川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

バラックの浮き上がるシュート

2008-06-17 07:13:27 | サッカーとか、スポーツ一般
「言語技術」が日本のサッカーを変える (光文社新書)「言語技術」が日本のサッカーを変える (光文社新書)
価格:¥ 756(税込)
発売日:2007-11-16
ユーロのグループリーグ最終戦。というか、バラックのフリーキックは、浮き上がる魔球。ありゃ、決まるよね。

けれど、ドイツ代表の試合をみる時の見所というのは、いつも、「アカウンタビリティ」だと思っていて、あの人たちがやっているプレイには常に理由がある。聞かれたら今のはこういう意図だ、と語ることができるという意味での「説明可能な状態に保たれていること」(=アカウンタビリティ)
などと(うとうとしながら)、考えていた。

というのも、田嶋さんの本を読んだから。
コミュニケーションスキル、個の確立、その上での協調性、といったことなしにサッカーは強くなれないって話。湯浅健二さんがよく「サッカーは21世紀社会のイメージリーダー」とまでいうのは、まさにそういう理由なのだと思う。まあ、もちろんサッカーでなくて、あらゆる集団スポーツで同じことが言えるわけだろうけれど。

で、田嶋さんの本には、福島のJFAアカデミーの話もたくさん出てくる。ここは、反町さんが「笑っちゃうほどうまい」と目を細める子たちがたくさんいるところ。




冒険小説のころ

2008-06-16 21:03:55 | 雑誌原稿などを公開
2003年頃に、「ハーソンズ」という雑誌があったと思うのだけれど、それに書いた読書エッセイ。
言及される作品はこんなところ。
地底世界ペルシダー―ペルシダー・シリーズ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)
価格:¥ 242(税込)
発売日:1966

ロスト・ワールド (1963年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)
価格:(税込)
発売日:1963

冒険者たち―ガンバと15ひきの仲間冒険者たち―ガンバと15ひきの仲間
価格:¥ 798(税込)
発売日:2000-06

***********************

冒険小説のころ(2003年、パーソンズ掲載)

 千葉市の内陸部にある分校すれすれの小さな小学校に通っていた。人付き合いが苦痛で、休み時間も本ばかり読んでいる、まことに内向的でくらーい少年だったと思う。その割には冒険小説なんぞが好きで、バローズの『地底世界』シリーズや、ドイルの『ロストワールド』あたりを皮切りに、手当たり次第に読んでいた。で、きわめつけが『冒険者たち』。あえて解説が必要がないほどの、名作中の名作である。この時期にこの作品に出会えたのは幸運だったと思う。
 
 ところが、冒険小説ブームたけなわの小学校五年生の春、突如、天敵が現れる。学生運動の夢やぶれて教育の現場に新天地を求める体育会系の熱血教師。彼は昼休みに本を読んでいるぼくの首根っこをひっつかんで校庭へと引きずり出した。彼の価値観では「昼休みに読書」は不健全であり、ドッジボールをするのが正しいのだ。ぼくはなすすべもなく、小学校の最後の二年間を「昼休みスポーツ少年」として過ごさざるを得なかった。
 
 まったく迷惑な話だ。いやそれどころか、重大な損失だ。たぶんこのことだけで、小学五六年生の読書量は半減した。ぼくが意識している同世代の作家って、大抵、この時期、目一杯好きな本を読んでいる。半端に終わってしまった「物語世界の冒険」は、やっぱり「行くとこまで行っておく」べきだったのだとつくづく思う。それって小説家の「引き出しの数」にも如実に影響する。
 
 読書面だけじゃない。このプチ独裁者の圧政を生き延びるために、ぼくは内向的な性格を外に開く努力をしなければならなかった。おまけにいったん「外の世界」に目を向けると、確かにそこには探究するに足る多くの物事があるのも事実で、ぼくは長じて、ニュースをつくる仕事に就き、「取材」という枠内で人から見れば「冒険」に近いことをする半端なリアル冒険者になってしまった。我ながらなんだかなあ、である(それって好ましい教育効果だって?)。
 
