認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

アルツハイマー型認知症の予防と注意分配機能の活性化(Bー53)

2016-02-01 | アルツハイマー型認知症の予防と脳の活性化

 

 機能落ち 過ぎゆく世界 気づかずに

    話した筋は どこへやら消え  By kinukototadao

   

(プロローグ)

 時間だけは有り余る程有るのに、することが無い毎日。一言で言ってしまえば、それがあなたの「第二の人生」。朝は遅くまで床に伏せっていて、朝食を終えたら、新聞を拡げてめくるだけ。お昼の食事を終えて少し時間が経ったらお昼寝をむさぼり、夕食を摂ったら水戸黄門を観る。太陽が東から出てきて西に沈んでいくように、同じことの繰り返し。今日も昨日と同じように日が暮れていった。追及すべきこれと言った「テーマ」もなく、期限を切って達成すべき目標となるものもなく、時が経過していくだけの日々。何の為にこうした毎日を送っているのかと、あなたは、自分の心に問いかけたことがありますか。自分はこの先、何を求めてどのように生きて行けば良いのか。考えれば考える程分からなくなってくるのが、「第二の人生」の生き方なのです。何しろ、「仕事」とは、無縁の日々なのだから。

「60歳」の声を聞くと間もなくお迎えが来てくれていた一昔前の人達と違って、誰でもが「80歳とか90歳」とかまでも生きる超高齢化社会の真っただ中に生きる私達にとって、第二の人生だけでも20年とか30年とか、人によってはそれ以上の長きにわたって、生きていくことになる訳です。これから先の短くはない、「仕事」とは無縁の「第二の人生」をどのように生きて行けば良いというのか。自分なりの「第二の人生」をどのように構築していけば良いというのか。独りそれなりに悩んでみても、答えが見つからないのです。そして、気にかかることと言えば、我が身が認知症を発病することになるかも知れないということ。「介護離職」の4文字を見るにつけ、子供たちに迷惑をかけるようにだけはなりたくないと思ってはみても、どうしたら良いのかが分からない。怖いだけなのです。

せっかくの第二の人生を、早々とボケていってしまった(但し、身体だけは、極めて長期に亘って持つことになるのですが)お年寄り達を、北海道から九州まで440を超える数の多くの市町村で20年以上にわたって数多く観察してきた、私たちからの、提言なのです。どのようにして生きて行けば良いのか。どのような生き方、脳の使い方としての生活習慣を構築し実践していけば、あの恐ろしい「アルツハイマー型認知症」を発病しないで済むのか、その為の大事なアドバイスなのです。キーとなるものは、「食生活」の在り方ではなくて、或いはテレビの広告でよく目にし、耳に聞く、何とかのサプリメントの摂取とかでもなくて、脳の使い方としての「生活習慣」の在り方なのです。

    

& 「第二の人生」でのあるべき生き方と脳の使い方

 周りの誰でもが80歳や90歳まで生きる超高齢化社会にある我が国。定年を60歳か65歳で迎えるとして、第二の人生が20年も30年もあるのです。「第二の人生」を送るということは、そのことを好むと好まざるとにかかわらず、左脳が活躍の中心となる仕事とは無縁の日々を送る人生ということになるのです。残るのは、右脳と運動の脳だけになるのです。ボケとは無縁で、第二の人生を完走する為には、「前頭葉」を含む脳全体の活性化が常に求められるのです。即ち、「アルツハイマー型認知症」を発病しない為には、「身体がもつ限り脳も持たせる」ことが必要不可欠の条件となるのです。それでいて、仕事とは無縁の第二の人生では、第一の人生とは違い、「左脳」が中核となって活躍できる場が無いのです。どんな「テーマ」を見つけて、どのように実践すれば、左脳の出番が少なくても、脳全体の司令塔の役割を担っているあの「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)の機能を正常なレベルのままに保たせることができるというのでしょうか。三頭立ての馬車の御者の役割を担っているのが「前頭葉」という脳機能なのです。「三頭立ての馬車」と言いながらも、第二の人生では、「右脳」を中核とした「三頭立て」の馬車が要求されることになるのです。

