導入直後の素牛のビタミンA血中濃度を測定すると、低いものでは25(IU/dl)、高い数値では120(IU/d1)あるものもいて、かなりのバラツキがある。
これは、それぞれの生産現場の飼育環境が異なることと、とくに低い数値を示す場合は市場へ出す以前に風邪や下痢などの様々な疾患を患ったり、長距離輸送中のストレスにより、同Aの異常な消費があったことなどによるバラツキである。
導入時からこの様に低い数値では、順調な食欲は期待できない。
食い込みが悪ければ、増体どころではなく、体調維持さえままならない。
導入時に、一々採血して、それらを測定することは時間や経費が掛かり、なかなか現実的ではない。
この様な現状を回避するために、導入後約5ヵ月間は同剤の補給が必要となる。
数値が高い場合でも、補給によって体内要求を越す場合は、体外へ排出するため、全頭投与を行っても問題は起こりにくい。
数値が低い場合は、食欲不振や消化管内壁や関節等に支障が起こり、疾病を誘発しやすくなるため、牛が健康を維持し順調な食欲と増体を促すために、同ADE剤を補給することは当然の処置となってくる。
当方では、市販のADE剤ペレット(1袋1kg入り:10,000国際単位/g)を1頭1日当たり約2gを10日間隔で投与している。
その他、肥育前期用配合や乾草などによる同Aの体内蓄積量は、飼料標準に示されている基準値より、かなり高いレベルとなっている。
これにより、生後15ヵ月令では、血中濃度が約100(IU/d1)程度に揃え、その後は、同Aコントロールにより、50~60に落とし、それ以降は40~50で推移させ、仕上げ末期では30~35程度に理想的な数値を推移させることを目標とし、概ねミスをしない限りうまくいっている。
上記の取り組みが順調であれば、肥育後半の23~24ヵ月令頃に出やすいA欠症状は現れないが、個々の牛では、ペレットを摂っていない牛もいて、その頃にA欠が出る場合がある。
その場合は、同症状から早期発見して、経口同剤を一気に呑ませて、症状を出来るだけ早期に抑えることが肝要である。
コメントに応えて。
やはり我々生産者は、元気な子牛を市場に出品してこそが仕事、そのばらつきをこのような裏付けのある方法で減らしてコントロールしていくのが肥育屋さんの腕といまさらながら感じ入りました。
1g中10,000国際単位と明示されています。
以前は三共から同製品がでていました。