まろの公園ライフ

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懐かしき珈琲店で

2013年02月18日 | 日記

東京・表参道。
246沿いの古いビルの二階にその店はあった。

1975年創業の「大坊珈琲店」は
あの村上春樹や向田邦子も通った有名店だそうである。
恥ずかしながら取材の待ち合わせ場所に指定されて初めて知った。

店内はまさしくレトロの世界。
青山通りの喧噪がウソのような静寂が漂う。
最近はこういう「ちゃんとした喫茶店」がめっきり少なくなったせいか
カウンターに座った途端に懐かしい気分になる。

いい感じのコーヒーカップか並んでいるなあ・・・
私はコーヒー通ではないが、仕事柄、一日に何杯もコーヒーを飲む。
根がガサツだから大ぶりのマグカップで、委細構わずガブガブと飲むのだが
時にはちゃんとしたカップで飲みたいと思う。



コーヒーは客が豆と水の量を指定して注文する。
馴染みのないシステムなので面食らってしまったが
店主の奥様が親切にアドバイスをして下さり、中ほどの20g100ccで注文。
何やら一仕事終えたような気分でドッと疲れてしまった(笑)



ご主人が丁寧に豆を挽いてコーヒーを淹れる。
いわゆる「ネルドリップ方式」というやつで、いい香りが立ち昇って来る。
ああ、これぞコーヒー文化だなあ・・・などと思う。

灰皿も真鍮性でいい感じである。
思わず持って帰りたくなってしまったけれど・・・

そして、コーヒー到着。
ちょっとぬるめだが、コーヒーが一番美味しく感じる温度だそうだ。
一瞬苦く感じるか、ゆっくり飲むとスーッと苦味が消えて、甘みのような後味が残る。
うーん、なるぼどなあ・・・などと、もっともらしい顔で味わう。

店内に一枚の絵がかけてある。
タイトルは画家・牧野邦夫の「大坊珈琲店の午后」。
実は担当する美術番組で牧野邦夫の作品を取り上げることになり
この絵のモデルとなった女性と待ち合わせたのである。



若々しく、いかにも理知的な女性が
真っすぐ正面を見据えてコーヒーを口に運んでいる。
横のカウンターには何やら得体の知れない奇怪な客たちが談笑している。
写実と幻想が入り混じった「白昼夢」のような不思議な絵である。
モデルの女性は牧野邦夫の奥様である。
10年以上も牧野のモデルをされ、彼の死の直前に結婚されたと言う。



二時間近くも話を聞いた。
牧野邦夫という画家の凄さがヒシヒシと伝わって来た。
お二人の関係は夫婦というより「大切な人生のパートナー」であったらしい。
画家とモデルの「絆」というもの凡人には窺い知れぬものがある。
最後にまた馬鹿なことを聞いてしまった。

  「牧野さんを男として見たことはなかったのですか?」
  「そうねえ。死ぬ間際の痩せた顔を見て、ああ、いい男だなあ・・・と」

その一言が今も心に残っている。

 


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
いつもながら (tsujipu)
2013-02-18 15:03:12
よいお仕事をされてますね。
うらやましいかぎりです。

喫茶店も魅力的ですが、
砂糖とミルクをガバガバ入れる客は
門前払いされそうで敷居が高いです。
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いつもながら (まろ)
2013-02-18 15:10:35
tsujipu様
皮肉のこもったあたたかいコメント、ありがとうございます。(笑)
なかなか落ち着いた雰囲気の喫茶店でよかったのですが
煙草をプカプカふかす客は嫌われそうで敷居が高かったです。
まあ、一応、灰皿はありましたが、雰囲気が・・・
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知りませんでした、 (ヒガシ。)
2013-02-18 15:24:26
この喫茶店。
メニューの値段を見て、「高い!」と思ってしまう自分は、あまりにもスタバ的カフェに飼い慣らされているのでしょうか。
モデルと画家の関係……面白いですね。
はやく番組を拝見したいです。
中川一政も面白かったよ!
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有名店ですから (まろ)
2013-02-18 15:35:23
ヒガシ。様
てっきり常連ではと思いましたが、ご存じなかったですか!
料金に関しては、この界隈にすれば比較的安いのでは?
銀座あたりだとコーヒー1杯1000円の店もザラですからねえ。
中川一政、ご視聴ありがとうございます。
モデル雇って絵でも描こうかな・・・(笑)
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懐かしい (Unknown)
2019-06-24 21:45:42
いい店でした
灰皿は南部鉄器ですね
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Unknown (まろ)
2019-06-25 03:15:49
そうでした。
すべてが渋くて洗練された店でした。
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