    

旅行に出かけようと、美術館巡りをしようと、独りでただ忙しく出かけるだけでは、生き甲斐も喜びも獲得することは難しいのです。何かが足りないと感じるその心の隙間を、埋めることは出来ないのです。じゃあ、どうしたら良いというのか。

「テーマと目標」と言う冠をかぶせて、且つ、出来れば、我が身一人ではなくて、気が置けないお友達と一緒に、その実行自体を及び実行の過程自体を楽しむことが肝心なのです。そうした生き方、脳の使い方としての「生活習慣」を構築し実行することが、「アルツハイマー型認知症」の発病とは無縁で、「第二の人生」を完走する必要不可欠の条件となるということなのです。

あなたの周りの人達をよく眺めて、よく観察してみてください。同じように、左脳が主役となる仕事とは無縁の「第二の人生」を生きていながら、右脳や運動の脳を積極的に活用して、「前頭葉」の出番が多い日々を送ることによって、生き生きとした毎日を暮らしている人達がいるはずなのです。所謂、「かくしゃく老人」達の生き方です。その人達の生き方の特徴を簡潔に表現すれば、それは「第二の人生」を自分なりの楽しみ方で、自分なりに楽しんで生きている人達だということなのです。

必要なのは、これまでのあなたの価値観、生き方の物差しの転回なのです。第一の人生では、左脳が主役となる「仕事」と言うテーマを遂行する上で、或いは周りと比べて見劣りしない水準の生活レベルを維持するために、言い換えればあなたが生きていく為に、好むと好まざるとにかかわらず、甘んじて受け入れ、我慢して受け入れざるを得なかった諸条件、或いは諸環境について、出来るだけ脇に押しやる生き方をするのです。仕事とは無縁になる「第二の人生」を生きていく上では、そうした条件や環境を我慢することは無い、我慢しない生き方の方が、あなたの脳の健康にとっては、良いことなのです。そのことに加えて、「何事につけて、周りと自分とを比較する」という物差しを捨て去って、「自分なりに、自分らしく生きる」という第一の人生での物差しとは全く異なる物差しを掲げて生きる生き方こそが、あらゆる思考や行動の最も重要な評価規範、価値規範となるべきだということなのです(ここを「クリック」してください)。

自分らしい「テーマ」を見つけて、自分なりの「目標」を設定して、自分なりに(出来るだけ自分らしく)追及して、その過程自体を自分なりに楽しむことが大切なのです。そして、過程や結果を周りの人達のそれとは比較しないこと。要は、自分に与えられた環境を肯定して、「自分なりに生きること」、「自分らしく生きる」ことが大切なのです。そうした生き方が、脳の健康を維持する上で、不可欠の条件となるのです。自分自身の生き甲斐や喜びを得る為にも、家族にそれなりの生活をさせる上でも、第一の人生では「左脳」が中核となる「仕事」が、あなただけでなく世の中の誰にとっても、第一の関心事だったと思うのです。ところが「仕事」とは日々無縁の生活となる「第二の人生」では、「右脳」が中核となる生き方が必要となるのです。「右脳」が中核となる生き方とは、「趣味や遊びや人付き合いや運動や社会活動」の分野に、自分なりの「テーマ」を見つけることなのです。第一の人生で大活躍したあの左脳ではなくて、第二の人生では、右脳が中核となる生き方が求められるのです。その生き方によって、仕事とは無縁の第二の人生を送る中での、自分なりの生き甲斐や喜びが得られる生活が獲得されることとなり、ひいては、「前頭葉」を含む脳全体の活性化が得られる「生活習慣」の構築へとつながっていくことが出来ることになるのです。こうした生き方こそが、「アルツハイマー型認知症」の発病の予防に必要不可欠の条件となるのです。認知症全体の90%以上を占めていて、(日本だけでなく世界中の)認知症の専門家とされる人達から、発病の原因が分からないし、治すことが出来ないし、発病を予防する手立てもないとされてきている「アルツハイマー型認知症」と言うタイプの認知症は、廃用症候群に属する単なる「生活習慣病」に過ぎないからなのです。アミロイドベータの蓄積やタウ蛋白の蓄積ではなくて、更には食生活でもなくて、脳の使い方としての「生活習慣」が、「アルツハイマー型認知症」と言うタイプの認知症の発病及び症状の進行(重症化)を左右する唯一の要因だからなのです。

