千一夜第3章第77夜 最近の読書8

2017-12-13 00:02:26 | 読書

2017.12.13(水)

光市虹ケ浜東側海岸より天気の穏やかな日に撮影したもの。中央付近に笠戸大橋が見える。

11日の陽落ちから今冬の初雪を見た。初めは霙だったが暫くするとはっきりした雪になった。それでも湿気を多く含んでおり積もるような雪ではなかった。12日の昼間も塵のような雪が強風に乗って舞っていた。喫煙は屋外と決まっているため、寒さのため少し吸っただけで屋内へと急ぐ。そのため煙草吸いは度々外へ出る嵌めになるのだ。お蔭で風邪をひきそうだ。

現在の勤務地は光市の虹ケ浜に近いのだが、昼の休憩時には海岸に出てみることも多い。最近は風が強く白波が立っているので釣り船の船影は見えない。昨日、大先輩OBのI氏が電話してきて、16日の土曜日に笠佐島周辺でハマチを釣りに行こうと誘いがあった。久しぶりの誘いなので一も二もなく了解したが、問題は風であろう。船釣りなので強風だと中止になる確率が高いが・・・。

最近読んだ本。記載するのは今回で8回目、評価を付けるのも気が引けるが、最も面白く読んだものは☆5つである。

『掏摸(すり)』 中村文則著 光文社新書河出文庫 評価☆☆☆☆ ’17年10月12日読了
寸評:大江健三郎賞受賞作。アメリカを始め世界各国で翻訳され、’12年には「ウオール・ストリート・ジャーナル」で世界ベスト10の小説にも選ばれる。天才掏摸士が主人公。社会の底辺で蠢く闇社会のアウトローたち、政財界の闇、フィクサーとなる最悪の男と再会し、その男の描いた通りの人生をたどる。運命を信じるか?そんな中でも行きずりの母子と出会い、少年の将来を自分と重ね合わせ何とか更生させようと試みる。この掏摸士の顛末は死を以って終わると思われたが、実は著者が解説で自らこの作品の続編を紹介している。この解説はいただけない。

『日本よ、咲き誇れ』 安倍晋三・百田尚樹共著 WAC文庫 評価☆☆☆☆☆ ’17年10月12日読了
寸評:10月11日発行の著書であるから、10月10日公示、同22日投開票の第48回衆議院選挙を睨んでの発行であることは間違いない。首相とベストセラー作家のコラボであるから、この時季相当のインパクトがある。5章からなり、第1章は2012年の両者の対談、第2章も2013年の両者の対談、第3章は百田の著書について両者の対談、第4章は2012年と2013年の百田の安倍晋三論、第5章は2017年までの安倍総理の講演録からなる。

中国の領海侵犯と恫喝、北朝鮮のミサイル・核問題、中国・韓国が仕掛ける悪辣な歴史戦などこれらを乗り切らねば日本の未来はない。これらの重要諸問題を解決に導くことができるのは安倍首相をおいて他にはいない。今回の総選挙で与党が過半数を獲得すれば一気に9条改憲の機運が高まるのだが・・・。購入後一気に読了した。

『誰も書けなかった日本のタブー』 10人共著 宝島文庫 評価☆☆☆ ’17年10月18日読了
寸評:週刊誌報道の詳細版か。’6年7月及び’8年9月号の別冊宝島から平成日本タブー大全からの抜粋で増補、改訂されたもの。興行のタブー(吉本興業人脈の正体)、マル暴のタブー、菊のタブー、宗教のタブー、政治のタブー、食品のタブー、性のタブーなど掲載。私は食品のタブーに一番興味を魅かれた。

『手紙』 東野圭吾著 文春文庫 評価☆☆☆☆ ’17年10月20日読了
寸評:鬱に陥りそうな非情に重い話である。強盗殺人犯の弟という運命が立ちはだかる。同僚など他人は露骨な差別を態度に示すのは道徳に反することだと思っているが、差別されて当然、本当は皆関わりたく無いのだ。犯罪者は自分の家族の社会性をも殺す覚悟を持たなければならない。そのことを示すためにも差別は必要であろう。犯罪加害者の家族を真正面から描く重い話である。この話はジョン・レノンの暗殺が根底にあるとのことだ。

