まろの公園ライフ

公園から世の中を見る

マイペース

2012年01月23日 | 日記

ひと月以上も雨がなくてカラカラだった東京に
久しぶりに雪やみぞれが降って乾燥注意報も解除された。

公園の街路も木立もしっとりと濡れている。
湿度があるせいか走っていても呼吸がとても楽だ。
まさに「慈雨」と言うべきか・・・

トコトコとマイペースで走る。
誰かが追い越して行っても我関せず、あくまでもマイペースでトコトコ。
見ようによってはトボトボと映るかも知れないが気にしない。
ジョギングを始めてもうずいぶんになるが
最近、ようやく自分のペースがつかめて来たように思う。



公園を走っている人もそれぞれ独自のペースがあってまさに千差万別だ。
ものすごいスピードなのに涼しい顔をして走る人もいれば
私とどっこいどっこいなのに身も世もないといった苦悶の表情で走る人もいる。
そんなに苦しいならやめたら・・・と気の毒になる。

若者ランナーが軽快なスピードで私を追い抜いていく。
「フン、勢いで通用するのは若いうちだけだからな」と憎まれ口を叩いてみる。
でも、ちょっと悔しい。思わずスピードを上げるがすぐに苦しくなる。
マイペースと言いつつも、要するに「根性無し」なのだろうか。
そのせいで常に人の後塵を拝し、人生は早くも周回遅れの体たらくだ。

先日、本年度の芥川賞が発表になった。
この時期、月刊誌に掲載される受賞作を買って読むのが恒例なのだが
最近は買っても読まずじまいということが多くなった。
石原慎太郎氏が言うほど「バカみたいな作品ばっかり」とは思わないけれど
確かに圧倒されるようなインパクトを持った受賞作が減ったと思う。
読後感も「うん、なるほど、そうか」と想定内の感想しか浮かばないものが多い。

この人の「不機嫌さ」がずいぶん話題になっている。
田中慎弥さん、39歳。
考えてみればこの人もかなりの「マイペース人間」ではなかろうか。
何度も受賞を逃し、五度目の正直で芥川賞に輝いた。
「私がもらって当然」「もらっておいてやる」などという発言を
傲慢、不遜、大人げないと非難するムキもあるがそうだが
私は久々に面白い人が出て来たなあと思った。
だいたい小説家にはそういうシニカルなタイプの人間が多いし
テレビ向けの「いい子ばっかり」が多い昨今、いっそ爽やかな印象さえ持った。

郷里の下関で母親と二人暮らしだと言う。
高校卒業後、一切の職業にはつかずに小説を書き続けて来たと聞く。
そこに浮かぶのはいかにもひ弱な「文学青年」の典型だが
それでも書き続けて来たということは、生半なことではないと思う。
社会経験がなくて本当の小説が書けるのか・・・などという指摘もあるが
そんなことは関係ない、要はイマジネーションの問題なのだから。



この受賞によって田中さんの人生の環境は激変する。
それにとらわれることなく「マイペース」で書き続けられるかどうかが勝負なのだろう。
あまり食指をそそられない「タイトル」だけれど(笑)
書き手が面白そうなので久しぶりに受賞作を読んでみようかなと思う。

若い女性の一団が軽やかに走って行く。
私は相変わらずトコトコ、トボトボ。
私にとって「人生のマイペース」とはどんなスピードなのだろう。
このままでいいのか、それとももっと焦るべきなのか・・・
心は千々に乱れるのであった。