「アルツハイマー型認知症」の発病の原因について、学説(仮説)として、幅を利かせてきた従来の最有力説としてのアミロイドベータ説は破綻してしまいました。残された学説(仮説)は、少数説としてのタウ蛋白説だけと言う状況なのですが、この説も近い将来に破綻が確認されることになるはずなのです。「前頭葉」の機能と言う視点がなく、「記憶の障害」が中核症状だとするアミロイドベータ説と同じ考え方だからです。

そして最後に生き残るのは、発病の原因は、「前頭葉」を含む脳全体の異常で加速度的な廃用性の機能低下にあり、その源は、脳の使い方としての生活習慣に在る、すなわち、「アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する単なる生活習慣病である」と言う考え方、私たちだけが独自に主張してきた考え方に行きつくことになるのです。その時期は、2017年の春か夏頃と言い切っておきましょう。

   

& 身体が持つだけでは、生きる意味がないのです。身体が持つ限り、脳も持たせないといけないのです

○ 60歳を超えた年齢の「高齢者」だけが「アルツハイマー型認知症」を発病する(発病の「第一の要件」)

私達がこれまでに集積してきた極めて多数の症例に基づく「脳機能データ」によると、日々の脳の使い方としての「生活習慣」について特段の問題が認められない「正常な老化」の場合でも、「高齢者」と呼ばれる年代の65歳頃になると誰でも、意欲、注意の集中力及び注意の分配力の機能から構成される「前頭葉」の三本柱の機能の働き具合が、そのピーク時である20歳代の半ば頃に比べて、「半分程度」にまで衰えてきているのです。このことが、誰でもが生来的な性質として具有する「前頭葉」の三本柱の機能の加齢に伴う老化(私たちが名付ける「正常老化」の性質)の重要なポイントでもあるのです。つまり、私たちの定義では、「60歳を超えた年齢の高齢者である」という要件こそが、「アルツハイマー型認知症」を発病する「第一の要件」なのです。言い換えると、60歳を超える年齢に達しているお年寄りは誰でも、「アルツハイマー型認知症」と言うタイプの認知症を発病するリスクを抱えているということになるのです。

そして、「前頭葉」の三本柱の機能の加齢による「正常老化」のカーブは、その先70歳代、80歳代、90歳代、100歳代と年をとるにつれて、「直線的」ではあるが緩やかなカーブを描きながら、更なる「低空飛行」の状態に入っていくのです。それ故に、実態面を見るとき、「アルツハイマー型認知症」を発病する対象は60歳を超える年齢の「高齢者」だけということになるのです。更に言えば、60歳代よりも70歳代、70歳代よりも80歳代、80歳代よりも90歳代、90歳代よりも100歳代と、年齢が増せば増す程「アルツハイマー型認知症」を発病する人達の「年代毎の発病率」が高くなっていくのです(年をとればとるほど、「アルツハイマー型認知症」を発病するお年寄りの割合を示す数値が大きくなる)。私たちが「地域予防活動」を指導してきた(日本全国)北海道から九州までの440を超える市町村のどこでも、この「アルツハイマー型認知症」に特有の「実態」が確認されているのです。

  ○  脳の使い方としての「生活習慣」が発病の引き金に(発病の「第二の要件」)