 まあ、そんなふうに大いに人生の軌跡を狂わされつつも、『冒険者たち』だけは、時々、プチ冒険の旅のスーツケースの中にしのばせている。元「昼休み読書少年」のアイデンティティは、まさにこの本に集約されているような気がしてならないのだ。
*******************
 
 追記@2008
 ここで言及される天敵先生は、本当にぼくの人生を変えるほどのインパクトがあった人で、以前、紹介した「滝山コミューン」に通じる小学校ライフをぼくにプレゼントしてくれました。おかげできょうのぼくがあるわけです。
滝山コミューン一九七四滝山コミューン一九七四
価格:¥ 1,785(税込)
発売日:2007-05-19


 関連物件で、これも。ぼくが幼児だった頃に高校生だった人はこんなんだったのね、という話。それにしても、四方田さん、よくもまあこんなディテールおぼえているようなあ、と思う。
実はこの世代の人が教職を取って普通に赴任してくると、ぼくの小学生時代と重なるのですね。
ハイスクール1968 (新潮文庫 よ 30-1)
価格:¥ 540(税込)
発売日:2008-03-28


算数小説「アリスメトリック!」2回目

2008-06-15 06:27:03 | 自分の書いたもの
月刊 J-novel 2008年 07月号 [雑誌]月刊 J-novel 2008年 07月号 [雑誌]
価格:¥ 550(税込)
発売日:2008-06-16
連載中の算数小説の二回目が、J-novelの7月号に掲載されています。
「アリスメトリック!──算数宇宙の冒険」というもので、実は桃山町ってとこが舞台なんですよね。
桜川とともに結構使い回してしまっている町です。愛着あります。
それはそれとして……次の回あたりから、もっと数式が出てくるんですよねぇ。
3回目、4回目をこえると、逆に少なくなるのだけれど、小説の中で数学を扱うことに困難をおぼえつつ、かなり楽しんでます(滅多にできることじゃないし)。

数学ガールみたいな入門書性格はないわけじゃないけれど、それよりはずっと「お話」寄りのアプローチ。かなりの法螺話。
あ、数学ガール、いいですよ。
「アリスメトリック!」の中で、主人公たちに「フィボナッチ・サイン」をさせたくさせたくて、今、必死にがまんしまてすが。
数学ガール数学ガール
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2007-06-27



ここは海外組に学ぼう

2008-06-14 22:13:18 | サッカーとか、スポーツ一般
僕たち「海外組」がホンネを話した本―フロンティア精神に学ぶ世界で勝つためのサッカー論僕たち「海外組」がホンネを話した本―フロンティア精神に学ぶ世界で勝つためのサッカー論
価格:¥ 1,400(税込)
発売日:2008-04
オランダ対フランスのガチ勝負を観た後で、ワールドカップ三次予選の日本対タイをみても、もう「格差」に愕然とす。
パスのゆるさ。サイドを抉れず、アーリークロス気味にばかりなるサイド攻撃。サイドアタッカーが浅い角度から、それこそゴール上のネットに突き刺すようなシュートを狙う意識の希薄さ。
というわけで、海外組に学ぶとする。
これがおもしろい、前園真聖、松原良香、廣山望、といったビッグネームだけでなく、ニュージランドリーグで活躍した木村哲昌、パナマリーグで活躍し聞かして代表になってくれとまで言われた小曽戸充也……はては吉崎エイジーニョまで。
いや、良い本でした。
明日への希望がわいてくる。


異次元?(久々にええもんみた)

