牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

先達達の和牛語録

2009-08-18 22:43:20 | 牛の改良



筆者の本棚には、60年以降に発行された畜産書の数々が並んでいる。頁を捲れば紙が劣化して破れそうな本もいくつかあり、全国和牛登録協会編「最新の和牛」(50年出版)などがそうである。
当然ながら、その当時の最新技術は、今時のような多頭化に至っていない頃の技術であり、内容に歴史的な経緯が伺われる。
しかしながら、必要もないのにそれらに目を通すことがままある。
それは、技術と言うよりも、その当時からの和牛に関する様々な変遷に遭遇できることと、当時の牛作りの信念如きが伝わり、牛作りの初心に戻れるからでもある。
60年頃は、和牛の使用目的が役用牛から肉用牛へと変更され、牛肉生産が産業として普及し始めた頃であり、当時の専門家達の意気込みがこれらの書籍から伝わってくる。
全国和牛登録協会初代会長でもあった故羽部義孝博士は、和牛改良に携わる関係者にその基本理念を標語にして周知徹底した。
「信用は登録の生命なり」「牛つくり 草つくり 人つくり」は余りにも有名である。
諸々の技術は当然のことながら日進月歩の如く進歩する中で、この標語は、いつの時代にも共通の理念が生きている。
先達の優れた教訓である。