「正常な老化」のカーブを辿りつつ年をとっていく過程にあるとはいえ、「前頭葉」の三本柱の機能が「低空飛行」の状態に入ってきている「60歳を超えた高齢者と呼ばれる年齢のお年寄り」が(上述した、発病の「第一の要件」の充足)、脳を積極的に使おうとはしない「単調な生活」、キャッチ・コピー的な表現を借りて言えば、「生き甲斐なく、趣味なく、交遊なく、運動もせず、目標となるものもない」というナイナイ尽くしの「単調な生活」を日々続けていると(発病の「第二の要件」の充足)、出番が極端に少ないために使われる機会が極端に減った「前頭葉」の機能が廃用性の加速度的で異常な機能低下を起こしてくることになるのです。

つまり、「第一の要件」と「第二の要件」とが重なり合う(二つの要件が「同時に充足される」)ことの「相乗効果」によって、「前頭葉」機能の老化が加速度的に進んでいくことになるのです。「前頭葉」の働きが加速度的に衰えていくことにより、脳全体の働き具合(「機能レベル」)が異常なレベルに衰えてくるその先に、「アルツハイマー型認知症」(晩発型、或いは老年性「アルツハイマー病」と呼称されることもあります)の発病が待っているのです。その最初の段階が、私たちの区分でいう「軽度認知症」(小ボケ)の段階なのです。

    

(コーヒー・ブレイク) 「第一の要件」と「第二の要件」とが同時に充足されることによるその相乗効果により「廃用性の機能低下」が進むときは、上の左端図が示すカーブに見られるように、直線的ではなくて放物線を描いて、「加速度的」に脳の機能が衰えていくことを、私たちが集積してきた多数の症例の「脳機能データ」が示しているのです。上の右端の図は、それを立体的に表示したものなのです。

私たちが開発した「二段階方式」と言う精緻な神経心理機能テストを活用して14689例に及ぶ脳機能データを解析して判明したこと、それは、「第一の要件」と「第二の要件」とが同時に充足されることの「相乗的な効果」により、「廃用性の異常な機能低下」が加速度的に進行していくときは、「前頭葉」を含む脳の機能に「衰えていく厳格な順番が存在する」と言うことなのです。これこそが、「アルツハイマー型認知症」と言うタイプの認知症だけに特有の特徴なのです。従って、この要素に着目することによって、「アルツハイマー型認知症」以外のタイプの認知症との精緻な鑑別及び認知症と紛らわしい病気との精緻な鑑別が可能となるのです。私たちは、「アルツハイマー型認知症」であるか否かの直接的で且つ精緻な判定基準を保有しているのですが、医療現場での診断は、皆さんの予想/期待に反して、明確な診断/鑑別の手技及び基準を有してはいないのです。認知症の専門医と称していながら、世の中の医師達は、様々な種類の認知症の症状を前にして、様々な基準によって診断していきつつ、それらを順次除外していって、最後に残ったものを「アルツハイマー型認知症」と診断しているだけなのです。それ故にこそ、「アルツハイマー型認知症」の診断には不必要で無用な、高額の費用が稼げるだけの機器、MRIやらSPECTやらPETやらを平気で診察に使用しているのです。

「アルツハイマー型認知症」である時は、「三頭立ての馬車」の御者の役割をしている「前頭葉」が最初に異常なレベルに衰えていき、次いで、「前頭葉」機能の更なる異常な機能低下が進行する中で同時に、馬の役割をしている「左脳」や「右脳」や「運動の脳」までもがその順に異常なレベルに衰えていくことになるのです。然も、「アルツハイマー型認知症」の場合には、且つ、その場合に限り、MMSEで測定される「左脳」及び「右脳」の衰え方自体にも「規則性」がある(衰えていく厳格な「順番」がある)ことがとても重要な特徴なのです。「前頭葉」と「左脳」及び「右脳」のそれぞれの衰え方、或いはその組み合わせでの働き方の衰え具合と症状の発現(三段階に区分される「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルの直接の反映としての三段階に区分される「認知症の症状」)とが、他の種類の認知症、或いは認知症と紛らわしい病気(側頭葉性健忘症、感覚性失語症、一過性全健忘、老年期うつ病、緩徐進行性失行等)との鑑別の上で、極めて重要且つ客観的な「指標」としての役割を果たしてくれるのです。