『ラバー・ソウル』 井上夢人著 講談社文庫 評価☆☆☆☆☆ ’17年10月25日読了
寸評:人から忌避されてしまうほどの異様な風貌の男の、異常な執着と歪んだ恋サスペンス。程度の差はあるけど、男は誰でも自分の好きな女性に近付いてくる他の男を敵視する。勿論、敵視したってそれを表には出さないし、普通はせいぜい嫉妬するぐらいだ。でも、異常なヤツだとその感情に抑制が利かない。彼女に近付く男をみんな排除しようとする。さらに、その行動を正当化するために、危害を加えようとしている男から彼女を守ってやっているんだと思い込む。こういう状況の中、変質者の異常な精神構造を持ったストーカーによる殺人事件が起こる。ビートルズのアルバム「ラバー・ソウル」に沿って事件は展開していき、事件の順を追って供述調書の形式で語られる。つまり事件が起こった後から書き始められたものである。アルバム最後の「ラン・フォー・ユア・ライフ」は、「他の男と一緒にいるお前を見せられるぐらいなら、死んで貰った方がマシだ」「逃げられるものなら逃げな。一生逃げ続けりゃいい」などという暗示的な歌で閉じられる。3つの殺人事件の結末、それは大どんでん返しで終わる。

『春の雪』 三島由紀夫著 新潮文庫 評価☆☆☆☆ ’17年11月2日読了
寸評:「豊饒の海」四部作の第1作、日露戦争後の明治末という我が国の現代史の分水嶺ともいうべき時点から描き始められる。「春の海」は皇族を含む貴族の悲恋ロマンス物語である。解説からすると一種の大河小説の試みだと書いてある。四部作が緻密に計算され尽くしていると書かれているが、まだ1作目を読んだだけなので先のことは解らない。三島文学はとにかく凝った描写が多いし、現在では使われていないような言葉も多くでてくるので非常に読み辛い。特に最終章では因陀羅網(いんだらもう)の話になるが、難しくて理解できない。

『奔馬』 三島由紀夫著 新潮文庫 評価☆☆☆☆ ’17年11月13日読了
寸評:四部作「豊饒の海」の第二部、この四部作は転生の物語だと著者は云う(輪廻は必ず転生であるが、転生必ずしも輪廻とは云えない)。始めが明治時代で第二部は昭和初期の右翼のテロリストの物語。第一部の「春の雪」は白木の墓標から始められているのに対して第二部の冒頭は裁判所である。
第一部の主人公がこの「奔馬」では職業右翼の息子として生まれ変わる。第一部の登場人物が年齢を重ね醜さばかりを加算していく。美しさは若者の特権として描かれている。
副主人公である本多が、第一部では純情な書生だった飯沼が財界から金を貰って大所帯を張る職業右翼に変貌するが、第二部では飯沼の息子勲が主人公だが、勲は第一部の主人公侯爵家の息子松枝清顕の転生である。勲は「神風連史話」に心酔し、昭和の神風連を志す。2.26、5.15を経てクーデター、テロ集団を組織するが、同志を集め決起する寸前で密告により計画はあえなく潰える。
「太陽の、・・・日の出の断崖の上で、昇る日輪を排しながら、・・・輝く海を見下ろしながら、けだかい松の樹の根方で、・・・自刃することです」 勲の決意であるが、後年の著者の自決を匂わせる。「奔馬」の最終行である「正に刀を腹へ突き立てた瞬間、日輪は瞼の裏に赫奕と昇った」はあまりにも名高い。

