まろの公園ライフ

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まろの歌会始

2012年01月16日 | 日記

先週、皇居で「歌会始の儀」が執り行われた。
時々、遊び半分で俳句のまねごとのようなことはするが
私自身は短歌の知識も素養もまったくない。
ただ、実家の母が長年「秋桜」の同人で歌をつくっていた関係で
毎年、正月が来ると「今年はどんな歌が選ばれるのだろう・・・」ぐらいの関心はある。

「歌会始の儀」は14世紀の頃から続いている宮中の伝統行事だと言う。
天皇・皇后両陛下に皇族方、一般の入選者からも10人が招かれ
伝統にそって古式ゆかしく執り行われる。
今年の応募は全国から1万8000首あまり、うち海外からは21ヶ国、158首だった。

もう何十年も前のことだが・・・
歌会始のお題が「桜」だった年の入選作を今も不思議に覚えている。

  盲しいゆく われの眼にこの春の 最後の桜 おぼろに白し

難病にかかった作者が日に日に視力が衰えていく中で
桜が見られるのも今年が最後かも知れないという哀切を詠んだ一首だ。
私の母も盲人だけに、その思いが痛いほど伝わって来た記憶がある。

今年の歌会始のお題は「岸」だった。
海にしろ川にしろ、その岸辺にはさまざまな情景やドラマが浮かぶ。
私が大好きな石川啄木の歌にこんなのがある・・・

   やはらかに 柳あをめる北上の 岸辺目に見ゆ 泣けとごとくに

世に認められず、東京で不遇の日々を送っていた啄木は
故郷・岩手県の盛岡を流れる北上川の青々とした柳に望郷の思いを綴った。

天皇陛下は東日本大震災の被災地・岩手をご訪問された際
上空のヘリコプターから初めて見た津波の被害の甚大さを歌に詠まれた。

   津波来し 時の岸辺は如何なりしと 見下ろす海は 青く静まる

すさまじい津波の被害がウソのような、青く静まりかえった海の美しさが哀しい。

天皇陛下は体調が悪いのにも関わらず
震災以降、何度となく被災地に足を運ばれ黙とうを捧げられた。
各地の避難所を訪ねて被災者を励まされた。
以前、このブログにも書いたのだが、陛下のこんなお言葉が今も印象に残っている。

  「これからは被災者の方々の心に寄り添って生きていきたい」

心に寄り添う・・・という深いやさしさや共感を私も持ちたいと思う。

一般の入選者の歌にも震災や津波を詠んだものがいくつかあった。
中でも福島県の沢辺裕栄子さんの一首が心に残る。
福島の浜通りはすべて津波に洗い流され壊滅的な被害を受けた。

   巻き戻す ことのできない現実が ずっしり重き 海岸通り  (沢辺裕栄子)

   相馬市の 海岸近くの避難所に 吾子ゐるを知り 三日眠れず (山崎孝次郎)

   ほのぼのと 河岸段丘に朝日さし メガソーラーはかがやき始む (小林勝人)

今回の原発事故が日本のエネルギー政策を根本から見直す契機にして欲しい。
そんな思いもこめられた、希望にあふれる歌だと思う。

という訳で・・・私も新春恒例(?)の「ひとり歌会始」をしてみた。
去年の秋、新座市の「野火止用水」のほとりを散歩した。
その時、川べりのお地蔵さんの慈愛あふれる立ち姿がとてもよかったので・・・

  川岸に 花あたらしき仏あり 被災地を思い 手を合わせ行く  (杉作)

今年こそは平穏な年であって欲しいと思う。