まろの公園ライフ

公園から世の中を見る

東京都写真美術館

2012年01月17日 | 日記

仕事帰りに恵比寿ガーデンプレイスへ。
と言っても別に「エビスビール」が目的ではない。

東京都写真美術館。
世界でも珍しい写真と映像に関する専門美術館だ。
以前から、見てみたい展覧会があったので足を延ばしてみた。

「ストリート・ライフ」~ヨーロッパを見つめた7人の写真家たち~

このブログを書くようになって初めてカメラを手にしたように
写真に関しては全くの門外漢だったし、とくに興味があった訳でもない。
ただ、青春時代に藤原新也の「全東洋街道」を見て感銘を受けて以来
「メメント・モリ」や「印度放浪」などを次々に買い求め、偏った写真ファンにはなった。

今回の展覧会は「ソーシャル・ドキュメンタリー」と呼ばれるジャンルの写真だ。
時代は19世紀後半から20世紀前半にかけてのヨーロッパ。
急速に都市の近代化が進行する中で、消えゆく街角や生活風景などを
7人の写真家が独自のスタイルで記録している。

当然のことながら写真はすべてモノクロームだ。
霧に煙ったようなロンドンの路地やパリの猥雑な裏通りの情景が
まるで「風俗画」を覗きこむような迫真のリアリティーで立ち現われる。

「ストリート・ライフ」だから写真の主役は都会の片隅で生きる名もなき庶民たち。
娼婦や路上の物売り、失業者、子守りの老婆、肉体労働者やヒロポン中毒の男・・・
あらゆる階層のあらゆる人々が登場する。



美しいだけの風景写真や奇をてらったような芸術写真は苦手だが
いわゆる「ストリート・フォト」と呼ばれるドキュメンタリー写真はワクワクする。
そこにはつねに「驚き」や「発見」がある。
アラーキーこと荒木経惟のフォト・パフォーマンスにはいつも舌を巻くし
パリの若者を活写したエルスケンの「セーヌ左岸の恋」は写真集を買い求めたほどだ。





展覧会の中では「農村風景」がとくに面白かった。
大都会の暮らしとはまったく異なった濃密な「生活感」が写真に横溢している。
言うまでもなく写真の第一義は「記録性」だが
近代化の中で取り残されていく農村の貴重な記録は写真遺産とも呼ぶべきものだろう。
大地に踏みとどまろうとする逞しい農民たちの姿に珠玉の人間ドラマを感じた。

これは農家の青年たちの正装したお出かけ風景。
教会のミサに出かけるのか、それとも友人の結婚式でもあるのか
とってもいいなあ・・・と、しばらく見入ってしまった。