まろの公園ライフ

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世界遺産と餃子

2012年01月08日 | 日記

世界遺産・日光東照宮。

以前から「東照宮を生で見たい!」という息子の希望で
那須旅行の帰りに足を延ばしてみた。
昨年、私が担当する美術番組で東照宮の陽明門を取り上げたのだが
それを見て以来、日光東照宮訪問が悲願となったらしい。

一の鳥居をくぐって山内へ。
樹齢500年の杉の古木に囲まれた境内は深閑としている。
この日はとにかく厳しい底冷えでじっとしていると身奮いするほどだった。

入り口近くにあるのが有名な三猿の彫刻。
「見ざる、言わざる、聞かざる」は猿の世界に例えた子供への教えだと言う。
しかし、そういう人生の「傍観者」のような教えはいかがなものか・・・(笑)

ちゃんと手を清めてから参拝するのだぞ。

国宝の日光東照宮「陽明門」。
いつ来ても壮麗な建築美にはただただ圧倒される。
江戸幕府の開祖・徳川家康が「東照大権現」、つまり神として祀られている。
戦国武将としての家康にはさまざまな功罪、毀誉褒貶が伴うが
戦乱の世を平定し、徳川300年の安寧をもたらした偉大なリーダーではある。
息子・秀忠が建てた東照宮は今よりかなり質素なものだったが
三代将軍・家光が大改修を命じて現在のきらびやかな陽明門に生まれ変わった。

陽明門には大小500もの彫刻がビッシリと隙間なく施されている。
私のポンコツデジカメではなかなか迫力が伝わらないけれど
想像上の霊獣や中国の説話上の人物などまさに彫刻のワンダーランド。
その意匠の素晴らしさは「絢爛豪華」と言うしかなく、思わず言葉を失ってしまう。
デザインを手がけたのは江戸を代表する絵師・狩野探幽。
一日見ていても飽きないことから「日暮らしの門」とも呼ばれる。

回廊の軒下にも極彩色の彫刻がこれでもかと施されている。
建築家ブルーノ・タウトはこの「俗っぽさ」を日本美の堕落と痛烈に批判したが
俗もここまで徹底すれば「聖」につながるのではないか。
自慢ではないが私も「俗っぽさ」では人後に落ちないからなあ・・・

陽明門の滞在はすでに一時間以上。
とにかく寒くて何度も促すのだが息子はなかなか帰ろうとしない。
名残り惜しそうに何度も陽明門を振り返る。

  「おーい、もういい加減にしようよ。風邪ひくから」
  「お願い、もうちょっと。もう一回、目に焼きつけて来るから」

そう言うとまた駆け出して行った。
オヤジはその姿を震えながら見送り、思わず鼻水をすする。

震災後、と言うか原発事故以後、日光を訪れる観光客も激減したと言う。
しかし、この日を見る限り、かなり人出は戻って来たように思えた。
何より外国人の姿が目立って来たのが希望だ。
東北の観光地もこうであって欲しいな、と心から思った。

日光を後にして宇都宮へ移動。
JR日光線は「手動扉」の懐かしいローカル列車。
憧れの東照宮参拝で疲れ果てた息子は温かい車内で爆睡となった。

そして、旅の締めくくりはやっぱり餃子だ。
宇都宮餃子は大きくて、ジューシーで、リーズナブルで、いつ食べても感動する。
この大皿をペロリと二皿平らげてしまった。
世界遺産と餃子という「聖と俗」の組み合わせはなかなかのものだった。