脳全体の司令塔で、置かれている状況を判断したり、何かを思いついたり、計画を立てたり、工夫したり、洞察や推理をしたり、機転を利かせたり、各種の高度な働きを担当しているのが「前頭葉」の各種個別認知機能なのです。その働きが、余りにも高度で、複雑で、且つ働き方や働き具合が様々な程度と態様を示すので、計測したり判定したりする方法の開発が難しい為に、研究自体が遅れているのです。そのため研究者達から、脳の中の「空白地帯」とさえ言われてきたのです。私たちは、「アルツハイマー型認知症」の脳の機能の衰え方のデータ(「脳機能データ」)を解析していて、MMSEで測定される「下位項目」の衰え方にも厳格な「規則性」があることに気付いたのです(「前頭葉」を含む脳全体の機能が廃用性の機能低下を示しているときは、「下位項目」の衰えて行く順番に厳格な規則性があるということなのです)。「二段階方式」の手技を活用して、「前頭葉」を含む脳の機能レベルを調べ、「下位項目」の衰え方が規則通りであるか否かを判定することにより、「アルツハイマー型認知症」であるかどうかを極めて精緻なレベルで鑑別できるのです。これは、まさに「コロンブスの卵」でした。認知症の専門家達から、「原因もわからないし、治すことも出来ないし、予防することも出来ない」病気と言われている「アルツハイマー型認知症」の診断につき世界的に権威があるとされている米国精神医学会の診断基準である『DSM-4』への挑戦が、そこから始まったのです。

『DSM-4』の規定には、重大な誤りがあり、それがために、回復が困難な末期の段階(私たちの区分でいう、「重度認知症」の段階)しか見つけることができなくて、回復が可能な早期の段階(私たちの区分でいう、回復させることが容易な「軽度認知症」の段階と回復させることが未だ可能な「中等度認知症」の段階)を見逃しているだけだということが分かってきたのです。

   

意識的に何かの「テーマ」を実行しようとする場面では(例えば、あなたが、付き合いがあまり深くないお友達の家に伺って、孫の就職についての頼みごとをするというテーマを考えてみてください)、自発性、観察、分析、考察、洞察、推理、理解、興味、発想、企画、計画、創意、工夫、予見、シミュレーション、修正、整理、機転、抑制、忍耐、感動及び判断等、「前頭葉」を構成している各種の個別認知機能を高度に発揮するには、一定レベル以上での「認知度」が確保されていることが必要となるのです。認知度が低いと、「前頭葉」の各種個別認知機能自体が必要なレベルで機能を発揮出来なくなるからです。その「認知度」の高さ或いは低さを左右しているのが、「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」という機能、私たちが「前頭葉」の「三本柱」の機能と名付ける機能なのです(「認知度」と「発揮度」とが共に、「三本柱」の機能レベルと「リンク」している)。

ところが、この「三本柱」の機能自体に、「加齢と共に老化し衰えていく」という重要な性質(誰にでも備わっている生来的な性質)があるのです。60歳を超えた年齢の「高齢者」が、「第二の人生」を送る日々の中で、「生き甲斐」を覚える機会も無く、これといった「目標」となるものもなく、「趣味や遊びや人付きあい」を楽しむ機会もなく、「運動」もしない、謂わばナイナイ尽くしの「単調な生活」を送っていると言うことは、脳の機能面から言うと、「前頭葉」の機能の中でも最も基本的で不可欠な機能であり、「前頭葉」の各種個別の認知機能の「認知度」及び「発揮度」を左右する働きをしている意欲、注意の集中力及び注意の分配力という「前頭葉」の「三本柱」の機能の出番が極端に少ない生活を送っているということになるのです。ナイナイ尽くしの「単調な生活」を日々送っている中で、もともと加齢により機能が衰えていく性質を持っている「三本柱」の働き(その反映としての「前頭葉」の個別認知機能の働き)が、膝の筋肉と同じように、廃用性の異常な機能低下を起こしてきて、更には、加速度的に働きが衰えていくことになるのです。

