工作台の休日

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スクリーンで手に汗握る 映画「グランツーリスモ」

2023年11月07日 | ときどき映画
 F1に工作、それから本業も忙しくしており、なかなか観に行けなかったのと、ブログにも書けなかったのですが、数週間前に映画「グランツーリスモ」を観てきました。たぶん上映はほとんど終わってしまっていて、配信やおそらく発売されるであろうDVDを見ていただくことになるかと思いますが、この作品の話におつきあいください。
 この映画、ソニーのプレステで有名な同名のゲームのチャンピオンが実際のレースで通用するのか、という話です。実在するレーシングドライバーで、まさにゲームのチャンピオンから本物のレーシングカーに乗ることがかなった青年ヤン・マーデンボロー(演じるのはアーチー・マデクウィ)の実話が元になっています。マーデンボローは日本でもレースに出場していたことがあり、私も名前は知っていましたが、詳しいバックグラウンドまでは知りませんでした。
 映画は若者の挑戦と挫折、そして栄光をつかむまでという様々な形で繰り返されてきたストーリーですが、ゲームと実車といった対比、さらに主人公とその周囲の大人たちとの関係、そして何より実車を使った迫力のレースシーンが魅力です。
 実際に日産がソニーと組んでゲームのチャンピオンたちのための「アカデミー」を開設しており、映画でも主人公が他のライバルたちと切磋琢磨しながら成長していきます。そして彼らの指導役であるデヴィッド・ハーバー演じるソルターという元レーサーが、口は悪いしスパルタだし、という一面と、主人公の判断が正しければそれを尊重する、単なる頑固おやじじゃないところもあって、何とも魅力的です。また、このアカデミーの言い出しっぺでもあるオーランド・ブルーム演じるムーアという男も、日産側の人間として野心を隠さず、マーケティング優先の考え方ではありつつも、現場の意見もちゃんと尊重しており、ソルターに対しても信頼を置いていることがわかります。
 マーデンボローはアカデミーを首席で卒業し、晴れて「本物の」レースの舞台に立ちます。最初はソルターの無線の指示なしにはレースができなかった彼も、次第に自分の意志と力でレースをしていきます。こういうドラマにはつきものの金持ちのボンボンレーサーの意地悪とか、老獪なライバルに邪魔されたり、といったことも起こります。大きな事故やリタイアを経験しながら、クライマックスはアカデミー出身の他のドライバー達と組んで挑むル・マン24時間で表彰台を目指す・・・という展開で、後は映画を見てのお楽しみ、としておきましょう。実車もCGもありますが、レースシーンは本当に迫力があります。このゲームの製作者の山内一典(映画では平岳大が演じています)は細かなところまでかなりリアルにこだわっており、それがグランツーリスモというゲームの特色であり、魅力だそうですが、この映画でも製作総指揮をとっており、そこは変わらないようです。
 アカデミーのシーンでは当然日産車が使われますし、カセットテープでブラック・サバスを聴くソルターのために東京でお土産に買うのはソニーのウォークマンで、ソニーと日産のプロモーション映画みたいなところもありますが、それは仕方ないでしょう。レースシーンではランボルギーニあり、ポルシェありで楽しめますよ。
 劇中、主人公とガールフレンドが東京を訪れる場面があり、渋谷や新宿界隈も出てきます。ああ、あのあたりは歩くなあとか、空撮映像がおいおい、西武新宿に歌舞伎町じゃね、ということで自分の身近な街が横文字の映画に出てくると奇妙な感じがします。新宿のシーンでは実際にロケしたのかどうかは分かりませんが「思い出横丁」なんかが映ったりしています。主人公もそうなのですが、トーキョーは憧れなんでしょうね。
 主人公・ヤン・マーデンボローの話に戻りますが、父親が元サッカー選手というのも実話のようで、お父さんは約20シーズンにわたって、プレミアリーグの一つ下のリーグを中心にプレーしていたようです。映画ではお母さん役にジェリ・ハエウル・ホーナーが出演しています。この名前を知らなくても、元スパイス・ガールズのジンジャー・スパイスなら知っている方もいらっしゃるでしょう。今はレッドブルF1チームのボス、クリスチャン・ホーナー夫人ということで、レースつながりのキャスティングだったのでしょうか。
 映画では主人公が大事な勝負の前にケニー・Gやエンヤを聴くシーンが出てきます。これは実際にそうらしいです。:ケニー・Gにエンヤって、90年代前半のOLみたいな趣味ですが、私のウォークマンにも(エンヤはコンピレーションの一曲だけど)この二人の曲が入っています。勝負どころでは聴かないけどね。好むと好まざるとに関わらず、私も映画のソルターのような「若手に自分の経験を伝える」側になっていますので、やはり年長の人間の目線で映画を見ておりました。
 この作品、日本語吹き替え版だとエンドテーマをT-SQUAREのCLIMAXという曲が飾っているのですが、上映時間の都合がつかず、私は字幕版でした。でも、グランツーリスモのオープニング曲「Moon Over the Castle」が数小節流れる場面が本編にあることから、エンドロールにはこの楽曲名と作曲者でスクエアの元リーダー安藤正容さんの名前がクレジットされているのを見て、うれしくなりました。CLIMAXは河野啓三さん作曲のある意味日本的なインスト・ロック曲ですが、日本を感じさせる部分も多い映画ですから、きっとマッチしていたのではないかと思います。
 「Moon~」をスクエアが「カバー」しているのが「Knight's Song」で、1997年のアルバムに初めて収録されたのですが、私は2005年「Passion Flower」ボーナストラックの・・・って誰も聞いてないですね。
 そんなわけで実際にサーキットでレースを観たような心地よい疲れとともに映画館を出ました。当然、帰り道のBGMはソニーのウォークマンでT-SQUAREの「CLIMAX」でした。

(本作のパンフレットと右下はトミカのNISMO GT-R GT500のミニカーで、豚児のものを拝借してきました)

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