6月 9日

　　　　　　　　　　　　　　（　　睡蓮、未草　　）




石臼に今朝一輪のひつじぐさ　　　　　　　　　　　　　栗田やすし



睡蓮や花の真下の水の闇 　　　　　　　　　　　　　　　八幡より子



睡蓮や鯉の分けゆく花二つ 　　　　　　　　　　　　　　松本たかし



睡蓮や目立の音に甕坐る 　　　　　　　　　　　　　　　秋元不死男



睡蓮の花閉ぢてより夕長し　　　　　　　　　　　　　　　上杉美保子



漣の吸ひ込まれゆく未草 　　　　　　　　　　　　　　　　西村和子



すいれんの池にひき鳴き雨誘ふ　　　　　　　　　　　　　細見綾子

6月 8日

　　　　　　　　　　（　　紫陽花、四葩、七変化　　）




寺町が晩学の宿濃紫陽花　　　　　　　　　　　　　　　栗田やすし



紫陽花を挿す雨粒をそのままに 　　　　　　　　　　　　木内怜子



紫陽花や割れんばかりに遊戯室 　　　　　　　　　　　　高瀬あけみ



七変化白磁に挿して華やげり　　　　　　　　　　　　　　江口たけし



紫陽花や夢の男の嗄れ声 　　　　　　　　　　　　　　　夏井いつき



風立ちて毬のをさなき四葩かな 　　　　　　　　　　　　遠藤悠紀



雨女認めぬ友よ濃あぢさゐ　　　　　　　　　　　　　　　小島千鶴




☆　紫陽花＝集真藍（あづさあい〉・「あづ」は集まるの意　
・「さ」は意味のない接頭語　・「藍」は青の意

6月 7日

　　　　　　　　　　　　　　　（　　梅雨　　）



梅雨の傘摩文仁の丘に来てたたむ　　　　　　　　　　　栗田やすし



金魚田の時々光り梅雨の闇 　　　　　　　　　　　　　川瀬孝子



梅雨鴉一声鳴いてそれつきり　　　　　　　　　　　　　下里美恵子



ひとの句が心占めをり梅雨入前 　　　　　　　　　　　　林　翔



風呂場まで鵜の匂ひくる梅雨の闇　　　　　　　　　　　栗田せつ子



ジャスミン茶匂ひ濃くあり梅雨曇 　　　　　　　　　　　高部純子



入梅や運河に揺らぐ常夜灯　　　　　　　　　　　　　　　武藤光晴



一隅に夜学教師の梅雨の傘　　　　　　　　　　　　　　　沢木欣一

6月 6日

　　　　　　　　　　　　　　（　　青葡萄　　）




婚近き教へ子と食ぶ青葡萄　　　　　　　　　　　　　　栗田やすし



子にだけは唄ふ父なり青葡萄 　　　　　　　　　　　　能村研三



青葡萄雲の湧き立つ甲斐盆地 　　　　　　　　　　　　　市橋 進



不揃ひにはじく雨粒青葡萄 　　　　　　　　　　　　　　小野とみゑ



アルプスの風に粒立つ青葡萄　　　　　　　　　　　　　豊田紀久子



青葡萄しだるる隙に湖の紺 　　　　　　　　　　　　　　佐野美智



青葡萄一房ごとに影やどす　　　　　　　　　　　　　　牧　啓子




☆　3日土曜日の散歩に転倒、痛みがとれずに整形医へ・・・左肩剥離骨折　楽しみの散歩であるに情けない
　　写真は赤塚にある東京大仏下の葡萄棚　　
　　掲句いずれもみずみずしい　涼感と確かな景色は読者に伝わる

6月 5日

　　　　　　　　　　　　　　　（　　立葵　　）




峡深し墓をいろどる立葵　　　　　　　　　　　　　沢木欣一



夕刊のあとにゆふぐれ立葵 　　　　　　　　　　　友岡子郷　



立葵染屋に古りし糸秤　　　　　　　　　　　　　　武田稜子



にはとりの疾駆一瞬立葵 　　　　　　　　　　　　　正木ゆう子



立葵七彩に咲く婚の朝 　　　　　　　　　　　　　　藤本朋子



立葵子等が背くらべして通る　　　　　　　　　　　宇佐美こころ

6月 4日

　　　　　　　　　　　　　　　　　（　　母子草　　）




特攻の碑裏に小さき母子草　　　　　　　　　　　　　栗田やすし



石仏の嘆き聞く日ぞ母子草 　　　　　　　　　　　　　秋元不死男



猫の眼の高さに咲けり母子草 　　　　　　　　　　　　西園寺明治



すりきれし紙の踏絵や母子草　　　　　　　　　　　　　矢野孝子



母子草跼めば影に入りにけり 　　　　　　　　　　　　ながさく清江



母子草母となりても母恋し 　　　　　　　　　　　　　宮尾 寿子

6月 3日

　　　　　　　　　　　　　　　　（　　茄子の花　　）



風呂敷を抱へ僧来る茄子の花　　　　　　　　　　　栗田やすし



裏庭に茄子の花咲く駐在所　　　　　　　　　　　　野島秀子



鍵のない村の明るい茄子の花 　　　　　　　　　　　吉田不可止



妻呼ぶに今も愛称茄子の花 　　　　　　　　　　　　辻田克巳



茄子咲くや道より低き藍染屋　　　　　　　　　　　小田二三枝



茄子の花巧言令色滅ぶべし　　　　　　　　　　　　沢木欣一

6月 2日

　　　　　　　　　　　　　　　　　（　　額の花　　）



額の花ひすいの花粉葉にこぼれ　　　　　　　　　　　沢木欣一



母よりの便りつづけり額の花　　　　　　　　　　　　栗田やすし



厨にも妻の書架あり額の花 　　　　　　　　　　　　町田しげき



ピアニストからの葉書や額の花 　　　　　　　　　　仙田洋子



いつまでも一人娘や額の花 　　　　　　　　　　　　　柴原保佳



犬をりしあたりのうごく額の花 　　　　　　　　　　　矢口由起枝

６月 1日

　　　　　　　　　　　　　　（　更衣　）



脱ぎ捨てゝ冥途姿へ更衣　　　　　　　　　　　　　沢木欣一



マネキンの赤きサンダル更衣　　　　　　　　　　　岸本典子



やはらかき手足還りぬ更衣 　　　　　　　　　　　　野沢節子



神官の白から白へ更衣 　　　　　　　　　　　　　　板谷芳浄



更衣百歳の腕通したる 　　　　　　　　　　　　　　大串 章



野良着にも好みを通す更衣　　　　　　　　　　　　　内田陽子