「暑さ寒さも彼岸まで」とはよくぞ言ったもので、
昨日までの残暑が一転、すっかり涼しくなった本日です。
まあ、曇り加減のお天気のせいかも知れないけれど。
読書の秋、食欲の秋、なんてわけでもないけれど
最近読んだのは「幕末単身赴任 下級武士の食日記」
(青木直巳 著 生活人新書)という本。
幕末に紀州藩の江戸屋敷に単身赴任してきていた
酒井伴四郎という下級武士の詳細な日記から
当時の食生活を見てみよう、という内容。
・・・・・と、言ってしまえば「な~~んだ」ってなモノですが、
読みやすく噛み砕いた著者の力量ではありましょうが、
これが何とも面白い。
「男子厨房に入らず」なんて言ってられない単身赴任。
鍋や調理器具を少しずつ買い集め、
安い材料をあれこれ使いまわしたりしている若い武士の姿が
生き生きと浮かんできます。
「今日の料理はよく出来た」と得意になってみたり、
同僚である同居人の料理下手をぼやいてみたり
なんとも人間くさくて微笑ましい限り。
登場する料理や食材も現代に共通するものや
今では考えられないもの、現在の形の原型と思われるもの、など
バラエティに富んでいます。
日記の当事者、「酒井伴四郎」が何かにつけてちょっと一杯やっているのも
ご愛嬌。
節句などの行事食もこまめに語られており、
我が身を振り返って
「そういえば、このところ季節の行事を意識することもなかったなぁ・・・」なとど
反省させられることもあります。
それにしても、この「酒井伴四郎」の日記は他にも研究者によって
解釈されたり分析されたりしています。
かなり詳細に書かれた日記のようですから
幕末の生活を知るためのよい資料なのでしょう。
伴四郎というひとは器用に料理をこなしたりしているところからも
うかがえる通り、かなりマメな人だったのかもしれません。
この日記の書かれた万延元年(1860年)に28歳だった伴四郎。
その後の消息は不明ですが普通に生活していれば
明治の半ば過ぎくらいまでは存命だったはず。
自分の日記がこれほどの人に読まれ、自分の名前が活字になって
飛び交う、なんて想像だにしなかったでしょうねぇ・・・・。