kintyre's Diary 新館

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映画『鑑定士と顔のない依頼人』を観て

2013-12-30 12:45:44 | ヨーロッパ映画

13-109.鑑定士と顔のない依頼人
■原題:La Migliore Offerta(英題:The Best Offer)
■製作年、国:2013年、イタリア
■上映時間:131分
■料金:0円(1カ月FP5本目)
■観賞日:12月30日、TOHOシネマズシャンテ(日比谷)



□監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
□音楽:エンニオ・モリコーネ
◆ジェフリー・ラッシュ
◆ジム・ズタージェス
◆ドナルド・ザザーランド
◆シルヴィア・フークス
◆キルナ・スタメル
◆リヤ・ケベデ
◆ダーモット・クロウリー
◆フィリップ・ジャクソン
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督が、刺激的な謎をちりばめて紡ぐミステリー。天才鑑定士が姿を見せない女性からの謎めいた鑑定依頼に翻弄(ほんろう)されていくさまを、映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネの音楽に乗せて描く。

ヴァージル・オールドマンは、世界中のオークションで活躍する一流オークショニア。早くに親を亡くし、結婚もせず、友人もいない人間嫌いの彼の楽しみは、自宅の隠し部屋の壁一面に飾った女性の肖像画鑑賞だった。
自分が仕切るオークションで、パートナーのビリーが名画を格安で落札するよう仕向け、自分のコレクションに加えていたのだ。そんな彼の元に、クレア・イベットソンと名乗る女性から電話が入る。1年前に亡くなった両親が遺した家具や絵画を鑑定してほしいという依頼だった。
指示された邸宅に向かったものの、彼女は姿を見せず、後日再び訪問したところ、使用人のフレッドが現れる。やむなく1人で家の中を見て回ったヴァージルは、地下室の床に転がった何かの部品に気付き、密かに持ち帰る。だが、鑑定が進んでもクレアは一向に姿を見せない。フレッドによると、歳は27だが、奇妙な病気を患っており、11年の勤務中に一度も会ったことがないとの事。
やがて、修理屋のロバートに調査を依頼していた謎の部品が、18世紀に作られた機械人形の一部である可能性が出てきた。数日後、“広場恐怖症”と呼ばれる病気により、“15歳から外へ出ていない”と告白したクレアに同情したヴァージルは、壁越しのやり取りに同意する。自由な出入りを許され、彼女が屋敷の隠し部屋で暮らしていることに気付くと、影に隠れて彼女の姿を目撃。美しいその素顔に、恋に落ちてしまう。

再度の覗き見を彼女に見つかった時、ヴァージルは全てを打ち明け、遂に対面を果たす。互いに心を許してゆく2人。ところが、外出に強い拒絶反応を示していたクレアが、ある日忽然と姿を消す。果たして、鑑定依頼の本当の目的は?そして、クレアの過去に隠された秘密とは?謎はまだ、入り口に過ぎなかった……。

この映画ってラストを知ってから、自分の頭の中でシーンを振り返ると、どんなに小さなシーンにも全て意味があったというか繋がりがあったことが改めて判り、トルナトーレ監督の脚本の素晴らしさを認識させられた。

『ヴァージルのハマった罠』
①本プロジェクトのプロデューサー的な役割を果たしたのは、オークションの相棒ビリーだった。ビリーは彼に自分の画を酷評され続けていた。
修復家のロバートは、ディレクター的な役割を担う。プレイボーイの彼はクレアを利用してヴァージルが恋の盲目状態に陥るように数々の仕掛けを施す。古びた歯車の鑑定、オートマタの活用。特に後者はヴァージルが卒論に選んだテーマであることまで調査済みだった。
③クレアの住む古ぼけた屋敷、これはロバートが2年かけて完璧なセットを施す。クレアが12年間外出していないことになっていたが、それを見破っている謎の女性が向かいのカフェに居た。その女性の名前は...。何と驚きだった。
④ヴァージルはクレアと一緒になる。ヴァージルの自慢のコレクションである女性の肖像画が秘密の隠し部屋に所蔵されているシーンが登場。その視線は全てヴァージルに向けられている、全てオークションでセコイ手段を講じて手に入れた逸品揃いだ。だが、クレアと一緒になったことで安心したのか?それとも何時の間にか秘密部屋の暗証番号が流出したのか、クレア共々全て消えて無くなった。
ということは屋敷の使用人までグルだった?

女性との交際経験の無かったヴァージルが得た束の間の恋。消えたクララが以前語っていたプラハのカフェへと向かったヴァージル。
そこには無数の時計が。呆然とするオールドマンにウェイターが「おひとりですか?」と尋ねるも、一瞬、つまって…「あ、いや、人を待っている」と力無く返事するも、待ち人が現れることは無いだろう。美術品の鑑定眼力は超一流だったが、生身の人間の鑑定は素人だった。余生をどう過ごすのだろうか?

トルナトーレ監督は当初からジェフリー・ラッシュにヴァージルを想定して脚本を書いたそうだ。従って、彼の演技は実によくハマっているし、彼の個性も充分に活きている。オークションで仕切るシーンなどは素晴らしいし、クレアに徐々に惹かれて行く心境の変化も見事に表現している。それと相棒ビリー役のドナルド・サザーランド、やはり彼がこの罠の全てを仕切っていた。ただ者では無いね。
「アクロス・ザ・ユニヴァース」でブレークしたジム・スタージェスは、この罠の進行役?をこれも見事に疑われること無くこなしていたのは立派。彼が恋の指南役を務めなければこの罠は完成しなかっただけに良い味だしていた。


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