2008-06-14 07:02:37 | サッカーとか、スポーツ一般
R0017992_2スペクタクルなサッカー。なんだ、ロナウドだけじゃない(チェコ対ポルトガルを見逃したのがすっごく悔しい)。ロッベンも切れてるぞ。ゴールは決まらなかったけれど、ファン・ニステルローイの万能ぶりも堪能できたし、朝早く起きてのユーロ観戦は大正解。
それにしても、なんだなんだ。もう、次元が違う。
パスの強さ、精度、ワンタッチプレー、想像力に創造力。
ふー、えーもんみた。
それにしても、なんなのだ、あの「反転力」は。

ファン・ニステルローイみたいな体幹のしっかりしたフォワードの振り向きざまシュートならともかく、スナイデルも、ファン・ペルシも、密集地帯での反転シュートをするりとやってしまう。
ロッベンやリベリーは、二人にマークされてもきっちりクロスをあげるし、隙間からシュートをねらう。
あー、シュートを打つ文化なのね。
ため息。

ちなみに、きょうのベストゴールは、ぼくとしては、あの何気ないアンリの一発(蹴ったように見えない、かすりシュート)。

とにかく、興奮しました。
オランダの四連発花火。

そういえば、アナウンサーはあきらかに杉山さんの本を読んだみたいに4-2-3-1とか、4-3-3とか、なかなか整理された知識として述べていたなあ。そのわりには、「システム」というわからん単語も同時に使っていたけれど。
あと、湯浅健二さんの本を、また読もうと思った。

4-2-3-1―サッカーを戦術から理解する (光文社新書 343)4-2-3-1―サッカーを戦術から理解する (光文社新書 343)
価格:¥ 903(税込)
発売日:2008-03
日本人はなぜシュートを打たないのか? (アスキー新書 018) (アスキー新書 18)日本人はなぜシュートを打たないのか? (アスキー新書 018) (アスキー新書 18)
価格:¥ 760(税込)
発売日:2007-07-10


ピクトさんを探し中

2008-06-13 08:20:42 | 日々のわざ
ピクトさんの本ピクトさんの本
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:2007-04-20
日本ピクトさん学会の内海さんによるこういう本があって、周囲でピクトさん旋風が吹き荒れているのだけれど、ここは一発、町中でピクトさんをさがしてやれ、と思ったら……なかなかないのですね。駅や学校では、いつも痛い目にあって「真似しちゃダメだぞ」と範を示してくれているピクトさん。感謝をこめて話題にしたいのだけれど、近所でみつけたのはこれのみ。

R0017986身を挺して毒物を吸い込み、良い子はやっちゃいかんぞと教えてくれます。まさにピクトさんの鑑。
それに、これって、意外にレアかも……。
だって、「ピクトさんの本」の中にでてくる分類、「転倒系」「頭打ち系」「落下系」「かけこみ系」……といった代表的なものをさしおいて、いきなり、特殊特質系とされる「黒ピクトさん」ですよ。

ちなみに……下のようなやつら。
これはピクトさんとは言わんよね。
抽象化が不十分。いまだピクトグラムの域に達せず。
というわけで、未ピクトさん、ということで。
でも、こういうのなら、町中にあふれているのです。
しかし、まぶたのない目ってこわい……。宇宙人みたいだ。
R0017980R0017984


最近の試み

2008-06-12 20:41:22 | 川のこと、水のこと、生き物のこと
Img_6099さてこれはなにの写真?
分かる人にはすぐ分かるはずなのだけれど……
このツブツブしたのは、
Img_6078アゲハチョウの鱗粉なわけです。
最近、愛機のCarton実体顕微鏡(3眼式)にEOSマウントのカメラを取り付けられるアダプタを買ったので、それでEOS5Dにて撮影。
35ミリ版のC-MOSなので、周辺がケラレてしまうのだけれど、これも味かな、と。
ちなみに、kiss digitalなんぞですと、ケラレずに撮影できるそうです。

で、実際に撮ってみて問題を感じるのは……「意外に暗い」ってこと。
照明装置つきなのだけれど、それだけではカメラ側の感度を1600くらいにあげてやらないと安心できるシャッタースピードにならない。
もっとガンガン外から照明をあててやらないとだめってことみたい。

というふうに工夫しつつ、これからもいろいろ撮ってみます。

目標、クマムシ。

その前に、アタマジラミとか、みたい?


