海山の創作ノート

工房T 海山の書、印、絵、版画、工作、etc.日々の暮らしの中で出来た作品を紹介します。 さて、今日は何を作るかな。

No.337 旅行記 「山頭火を求めて」 日奈久その3

2009-02-06 | その他

山頭火の石碑


まさにあふれる湯


● この小さなエリアに、温泉旅館がなんと16軒もある。他にも、温泉センターは改築事中で見ることはできなかったけれど、共同浴場が3つ、「東湯」「西湯」「松の湯」がある。
パンフレットによれば「温泉センターを中心に円を描いてみると60メートル以内に7つ、60から100メートルの範囲に4つ、100から200メートル以内に5つ、合計16の泉源が、まさに一極集中している。温泉天国」とある。そして、すごいことに、どの温泉旅館でも立ち寄り入浴ができ、しかもほぼ掛け流しの湯なのだ。(温泉旅館16軒のうち15軒が掛け流し状態)「金波楼」というとても名高い旅館もある。(温泉の風情を味わうのにうってつけの宿、黒木瞳さんを起用したコマーシャルでも登場したらしいが、「日奈久」の名が出なかったそうで、そのことを地元の人は怒っていた。)
泉質は弱アルカリ単純泉。リウマチ、神経痛、創傷などにきくという。飲用もできる温泉だ。

 特に全部回ってみようなどとは思わなかったけれど、知らず知らずのうちに気づけば国道のこちら側は全部まわってしまった。それほど温泉旅館は密集している。共同浴場、ちくわ屋、竹細工屋、お土産屋、観光案内所、えびすさんの祠、などを見ながら、腹ごなしの散策の最後に、山頭火句碑の写真を撮り、飲用の温泉水を飲んで、いざ温泉へ。
ラーメン屋さんのお薦めに従って、○○○旅館へ。重厚な引き戸を開けて広い玄関で入浴をお願いした。案内された浴場には脱衣場の仕切りがない。二段の棚に脱衣籠が6個。さほど広くもないが、一段下りればもう溢れる湯だ。なんと消火栓から出るように、鯉の形をした彫刻からお湯がどーっと噴き出している。湯船からあふれ、洗い場は常に湯が流れている。豊かな湯だ。しかも、この湯を独り占め。何が気持ちいいかといえば、こんなに溢れる湯を一人で使うこと、これにまさるものはない。露天でもないし、造りが凝っているということでもない。一人で独占するということが今までになかったわけではない。しかし、こんなに豊な気持ちになったのは始めてだ。
約30分、至福の時を堪能した。ほどよく、次の方が入ってこられてので譲った。
帰りに、宿の主人に話を伺った。39.5度でそのまま湧き出し、湯船は20分ほどで全ての湯が入れ替わってしまうという温泉のこと、まだ50年しか経っていないという建物のこと、そして山頭火のこと。「うちの爺さんが知っていたが、ホイトウだ。きれいごとばかり言っている。」と少々批判的。山頭火が泊まったという「織屋」の場所を尋ねたら、「元はうちの夏の家だったのを宿屋に売った」と言うのだ。
 というわけで、あっさり織屋の場所もわかったので、早々に宿を後にした。「ホイトウ」という言葉が、喉にひっかかった魚の骨のように気になったが、それも事実、そんな見方もある、と気を取り直して迷路の中にまた入っていく。しかし、もはや迷路ではない。地図が正確、案内もしっかいしている。なんといっても限られた地域だ。迷うことはない。