東日本大震災とタイの洪水の影響で、デジタル家電製品の国内シェアが大きく変化していました。例えば、2011年はソニーが小型デジタルカメラで、パナソニックがブルーレイ・ディスク録画再生機でトップにと言った感じです。今回の災害で主要10品目中、5品目で首位が交代してしまいました。工場の被害だけでなく、サプライチェーンが寸断され、部品の調達難から減産に追い込まれたケースが目立っています。そのため、それぞれの会社は、代替生産や基幹部品調達の分散などで、リスク分散を図っており、国内産業の空洞かに繋がっています。国内での空洞化で、さらに国内の仕事が減ることになり、失業率は増え、さらに非正規社員の増加で景気はますます悪化に繋がるという悪循環に入っています。
今回のデジタル家電の国内シェアランキングについては、全国の家電販売店の9割強にあたる約4000点の販売実績を調査するGfKジャパンのデータをもとに集計されています。震災とタイの洪水の影響が顕著だったのがデジタルカメラで小型デジカメではキャノンがシェアを2ポイント以上落とし、2位に後退しました。震災後の部品不足で主力の長崎キャノンの操業一時停止が響いたようです。首位となったソニーもタイの洪水被害を受けていますが、キャノンのほうが影響が大きかったと言うわけです。レンズ交換型デジカメでは、一眼レフの9割をタイで生産するニコンがシェアを5ポイント以上落としました。
プリンターのシェアでもタイの洪水の影響が出て、キャノンは主力のタイ工場が一次生産を停止、シェアで拮抗していたセイコーエプソンが首位となりました。キャノンの被災工場は生産を再開したのですが、12年4~6月期まで影響が続く見通しです。パソコンなどの記憶装置であるハードディスク駆動装置の世界生産の約5割を占めるタイですが、HDD(ハードディスク駆動装置)を組み込んでいるデジタル家電の販売にも、洪水の影響が出てしまいました。BD録画再生機ではシャープが2位に後退し、内蔵するHDDの調達難が原因の一つと見られています。
今回の洪水被害でサプライチェーンの寸断を受けたため、各社はその対策に乗り出しています。キャノンはカメラなどの開発・生産体制や部品調達の見直しに着手し、災害で部品の調達が困難になったさいの製品設計についても検討を始めたそうです。リスク分散についても複数に分けている部品メーカーの材料調達先も調査する方針だそうです。ニコンは中・低価格の一眼レフカメラの生産をタイの協力工場に委託したそうです。さらに部品メーカーまでも生産拠点の分散に動いていて、日本電産はHDD用モーターについて、タイでの生産依存を6割から4割に下げる計画です。その分は中国やフィリピンで生産することになるそうです。他に首位が後退したのはノートパソコン、携帯音楽プレイヤーで、ノートパソコンは割安感のあるモデルを出したNECが東芝を抜いて首位になり、携帯音楽プレイヤーでは新製品投入が端境期だった米アップルがソニーに首位を明け渡しています。
2011年、5品目で首位が後退したものです。
1、 ブルーレイディスク録画再生機では、1位パナソニック(前回2位)、2位シャープ(1位)、3位東芝(―)
2、 プリンターでは、1位セイコーエプソン(前回は2位)、2位キャノン(1位)、3位ブラザー工業(―)
3、 小型デジタルカメラでは、1位ソニー(―)、2位キャノン(1位)、3位カシオ計算機(2位)
4、 ノートパソコンでは、1位NEC(2位)、2位東芝(1位)、3位富士通(3位)
5、 啓太音楽プレイヤーでは、1位ソニー(2位)、2位米アップル(1位)、3位日立製作所(3位)
となっています。
こうしてみると、生産拠点の海外への移転は超円高もありかなり進んでいて、産業の空洞化がますます激しくなっており、日本も韓国や米国のように格差がますます広がって行く可能性が高く、韓国などは非正規社員が半分近くにもなっているそうで、格差は広がっていく一方だそうです。日本も同じ道を辿っているようで明るい話はありません。こうした事例を見ると日本企業の力が震災と洪水を気にますます地盤沈下していて、自動車産業も含め日本企業にかつての勢いはありません。米国では自動車の販売が1年も前から販売が落ち込んで、在庫の山を気付いていたにもかかわらず、需要を見誤っていたのであり、世界一の座も3年ほどしか続かなかったのです。一旦狂った歯車をもとに戻すのはかなり難しいかもしれません。