疑似科学入門

2008-06-11 20:13:05 | ひとが書いたもの
疑似科学入門 (岩波新書 新赤版 1131)
価格:¥ 735(税込)
発売日:2008-04
手頃に買えて、手頃に勧められる疑似科学批判本だと思う。
特徴は……疑似科学を、第一種、第二種、第三種、とあえて分類していること。


第一種というのは、「人の心のゆらぎにつけこむまやかしの術」。占い、超能力、超科学のたぐい。

第二種というのは、科学的と思われる言葉をつかったり、理論を拡大解釈したりして科学を装うもの。波動、ゲルマニウム、マイナスイオンといっもの。

ここだけで分かると思うのだけれど、一種と二種のあいだには、はっきりとした線引きがあるわけではなく、混交する例がいくらだってある。たとえば、血液型って、一種かもしれないけれど、二種の要素もある。超能力も同様。

第三種というのが、物議をかもし、また、興味深いところでもある。
環境問題など、相手が「複雑系」である場合、科学の射程は今のところそれほど長くない訳で、それをいいことに「科学的根拠なし」とか「どちらともいえない」とするような言い逃れの態度。

たとえば、養老さんの喫煙についての言説やら、水俣病について国側に立つ医師たちが繰り返してきた発言やらは、第三種疑似科学になってしまう。このあたり、きわめて線引きの難しいところで、まじめに疑似科学か、正当な科学かを論じようと思ったら泥沼にはまる可能性もあるだろう。

でもって、第三種疑似科学が、その場限りの言い逃れ的に使われる場合には、予防原則で対応するというのだけれど、それが一筋縄ではいかないのは目に見えていて著者も認める通り。


もう一点、記述の中に疫学的な発想がほのみえるし、一部では疫学研究の紹介がされているのも目新しいかもしれない。ただ、使われる用語が疫学っぽくない。なぜか。池内さんはどんな情報ソースで疫学の「勉強」をしたのだろう。
巻末の参考文献紹介(ごく簡単なもの)には、疫学の本はない(津田さんの本はあげられているけれど)。

で、その参考文献の中で、やっぱり、ぼくも推しておきたいのは、このあたりかなあ。

疑似科学と科学の哲学疑似科学と科学の哲学
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2002-12
医学者は公害事件で何をしてきたのか医学者は公害事件で何をしてきたのか
価格:¥ 2,730(税込)
発売日:2004-07
エコノフィジックス 市場に潜む物理法則
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2001-12


最後の高安さんの本は、たぶん複雑系についての参考文献として挙げられているのだけれど……ぼくにとってはひどく懐かしい。
そして、ふと思うと、たった20年前、高安さんみたいなことを言うと第二種の疑似科学になったかもしれないものが、今では立派な科学として成立していることに感慨を覚えたり。

追記
岩波の赤版なんて読むと、胸がつーんと甘くなる。
独特のフォント。


写真の猫は関係ありません

2008-06-11 14:02:18 | 日々のわざ
R0017959最近、庭にウンチしていく猫がいて、閉口中。どうやって追い払うのがヨシでしょうか。
それはさておいて、ニコチアナのゲラの二回り目。一生懸命、なおしてます。
諸般の事情で、ニコチアナの文庫版刊行は8月に。
8月には「バギー」と「ニコチアナ」のダブルブッキング予定。ぼくとしては、珍しいことですが。



指輪物語とインターネット

2008-06-10 17:59:15 | 雑誌原稿などを公開
これは、2004年くらいに共同通信か時事通信に書いたエッセイ。

言及されるのは、指輪のDVDなど。
ロード・オブ・ザ・リング コレクターズ・エディション トリロジーBOXロード・オブ・ザ・リング コレクターズ・エディション トリロジーBOX
価格:¥ 7,875(税込)
発売日:2005-12-14