「前頭葉」の「三本柱」の働きが、廃用性の加速度的で異常な機能低下を起こしていくということは同時に、自発性、観察、分析、考察、洞察、想像、推理、表象、批判、理解、了解、把握、判定、興味、関心、着眼、発想、連想、空想、妄想、意図、企図、企画、計画、創意、工夫、創造、具象化、抽象化、シミュ・レーション、予見、予測、修正、比較、選択、確認、整理、統合、判断、決定、決断、監視、機転、拘泥、執着、憤怒、抑制、忍耐、及び感動等といった「前頭葉」全体の機能の構成要素としての各種の高な個別の認知機能の「認知度」及び「発揮度」も同時に加速度的に低下していくということなのです(「二重構造」の仕組みの問題)。そうした「前頭葉」の各種個別認知機能が異常なレベルに機能低下した状態の下では、「前頭葉」の機能低下を核として並びに左脳、右脳及び運動の脳の機能低下を含む脳全体の機能レベルのアウト・プットそれ自体が認知症の症状、すなわち、「アルツハイマー型認知症」の症状として発現してくることになるのです。つまり、三段階に区分される脳全体の「機能レベル」に厳密に対応する三段階に区分される「アルツハイマー型認知症」の症状として発現してくるのです。

    

「前頭葉」の三本柱の機能が異常なレベルに機能低下してきた(廃用性の機能低下)ことに直接起因して発現してくる症状、言い換えると、「アルツハイマー型認知症」の最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)の段階の中核的な症状として「二段階方式」の判定基準として例示してあるものの中から、いくつか取り上げて、具体的に説明してみることにしましょう。

□ 複数のことに注意が分配できなくて、3つの用事が同時にさばけない(「注意分配力」の機能の機能障害としての症状)

□ 機転がきかなくて、状況に応じた創意工夫ができない(「注意分配力」の機能の機能障害としての症状)

□ 発想が乏しくて、画一的な行動が目立つ(「注意分配力」の機能の機能障害としての症状)

□ 何事をするにも億劫で面倒がり、何かをやってみようという意欲が見られない(「意欲」の機能の機能障害としての症状)

□ 一日や一週間の計画が自分で立てられず、なにも思いつかない様子(「注意分配力」の機能の機能障害としての症状)

□ これまでなら感動していたことに対して感動しない(「感動」の機能の機能障害としての症状)

□ ぼんやりしていることが多く、自分から何もしないが指示されるとできる(「注意分配力」の機能の機能障害としての症状)

□ 根気が続かず中途半端なことを繰り返し、やりかけの家事が目立つ(「注意集中力」の機能の機能障害としての症状)

□ 自分が言いたいことだけを一方的に言い、相手の話を聞こうとはしない(「注意分配力」の機能の機能障害としての症状)

□ 簡単な計算ができなくなり、お札ばかりで買い物をするために、やたらと小銭がたまる(「注意分配力」の機能の機能障害としての症状)

(注1)「前頭葉」の機能だけが異常なレベルであって、「左脳も右脳も運動の脳」も機能が未だ正常レベルにある「軽度認知症」(小ボケ)の段階で発現してくる症状は、この「三本柱」の機能の異常な機能低下(機能的障害)のアウト・プットそのものなのです。

    

(再度コーヒーブレイク)