『暁の寺』 三島由紀夫著 新潮文庫 評価☆☆☆ ’17年11月20日読了
寸評:「暁の寺」は「豊饒の海」全4巻の中の第3巻である。所謂「起・承・転・結」 の構成を踏んで発想されるまさしく「転」の位置に立つ。昭和45年7月に上梓され、著者の割腹自刃のほぼ半年前である。著者が死を決意したのは「暁の寺」を完結するまでの期間であったように思われる。
この作品の第1部は西洋の輪廻転生説を基に展開する。小乗仏教に始まり、インド哲学、ヌマの法典、ヒンズー教聖都ベナレス、シャクティ信仰、ヴィシュヌ神の十変化、ディオニュソス神、オルペウス教、ピュタゴラス教、アビダルマ教、大蔵教、そして大乗仏教の中核阿頼耶識へと展開し唯識思想の世界に打ちのめされるが、著者はその実在を垣間見たようだ。このことが180頁にも及んで詳述されるが難しくて良く解らない。
第2部からは「奔馬」の続編らしくなる。第2巻までの副主人公だった本多が主人公となる。本多は今や三島その人であった様にも思われる。著者が命を懸けて書き上げた心血を注いだ作品と言って良いだろう。

『天人五衰』 三島由紀夫著 新潮文庫 評価☆☆☆☆ ’17年11月28日読了
寸評:「豊饒の海」完結編である。永年の懸案だった「豊饒の海」全4巻を約1か月掛けて読み切った。この第4巻でも主人公は変わるが、第1巻から登場する周りの人物は変わらない。この巻でも本多が主人公と肩を並べる。本多の老齢と近づく死の兆候と共に物語は展開してゆき破局を迎える。全巻通しての風景描写などは滅亡の主題を形成する。しかし観点を変えてみれば生々流転して止むことのない自然の営為だ。また、生きることは老いることであり、老いることこそ生きることだと結論付ける。「我があるから不滅が生じない」という仏教の論理は、数学的に正確だとも言う。
著者は「絶対的一回的人生というものを、一人一人の主人公は送っていく。それが最終的には唯識論哲学の大きな相対主義の中に溶かし込まれて、いづれも涅槃の中に入るという小説である」という。
三島はこの原稿を書き終えた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決する。この小説を通して自刃に至る深層心理を読み解こうと試みるが、私には難しすぎて解らない。輪廻転生には諸条件があるが、三島は輪廻転生して何処に行ったのか。
著者の全ての著書を読んだ訳ではないが、これにて三島由紀夫は終わりにしたい。

『忘れられた巨人』 カズオ・イシグロ著 早川epi文庫 評価☆☆☆☆ ’17年12月1日読了
寸評:’17年のノーベル文学賞受賞作家。著者の著書は初読である。著者はデビューから一貫して「記憶」というテーマにこだわってきたようだ。本書は5~6世紀のイギリスが舞台、霧によって視界と思考が不明瞭な世界、記憶もまた片っ端から失っていく。主人公は自分自身を取り戻すため身命を賭して冒険に出る。主人公の老夫婦に付き従う内に、真実に向き合うことの気高さと大切さに気付かされる。記憶を巡る物語とは人間探求そのものである。本書は童話のようであり「カエルの楽園」を思い出した。

『阿川佐和子のこの人に会いたい9』 阿川佐和子著 文春文庫 評価☆☆☆☆ ’17年12月5日読了
寸評:連載1000回を超える「週刊文春」の看板対談「阿川佐和子のこの人に会いたい」傑作選第9弾。2011~12年にかけての24名の著名人との対談を文庫化したもの。著者の事前準備もさることながら、それに裏打ちされた巧みな話術で対談相手から臨機応変に様々な事柄を引き出して展開していく。笑いあり、涙ありの名対談集である。最早、対談の名手と言われた吉行淳之介を凌駕する。

【12月13日過去の釣行記録】
・2008年笠佐島周辺、06:30~13:30、大潮、船釣り、釣果=ヤズ5・カサゴ1
・2009年粭島小瀬戸、18:50~21:30、中潮、釣果=メバル4・アジ3
・2014年華徳山築港、06:30~10:30、小潮、釣果=ボウズ

【この日の釣り情報】
・この日の釣り情報はありません。

【旧暦10月26日釣行記録】
・2005年11月27日、大島居守、夜、若潮、釣果=メバル3
・2005年11月27日、新日鉄波止場、昼間、若潮、釣果=カレイ1
・2006年12月16日、華西南端防波堤、18:00~20:00、若潮、釣果=メバル14
・2008年11月23日、晴海埠頭、18:10~21:10、若潮、釣果=メバル5・アジ6
・2009年12月12日、笠佐島周辺、06:30~14:30、若潮、釣果=ハマチボウズ・メバル1

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