**************************
指輪物語とインターネット

 ファンタジーの大作「指輪物語」とインターネットが密接な関係にあると言うと多くの人は驚くだろう。でも事実である。いや「史実」といった方が正確か。
 
 実は北米で「指輪物語」が爆発的に読まれていた時期とインターネットの草創期は重なる。ベトナム反戦運動が盛んだった頃だ。「指輪」は超大国の強大になりすぎた「力」を捨てる物語に読み替えられ「ガンダルフを大統領に!」を合い言葉にデモに参加する者が続出した。
 
 その一方、大学の奥深く(?)で一部の研究者に独占されていたコンピュータを有効利用できるよう、ネットを繋げた初期ハッカーたちも「力」の独占に批判的なヒッピー的民主主義者だった。
 
 だから、当時のネットユーザの多くが「指輪」の熱心な読者だったことは、ごく自然なことなのだ。電子メールのアドレスや、ネットに繋がったコンピュータの「名前」に相当するドメイン名には、フロド、ガンダルフといった「指輪」由来ものが競ってつけられ、メーリングリストでは「指輪」について大いに議論されたという。
 
 こういった「史実」に加え、「指輪/ネット」の連合が、我が国のサブカルチャーに直接影響を及ぼした経緯もある。インターネットの「本質」である経路制御プログラムを開発したハッカーは「指輪」をモチーフにした卓上ゲームのファンで、それをコンピュータでプレイできるプログラムを書いた。これがパソコンゲームを経て、「ドラクエ」や「FF」など、「ロールプレイングゲーム」の原形となったのだ。
 
 ここ数年、オンラインRPGが流行している。複数のプレイヤーがインターネットを介して「もう一つの世界」に接続し、そこで冒険を楽しむ。「エバークエスト」など代表的なタイトルをプレイすると、確かにここには「指輪」を読んで「中つ国」にどっぷりと浸かり込むのと似た感覚がある。結局、ネットと「指輪」は、草創期の「史実」を超えて、今も親和性が高いのだと印象づけられた。
 
 さて、「指輪物語」の映画化作品「ロード・オブ・ザ・リング」は、北米では「ハリーをしのぐ」人気だそうだ。そこでぼくはインターネットとの関係がふたたび気になり始めている。
 
 反戦運動の中で「指輪/ネット」が結びついたように、今回は同時テロ後の愛国ブームにわく時代背景だ。そういえば、9月11日直後「愛国の言説」に支配されたアメリカで、唯一「報復の連鎖を断て」と正論を提示しえたのは、既存マスコミではなくインターネットの小メディアだったとぼくは認識している。
 
 これは何を意味するのか。「力を捨てる」指輪の物語が今、多くの人に観られることが、悲劇の無限連鎖をくい止めるための「気付き」となるためには、マスコミではなくやはりネットが鍵を握るということだ。「指輪」と「ネット」の関係は、今まさに我々の世界のとても本質的な部分にかかわろうとしている。
*************
追記@2008
まあこれも有る意味で、スープネタなですよね。
The S.O.U.P. (角川文庫)The S.O.U.P. (角川文庫)
価格:¥ 780(税込)
発売日:2004-05


お屋敷からコミュニティガーデン

2008-06-10 08:10:55 | 日々のわざ
R0017952R0017957近所のお屋敷群の中でも、一番由緒ただしき雰囲気がむんむん醸し出されているあたり。そこから何分か走ると、行き止まりの路地の奥にいきなり小さな畑(コミュニティガーデン風)があって、こんな花が咲いている。
花の知識がないぼくはまた?の状態。
畑の中とかまわりに結構たくさんあるので、ひょっとすると「農作物」になるものなのか。それとも、単にガーデン
管理者があえて「みばえ」のためにはやしているのか。