以下は、前頭前野や頭頂葉領域が交通事故などで損傷された場合に確認される注意障害の症状(「前頭葉」機能の器質的変化に起因する症状)の特徴とされるものです。

上述した、「軽度認知症」(小ボケ)の段階の症状として例示した症状群(「前頭葉」の廃用性の機能低下により、異常なレベルに機能が低下してきたことが原因で起きてくる症状)と酷似していることに驚かれると思うのです。発病の原因もメカニズムも全くのこと不明とされている「アルツハイマー型認知症」の本質とは、「前頭葉」を含む脳全体の異常で加速度的な機能低下が原因で症状が発現し、且つ症状が進行していく(重症化していく)タイプの認知症、私たちが主張する廃用症候群に属する「生活習慣病」なのです。その症状は、「小ボケ」の段階に始まり、次いで「中ボケ」の段階を経由して、最後は末期の段階である「大ボケ」の段階に至るという「三段階」に区分される段階的症状を示すのが特徴なのです。従って、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルが低下していくにつれて、症状が進行し重症化していくことになります。その中核をなすのが脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」の機能低下に起因する症状なのです。上述した「小ボケ」の段階で発現が確認される症状(「前頭葉」機能自体の廃用性の機能低下が進行していくにつれて発現してくる症状)は、次第に下記に例示する「前頭葉」機能の器質的な変化に起因する症状に近づいていくことになると考えられるのです。

①  集中せず、落ち着きがなく、言われないと何事も続けられない。

②  1つのことに集中出来ず、すぐに中断し、長続きしない。

③  細かいことへの注意が抜け、ミスが多く、能率が上がらない。

④  他のことに気が散り、目的に沿った言動や行動が出来ない。

⑤  複数のテーマを、同時に進行処理することが出来ない。

⑥  注意が散漫になり、周りの声や他の動きに注意がそれやすい。

⑦  周りの状況変化に応じた、臨機応変の修正や変更が利かない。

⑧  ぼんやりしていることが多く、思考自体が先に進まない。

⑨  てきぱきと物事を処理することが出来ない。

⑩  動作自体がのろくて、言葉での反応も遅い。

    

& 脳を活性化させる脳の機能とその構造

○「前頭葉」の三本柱の機能構造とその衰え方の特徴

意欲、注意の集中力及び注意の分配力(異なったテーマを同時に並行して処理する為の機能)の機能から構成されていて、私たちが「前頭葉」の三本柱と名付ける機能は、実は、三層構造をしているのです。意欲が大本の機能であって、その上に注意の集中力の機能があり、更にその上に注意の分配力の機能があるのです。意欲のスパンが大きければ大きいほど、注意の集中力の機能のスパンも大きくなり、注意の集中力の機能のスパンが大きいほど注意の分配力の機能のスパンも大きくなるという意味での「三層構造」をしているのです。何かのテーマを思いつくにも、実行するにも、意欲が働かなくては、前に進むことが出来ないのです。集中力も上がらないし、注意の分配力(頭の回転速度)の機能も速くは動いてくれないのです。その一方で、使われる機会が極端に少ない生活習慣の下で廃用性の機能低下によって働き具合が衰えていくときは、逆に、注意の分配力の機能、注意の集中力の機能、意欲の機能の順番に衰えていくことになるのです。「アルツハイマー型認知症」の発病を予防するためには、言い換えると「前頭葉」の機能レベルを正常な機能レベルのままに保ち続けるためには、「注意の分配力」の機能の出番が多い「生活習慣」の構築と実践とが必要不可欠の条件となると言うことになるのです。

    

