仏壇販売人、ぶつぶつ日記

山口県の隅っこから
仏壇販売人のたわ言、繰言、独り言。
ほぼワタクシごと、たまにお仕事。

八臂弁天

2007-10-07 13:52:59 | 仏事のあれこれ

この写真だけを見て、何の仏様か言い当てたら

けっこうマニアかも。

実はこれ、「弁財天(弁才天とも表記します)」です。

ただし、通常の琵琶を抱えた姿ではなく、8本の手(八臂)を持っています。

実はこのお姿の弁財天は「金光明最勝王経」の記述を元にしたお姿です。

 

仏像自体はかなり傷みが激しいのですが

本来ならば弓・刀・斧・羂索などの武器を持っていたものと思われます。

今では弁天様といえば「財」とか技芸の神様とされていますが

もともとは水に関わる神。水は農業に欠かせないことから

豊饒をもたらす農業の守り神とされていたようです。

また、写真の弁天様にはありませんが、

頭の上に鳥居や白蛇をのせた形の弁天様もあります。(山口県の某お寺様に・・)

やはり八臂なのですが、そういうお姿の場合は「宇賀弁天」と呼ばれることもあります。

「宇賀」とは「宇賀神」のことでウィキペディアによると

宇賀神(うがじん)は、日本で中世以降信仰された民間信仰である。

神名は日本神話に登場する宇迦之御魂神(うかのみたま)に由来するものと考えられ(仏教語で「財施」を意味する「宇迦耶(うがや)」に由来するという説もあるが、少数派である)、元々は宇迦之御魂神と同様の穀霊神・福神として民間で信仰されていた神であった。

ということで、仏教に取り入れられて弁天とくっつけられた、ということです

ちなみに弁天様にはその手足となって働く十六童子と呼ばれるお付がいます。

この写真の弁天様の場合は一緒に十六童子も厨子におさまっている、という

珍しい形になっています。

 


「みぞさらえ」の加持

2007-10-05 14:06:13 | 仏事のあれこれ

昨日お手伝いに行ったお寺では「みぞさらえ」というお加持が行われました。

「加持」というのはいわゆる「加持祈祷」。

きゅうりに託して夏の身体健康を祈る「きゅうり加持」とか

土に託して家内安全を祈る「土砂加持」など様々なものがありますが、

昨日のものはちょっと違う。

 

写真のようにお寺のお堂の下にちょっとした「地下通路」があります。

そしてそこには四国八十八箇所と西国三十三観音のお砂が用意

されています。

この点は簡易霊場めぐり、とも言える「お砂踏み」とほとんど

同じです。

そして、お参りの人は

それぞれに自分の名前を書いた護摩木を持って、これらの砂の上をめぐり、

やはりその地下の回廊の一部に設けられた壇の前で

お加持を受けるのです

真っ暗ではないので少し違うけれど、薄暗い通路を歩くさまは

善光寺の「お戒壇巡り」を連想してしまいました。

 

ところで、何故、「みぞさらえ」なのか?

ご住職によると、語源はやっぱり、町内の清掃活動、「溝さらえ」。

「溝の泥をさらえてさっぱりするように、

 身内の悩みや心の汚れ、あるいは罪をきれいにさらえてさっぱりしましょう」

ということだそうです。

 

地下の回廊はなんとなくそれだけで「異空間」という感じで

お参りに来られた皆さんは大変満足されていたようです。

 

 


ボキャブラリーが問題です

2007-10-03 13:50:07 | 本音

これは金仏壇です。

上質の金箔張り。猫戸は金粉蒔絵で豪華です。

また、障子紗は花柄が織り込んであり、華やかさもあります。

一方ランマは宗紋入の筬ランマ。シンプルなつくりです。

 

・・とまあ、こんな感じでお客様に説明することになるでしょうか。

でも、これじゃあどの程度印象に残るかは疑問です

そこでボキャブラリーが必要になるわけです。

一言に「豪華」といっても「豪奢」「壮麗」「絢爛」等々の類義語があります。

どういう言葉を使えば一番お客様の気持ちにぴったりくるか?

頭の引出を総動員することになります。

 

とは言え、頭の引出なんてあっという間に棚卸し出来てしまう程度の

在庫しかありません。

あとは日々ひたすら新しい表現を仕入れることに

これ、あい努めることになるのです。

あれこれ読み漁り、「これは」という表現を3つ覚えて2つ忘れ、

いざ使おうと思ったら、最後の一つが出てこない・・・・。

哀しい中年世代なのでした。

 

余談ながら、新聞の芸術評の記事の表現は

我々のような「工芸品」に近いものを扱うものには大変参考になります。


墨蹟の楽しみ

2007-10-02 13:49:57 | 商品のこと

当店では掛軸(床軸)も扱っています。

「南無阿弥陀仏」とか「南無釈迦無尼佛」とか所謂名号というものです。

仏事の時に床の間にかけます。

当店で取り扱っているのは1万円以下の印刷ものから

10万円前後の若い書家、それよりも高くなるベテランの書家

それに、各地の僧侶の手による「墨蹟」など様々です。

 

そして、掛軸をお求めになるお客様はあれこれ吟味して「この一点」というものを

選ばれるわけです。

でも、選択の基準は様々。「字が好き」というのはまぁ一番の基準ですが、

「価格」はもちろん、「表装」とか「うちの床の間の壁の色に合いそうだから」

などという理由もあります。

 

さて、写真の掛軸。

立派なものなので「秘蔵っ子」として

しまいこまれていたこの掛軸。

浄土宗の本山、「知恩院」の中の「先求庵」というところのご住職、

奥瑞譽 師の手によるものです。

ごらんの通り、堂々たる書です。

これだけでも、浄土宗のお客様に喜ばれる、とおもうのですが

さらにすごいのがこの表装。

本金糸を使用した、中回し部分にはなんと

ほら、「月影杏葉」「三つ葉葵」

浄土宗の宗紋が!!!

一般に「六字名号」の掛軸は浄土宗とともに浄土真宗本願寺派でも

使用されるので、六字名号であればどちらの宗派の方が購入されても

大丈夫、というものが多いのですが、

この軸は浄土宗オンリー。

熱心な門徒さんにはたまらない逸品です。