ソングラインのこと

2008-06-09 07:22:39 | 雑誌原稿などを公開
なんの脈絡もなく、昔書いたエッセイ。
言及されるのはこちら。
ソングラインソングライン
価格:¥ 2,730(税込)
発売日:1994-07

なにしろ、ソングラインという概念の「美しさ」に魅せられて、チャトウィンみたいに謎解きの旅をしたくて、その真似ごとをしてみていた頃のお話。
********************
 ソングラインのこと(2004年「本の話」に掲載)

 オーストラリアのアボリジニが古くから歌いつないできた「ソングライン」について知ったのは、たぶんに漏れずチャトウィンの名著『ソングライン』のおかげで、かれこれ十年くらい前になる。

 遠い過去、オーストラリア大陸をアボリジニ祖先たちが放浪した道筋を織り込んだ歌というだけで、すでに心惹かれるものがあるのだけれど、加えて、今もそれが砂漠の中の泉と泉をつなぐ実用的な地図としても機能しているという説明に愕然とした。歴史+地図、つまり、時間と空間をつなぐ不思議な歌。そんな美しいイメージが頭の中に定着して、いつか自分の耳で聞きたいと願った。
 
 野生生物の写真を撮って紀行文を書く仕事を多くこなしていた時期だった。その関係で、オーストラリアには何度も行ったことがあり、つてをたどってあるアボリジニの共同体に居候する約束をとりつけた。興味の中心は、海辺に位置するその共同体で行われているジュゴン漁だったのだけれど、漁はしょっちゅう行われるわけでもないから、ぼくはありあまる時間を「ソングライン探索」に費やした。
 
 ぼくの質問に誰もが口を濁す。ああ、そういうのがあるね。うん、そういうもんだ、と「歌」の存在については肯定するものの、じゃあ、歌ってよと言っても、ニヤリと笑って、立ち去ってしまう、といったふう。
 
 窮状を救ってくれたのが齢八十歳のケイティばあさんで、ぼくは日なが部屋でうつらうつらしている彼女を訪ねては「昔の歌」をせがんだ。しわがれた声で部族語で歌い、その後で英語に訳してくれるのは、やはり、祖先がどうやってここにやってきたのかを盛り込んだ、ソングラインの歌だった。くらくらするほど暑い午後の風通しの悪い部屋の中で、ぼくはたしかにアボリジニの歌の精髄に触れた(気がした)。
 
 でも、まだまだだ。ケイティばあさんの記憶の中のソングラインではなく、「今ここ」のソングラインを知りたい。聴きたい。
 
 チャンスが訪れたのは、それから数年後。オーストラリア最大の砂漠であるグレートサンディ砂漠の入り口までランドクルーザーで繰り出した。近くの町で知り合った、アボリジニの家族と一緒だ。祖先の地である砂漠に行きたかった彼らと、アボリジニと一緒に砂漠に行きたかったぼくの利害関係が完全に一致したということ。
 
 砂漠とはいっても地面が完全に砂地というわけではなく、スピニフェクス呼ばれる「イタタ草」(葉の先端が尖っていて触ると痛い)や数々の灌木に覆われている。
 
 アボリジニの家族は、食用になる植物をあちこちから採取してきて、おまけに灌木の皮を剥いで中から白いムチムチの幼虫をひっぱりだしてはパクパク食べていた。彼らにとって祖先に直接つながる「ブッシュ・フード」であって、今となっては極上の珍味と感じられるらしい。ぼくも幼虫は無理にしても、ブッシュバナナあたりは結構イケルのを発見して、ひたすら食べた。
 
 問題はソングライン。

 小高い丘に立てば、ぼくの目には見えないにしても、あちこちに泉と泉を結ぶ歌のネットワークが張り巡らせているはずだ。それを「その場」において聞きたい。ソングラインの歌が土地と結びつき、時間をも超える秘密を、まさに「今ここ」で実感したいとぼくは願った。
 