○ 脳の活性化と「前頭葉」の三本柱の出番が多いテーマの遂行

上述したように、脳を活性化させるということは、「前頭葉」の機能を活性化させることが大前提となるのです。「前頭葉」が活性化していない状態での、左脳や右脳や運動の脳の活性化と言うことは、「前頭葉」を含む脳全体の機能が正常な機能レベルにある世界では、脳の機能構造からして絶対にありえないことなのです。上述したように、「前頭葉」の個別の認知機能の発揮度は「前頭葉」の三本柱の機能の発揮度に左右されるという構造になっているからなのです。これを分かり易く説明すれば、 御者が居眠りをしていて、三頭の馬が働くという場面では、制御不能の状態で三頭の馬がそれぞれに勝手に働くと言うことを意味することになるからです。このことは、「アルツハイマー型認知症」の末期の段階であり、私たちの区分で言う「重度認知症」(大ボケ)の段階にある人達の症状を観察してみれば容易に理解できることなのです。施設に住む要介護状態に在るお年寄り、大ボケの段階の症状が確認されるお年寄りの、暴言や暴行、或いは粗暴行為は、その典型的な事例なのです。

上述した脳の機能構造(並びに私たちが集積してきた「脳の機能データ」)に鑑みて言うと、脳の活性化とは、「前頭葉」の活性化であり、もっと言えば、「前頭葉」の三本柱の機能の活性化であり、就中、「注意の分配力」の機能の活性化と言うことになるのです。自分の置かれている状況を判断し、状況判断に沿ったテーマを発想し、発想したテーマを実行する為の思考や行為や言動や態度や行動を具体的に計画し、実行した結果をシミュレーションして、最終的な内容を選択し決定するには、「注意の分配力」の機能が正常な機能レベルで働くことが必要不可欠の条件となるのです。皆さんも脳科学者も心にとどめおいていただきたいのです。私たち人間の意識的な世界を拡大展開するキーとなる脳機能とは、この「注意の分配力」と言う機能なのです。従って、脳の活性化とは、この「注意の分配力」の機能の出番が多いテーマを日々実行して、「生活習慣」となるまでに継続して実行することが必要条件となるということなのです。様々なレベルの介護施設で実践されているテーマ、「簡単な足し算や引き算をしたり、或いは、ひらがなで書かれた(読み仮名がふられた)おとぎ話を音読する」と言ったテーマを日課とすると言ったレベルの実践では、「前頭葉」の活性化にはつながらないと言う私たちの主張の根拠は、此処に在るのです。更に問題を指摘すれば、少しばかり意欲が出てきたとか、物忘れする機会が減ってきたとか言ってもそれは、このテーマを実行していることが原因ではないのです。因果関係の評価対象を誤っているだけなのです。実際は、教室が始まる前と終わった後の教室に通ってくるお友達との談笑がその効果の原因となっているだけなのです。このテーマの実践を、教室に通うことをやめて、家に籠って独りだけでやっている場合と比較してみればすぐわかることなのです。ところで、脳の機能構造から見た脳の活性化と言う考え方を理解されたとして、皆さんは、どのような「テーマ」を脳の活性化のテーマに選ぶのでしょう。皆さんが選択すべき第一の「テーマ」は、「速足の散歩」(ここを「クリック」してください)です。その次に選択すべき第二、第三の「テーマ」(矢)をどのようなものにするのか、第一の矢を実践して、「意欲」のスパンが大きくなってきた段階で、じっくり考えてみてください(ここを「クリック」してください)。

付言しておくと、「 お年寄り」の脳を活性化させることを目的としたゲーム、お年寄りを熱中させて「アルツハイマー型認知症」の発病の予防に役立つようなゲームの開発を企画中のあなた(会社)に、一言重要なアドバイスをしておきましょう。最も重要なポイントは、上述した「注意の分配力」の機能の出番が出来るだけ多いテーマの処理を内容とする物語性のゲームと言うことになるのです。然もそのゲームが楽しくて、またやりたくなるということも、もう一つの重要な視点となるということなのです。どのような開発のコンセプトが脳の活性化に有効なのか?それは、国家機密なので、此処では、教えられないのです。じゃあ、頑張ってください。

 注)本著作物(Bー53に記載され表現された内容)に係る著作権は、

 (有)エイジングライフ研究所に帰属しています。   

     エイジングライフ研究所のHP左の部分を「クリック」してください)

      脳機能から見た認知症(具体例をベースとしたもう一つのブログです)

 

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