モーテルズの多くを知っているわけじゃないが、なじみ深いバンドで、ヒットした曲は未だに古くならず輝きが失せない。
彼らの曲は、まるで昨日のことのように、よく聞くことができる。
呑んじゃいけないお湯割りをちびちびと隠れて呑みながら聞いていると、場末酒場のカウンターみたいに思えてくる。
演歌をバックに痛飲している呑み助おやじの姿よろしく「もーてるずは、やはりええねぇ~」などと独りつぶやき、深々と目をつむる。
モーテルズには、そんな夜が似合っている。
初めて彼らに出会ったのは1982年初夏。
土曜夜、小林克也さんの「ベストヒットUSA」にて。
大きくヒットした「オンリー・ザ・ロンリー」「想い出のラスト・サマー」はEPレコードまで持っている。これからの初夏には良い。
21世紀に入って出た彼らのベスト盤CDも買ったが、繰り返し聴くのはヒット曲2曲ばかり。1回聴くと何回でも繰り返し聴きたくなる。
ヴォーカルのマーサ・ディヴィスはなぜ泣いているんだろうか?
なぜ目が真っ赤なんだろうか?
ジャケットに映る彼女の目。
意図して真っ赤なのか?
それとも、コンタクトが合わないのか?
出会った当時も、今も、ジャケットを見ては、そんなことを思う。
大きな目が印象的な大柄のグラマラスで艶っぽい女性。
情熱的に感情を吐き出す歌い方と声は、外見の印象同様とても魅力的で惹かれる。
今日気付いたのは、桃井かおりさんのけだるい感じをマーサ・ディヴィスに重ねていたこと。
桃井さんは「男たちの旅路」の頃から今まで好きな方だが、雰囲気がよく似ている。
モーテル、というと、アメリカの何もない1本道のわきにぽつんと建っている安宿。
というイメージが脳裏に浮かぶ。その道にはヒッチハイクをしている人がいる。
このモーテルという言葉は小さいころ妙になまめかしく、ラブホテルよりも隠微な響きに聞こえた。
そして、それらが有る地域は「きっと」京浜東北線や常磐線といった、都内山手線区内からはずれに向かって反れていく経路にある場末の歓楽街に違いない、という思い込みだった。
東京の貧しい下町で生まれ育った少年にとって、夜の国鉄の車窓からまたたくネオンライトはそういった連想を抱かせた。
モーテルズ、とはよく付けたバンド名だ、とつくづく思う。
■The Motels 「Only The Lonely」1982■
余談:モーテルという言葉から、急に映画の1シーンを想い出した。
「サンセット・モーテル」という映画で、内庭のプールでサングラスをして横たわる水着女性の姿。
90年代の初め、デヴィッド・リンチのドラマ「ツインピークス」のオードリーに夢中で、彼女が出演した作品を探している中でたどり着いた映画だった。