 例によって、曖昧な微笑みが帰ってくる。
 ひょっとして、この人たち、もうソングラインを忘れちゃった世代のかもと思うと、ふと口の中でむにょむにょと口ずさんだりして、実に思わせぶりだ。
 そして、「ソングラインは、ソングラインだ」みたいな堂々巡りの発言をして煙に巻く。
 
「この大陸はぜんぶソングラインに覆われてます。それは神秘です。大陸すべてが歌なのですよ」と言ったのは、白人のコーディネーター。「いいですか、耳を澄ませば歌が聞こえてきます。それがソングラインです。ソングラインによって、アボリジニは大地と、そして精霊たちとつながるのです。それがアボリジニの精神世界【スピリチュアル・ワールド】なのです」

 彼は複数のアボリジニ妻との間に十人以上の子供を設けた、アボリジニ文化にどっふりな男だから、基本的には彼の発言に重きを置いていたのだけれど、それにしてもこの能天気な言いぐさはないと思った。

 その夜は、砂丘の上にマットを敷いて、空を見上げて眠った。滴り落ちてきそうな銀河を感じながら聴く風の音は、砂漠の砂が擦れ合って立てる音楽のようでもあって、眠たい頭の中で幾重にもつながる砂丘の彼方へと導くソングラインの歌に変換れさた。ああ、なるほどと、コーディネーターの言葉に一応は納得。風の音は、耳を凝らせばソングラインそのものなのだ。
 
 でも、それだけのこと。
 ぼくには神秘家の素養はないので、別にそれでミステリアスなアボリジニの精神世界に届いたなんて全然思わないし、大地の精霊につながったとも思わない。朝の光の中では、むしろ、そう感じかけた自分が気恥ずかしくもあった。結局、ソングラインをめぐる旅は、チャトウィンに遠く及ばず(当たり前?)、ぼくの頭の中では、核心の部分がすっきり理解できないままだ。その概念の美しさに相変わらず魅了されていることも相変わらずで、時間と空間を吹き抜ける風というのは確かにあるのだ、ということだけは確信を持って言える。

************
追記@2008

これはたぶん、「はじまりのうたを探す旅」を書いた時に版元のPR誌に書いたものだったか。
よく覚えていない。
ちなみに、この時、ぼくを砂漠につれていってくれた男は、ジョンといって「郵便屋」(ポスティ)だった。
ケイティばあさんは、アウトステーション(人里離れたところにあるアボリジニの集落)から都市に引き上げてきており、まだ健在だった。
さすがに今は……だけれど。
なぜか胸が苦しいほど、懐かしい。

はじまりのうたをさがす旅  赤い風のソングラインはじまりのうたをさがす旅 赤い風のソングライン
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2004-09-11


そういえば、この小説の中でこっそり「引用」したBeckも終わったなあ。
最後の何回かは、予定調和のアマアマなかんじになったけれど、それでオーケイってかんじでした。
そして、音楽漫画の正統は、DMCへ……かな(笑)。

4-2-3-1!

2008-06-08 08:32:33 | ひとが書いたもの
4-2-3-1―サッカーを戦術から理解する (光文社新書 343)4-2-3-1―サッカーを戦術から理解する (光文社新書 343)
価格:¥ 903(税込)
発売日:2008-03
「サッカー世界基準」では、歯に衣を着せない物言いで、日本の「常識」を打ち砕いた杉山さんの新作。すごく売れているらしい。あえて戦術や布陣から「のみ」語るサッカー論。こういうのって、頭をすっきりさせてくれる。サッカー観て楽しむための栄養になる本。
しかし、またサッカーめいた時期になってきた。オマーン戦はみたけど、さすがにユーロは無理だ。寝る時間なし。さ、息子のサッカー大会に行って来ようっと。

追記
で、いってきました息子のサッカー大会。
これは本当に小さな大会で、ある指導団体が主催するもの。
子どもたちの試合の合間に保護者サッカーってのもやることになっていて……腕に覚えのある、というか足に覚えのある連中が出てくる訳ですよ。

