのに、毎日きちんと、どれだけ疲れていようとも欠かさずに自慰をして眠る自分。
そのために外出前、枕元にティッシュを3枚「セット」しておく。

疲れて自慰を忘れて寝入ったとしても、「あ! やってない!」と飛び起きて「ちゃんとコトを済ませてから」寝る。
その直後あたりに、「ほんとうに、あなたは・・・」と頭を抱える「かーちゃん」が出てきてもおかしくはないのに。

そうやって毎日のように出てきてもらったほうが、親殺しの夢を見るより「はるかに」有難いのだが。

それは生きているものの、我儘なんだろうか。


今年の夏は、そんな「かーちゃん」の十七回忌である。


※『青春の殺人者』……76年に発表された日本映画の傑作。
監督は、伝説のゴジこと長谷川和彦。
製作に今村昌平、脚本に田村孟、美術に木村威夫という超ベテランの布陣で、新人ゴジを完全サポートしている。

よく分からない理由で親殺しを「実行」する、青年の物語。
青年役の水谷豊も力演しているが、それよりも恋人を演じた原田美枝子が鮮烈。


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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

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明日のコラムは・・・

『怒れる牡牛の物語』


コメント (3)
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