まろの公園ライフ

公園から世の中を見る

ホームレスの冬

2012年01月24日 | 日記

風が冷たい。
上空を覆う何やら不穏な雲。
やっぱり雪雲だろうか。

テレビで予報士が珍しく「夜には雪が積もります」と歯切れよく言い切っていた。
大寒が過ぎて一年で一番寒い季節を迎えている。
そう言えば、大昔にひねったこんな短歌を思い出した。

   一年に さしたる計も見つからず 明日は雪とか 大寒は過ぐ  (杉作)

うーん、昔から人生に「計」というものがなかったんだよなあ・・・

冬はホームレスの人にとっては一年で一番つらい季節だ。
夏なら風も吹くだろうし水でも浴びて涼をとることが出来るだろうが
公園は焚火禁止だから暖をとることさえ出来ない。
とくに夜はいくら着込んでも戸外の寒さは耐えがたいものだろうと思う。

ほとんどの人が園内の休憩所で寝泊まりしている。
屋根があるから雨露こそしのげるが、冬場は吹きっ晒しの状態だ。
時には朝から寒さしのぎに酒盛りをする光景を見かけることもあるが
荷物だけで本人の姿が見えないと
「よかった、今日は仕事があったんだ」などとホッとする。

以前、ドキュメンタリーの取材で何人ものホームレスの人に話を聞いたことがある。
大半が地方出身の高齢者と呼ばれる人たちだった。
「家なき人生」に至るまでの事情と流転の道のりは実に数奇なもので
生半可な放送作家の想像力をはるかに超えるさまざまな体験談を聞かせてもらった。
腕のいい友禅職人さんもいたし、上場企業の重役だった人もいた。
それぞれの経緯を紹介する余裕はないが
いずれも人間として(男として)の矜持はいささかも失っておられず
行政の「セーフティーネット」の世話になることをキッパリと拒否しておられた。

人間としての「尊厳」と「福祉」の相克。
などというと大げさになるけれど、何とかならないものかと、いつも思う。
ホームレスの人を見て常にある種の「痛み」に似た感情を覚えるのは
決して「他人事ではない」という怖れである。
よるべないフリーランサーの足元など実に脆弱かつ頼りないもので
何かの拍子に自分がホームレスになるのは
目の前の水たまりを飛び越えるより容易いものなのだ。

案の定、夜になって雪が降り始めた。
横なぐりのボタン雪で見る見る団地も銀世界となった。
公園は、ホームレスの人はどうなっているのだろうかと思う。
縁起でもなく「凍死」などという言葉が浮かんだ。



ドンドン降り積もる雪。
ぬくぬくとした部屋の窓からじっと降る雪を見ていた。