それで、足に覚えのないぼくも出た訳だけれど、子どもがやっている小さめのピッチにきっちり11人で試合をすると、もうキツキツ。布陣なんてもんはもうないです。
そんでもって、おいらのポジションは、リベロ。
いや、全員リベロ。
最後尾で守ったら、最前線で思い切り蹴飛ばす。
それだけでっす。

で、大相撲出身みたいなお父さんに吹き飛ばされて、後頭部から落ちました。
たんこぶできてます。
いたいっす。

サッカー世界基準100―日本人だけが知らないサッカーツウ!の常識サッカー世界基準100―日本人だけが知らないサッカーツウ!の常識
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2006-04


遁走、隠遁

2008-06-07 08:34:19 | 日々のわざ
R0017944ルーチンと化しているモーニングランの最中、爽快感を感じることがこのところない。
どうもよろしくない。
そんなところ、いつもと同じ道を走っていると……こんなのが目に入ってきた。
あれれ、こんなのあったっけ……。
と導かれるように矢印の方向へ。

R0017945なにに惹かれたかって。
「遁」ですよ、遁。
遁走とか、隠遁。
遁世とか、遁出。
遁辞とか、遁路。
みーんな、自分に必要なものかも……。
遁甲ってくらいだから、カメのようにまあるくなって、やりすごす術とか。
そういや、土遁の術なんてのもあったなあ。
なん考えつつ走ったら、わずか十メートルほど先に看板があって、どうやら、占い屋さん(?)なのですね。
「遁」の道をきわめる、遁道の大家がおすまいかと思ったのけれど、そういうわけでもなさそう。

R0017949R0017951というわけで、さらに走って行くと角を曲がったところに、ポップな絵馬がたくさんかけてある一軒家。屋根の上にはソーラパネルらしきものや、風車のごときものがくっついてい不思議なモダン建築なのだけれど、道路に面したところに自作絵馬。
さらに二十メートル走ると本物の神社。
なにはともあれ、「遁」に惹かれて入り込んだ路地。ほんの1ブロックといってもいいエリアに(普通に走れば30秒で走り抜けられる)、微妙な非日常があふれていて、そういう意味では本当にちょっとだけ「遁」なかんじもしたひとときでした。



股旅はマタタビ

2008-06-06 22:27:23 | ひとが書いたもの
股旅フットボール―地域リーグから見たJリーグ「百年構想」の光と影股旅フットボール―地域リーグから見たJリーグ「百年構想」の光と影
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2008-04
カマタマーレ讃岐、町田ゼルビア、FC岐阜、というのは聞いたことがある。
でも、名前を知っているだけ。ゼルビアはちょっと知った人が関係してるだけ。
だって4部だもの。
なかなかそこまで手が回らない。
などと書くのが、非常にはずかしくなる本。

宇都宮徹壱さんの素晴らしいところは、まさにそこに着眼したところ。
ワールドカップの決勝でジダンの頭突きを見た3日後には、日本の4部リーグの試合を見ているというこのシュールさ。
サッカーに貴賤なし。
足もとから続くからこそ、ワールドカップがすごいのだ、ともぼくは常々思う。
しかし……それにしても、地域リーグからJFLへと昇格するのは、かくも困難なのか……。

元々狭き門であることに加えて、経営上のジャンプアップが要求されること、アマチュアとプロ指向が混在する不都合……数々の困難に苛まれるカテゴリーであり、だからこそ、Jリーグ百年構想の最前線でもあると看破するあたり、膝を打ちましたともさ。

銀河のワールドカップの狸おやじが、FC桃山を大きくしていく野望を抱いた時、まずは東京リーグの2部あたりから始まって、JFLを目指すってあたりが妥当なのかなあと今更思ったり。
銀河のワールドカップ (集英社文庫 か 49-1)銀河のワールドカップ (集英社文庫 か 49-1)
価格:¥ 780(税込)
発売日:2008-05-20